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セレナなどの母親選手が増える女子テニスツアー。チャイルドケア問題が表面化

「ウィンブルドン」3回戦のときのセレナ

「ウィンブルドン」(イギリス・ロンドン/7月2~15日/芝コート)の女子シングルス4回戦、セレナ・ウイリアムズ(アメリカ)対エフゲニヤ・ロディナ(ロシア)の試合は、8回目の優勝を狙うセレナのストレート勝利に終わった。

順調に勝ち進むセレナの4回戦では、彼女の試合運びのほかに注目された点がもうひとつあった。それは、ロディナも5歳の娘を持つプレーヤーであり、母親同士の対決になったからだ。セレナ対ロディナのようなマッチアップは今後女子テニスツアーにおいて、より頻繁に起こり得ることだ。WTA(女子テニス協会)のスポーツ科学・医学担当のキャスリーン・ストーリア氏は「かつてはマーガレット・コート(オーストラリア)、イボンヌ・グーラゴング(オーストラリア)や、最近ではキム・クライシュテルス(ベルギー)などがいました。各時代で、グランドスラムタイトルを持つ母親プレーヤーが1、2人いることはありました。さらに、そのようなプレーヤーは増え、今はより多くのプレーヤーが存在しています。違いがあるとすると、今は確かに母親であることが一般的になっていることでしょう」と話す。

今年の「ウィンブルドン」女子のメインドローの選手で子どもを持つプレーヤーは6名出場した。23度のグランドスラムタイトルを持つセレナをはじめ、元世界ランキング1位で、2度のグランドスラムタイトルを持つビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)、そしてロディナ、カテリーナ・ボンダレンコ(ウクライナ)、タチアナ・マリア(ドイツ)、ベラ・ズボナレワ(ロシア)である。さらに、ダブルスに出場したマンディ・ミネラ(ルクセンブルク)、マリア ホセ・マルチネス サンチェス(スペイン)のほか、予選敗退となったパティ・シュナイダー(スイス)もいた。

セレナは昨年に愛娘オリンピアちゃんを出産、今年からツアーに復帰し、「全仏オープン」に続いて2つ目のグランドスラムとなる「ウィンブルドン」に出場しているが、選手であると同時に母親であることが彼女の重要な一部を占めている。出産に関わる健康上の不安について話し、授乳中の体重増加、娘を帯同させることの喜びなどをオープンにしてきた。また、家族とテニスの両立の難しさについても語っている。「ウィンブルドン」を主催するThe AELTC(オールイングランド・ローンテニス・アンド・クローケー・クラブ)は、産休から復帰まで1シーズン以上を休み、ランキング150位以下にランクされたセレナに、7度の優勝といった実績を考慮し、第25シードのシードを与えた。

セレナは「出産で1年ほど休んで女性として素晴らしい体験をした。その後、どん底からスタートすることなく復帰できるのはいいこと」とコメント。また、トレーニング中のためオリンピアちゃんが初めて歩く場面を見逃してしまったと、働く親としての残念さをツイートしている。

アザレンカは、親であることとキャリアを両立させることの難しさを知っている。彼女は昨年から息子レオくんの父親と親権争いのため「全米オープン」や今年年頭までツアー復帰を見送ることになった。「本当にどんなときも息子と一緒に過ごしたいのです」とアザレンカはいう。 「ストレッチに15分かかると罪悪感があるし、すぐ息子のところに戻って一緒に過ごします。両立は本当に大変です」。

また、アザレンカはWTA選手会の一員として、規模が大きくなった母親プレーヤーのグループに、ツアー大会側が出来ることについて話し合ってきた。注目されているトピックの中には、プレーヤーが負傷、病気、妊娠のために休暇をとった際、特定の回数のトーナメントには以前にランク付けされた順位で出場できる「プロテクト・ランキング」ポリシーという、シードに近いものがある。また「ウィンブルドン」に出場する母親プレーヤーたちへのインタビューで、託児施設を提供する大会が少ないという問題も明るみに出た。

マリアが試合中、4歳の娘シャルロットは「ウィンブルドン」が用意した、選手やコーチの子どもたちが利用できる託児所で過ごした。1983年にオープンし、2015年には改装され、約15名の子どもたちが過ごせるという。マリアは「普通の幼稚園のようなところです。一緒に食事をし、遊び、私達は子どもの世話を全くする必要がない。ほかのグランドスラムの会場では、『おなかへった?』とか『ここに居たい?』と子どもに聞かなければならない」といい、「娘は午前11時から夜の8時まで、毎日託児所にいたいという。娘はここが大好きなんです」と続けた。マリアの娘は、ロディナやボンダレンコの娘たちと遊ぶことが多いと話す。2014年以来の出場となるズボナレワの試合中は、2歳の娘も託児所で過ごしたという。ロディナは、託児施設がないほかの大会では、娘にiPadを与え、選手ラウンジに残してくるという。試合中に子どもをスタンドに入れるのは、ロディナ自身が緊張してしまうからだ。

託児施設などチャイルドケアの問題について、WTAは大会ごとに任せている。「ムトゥア マドリード・オープン」、「ポルシェ・テニス・グランプリ」、「アビエルト・メキシカーノ・テルセル」、「サンクトペテルブルク・レディース・トロフィー」ではチャイルドケアを提供しているが、トータル数では圧倒的に少ない。WTAのストーリア氏は託児施設やサービス提供について「ツアーは『選手たちのニーズの高まりとともに進化する』ものだが、より多くの選手が何を求めているのか知らなければなりません」と具体案は出ていない。

マリアは「何か変わることを願っている。そのためにはビッグネームが必要だ」と語り、「もしセレナが『託児所がほしい』といえば、それは実現するかもしれない」と期待を寄せている。

(C) AP(テニスデイリー編集部)

※写真は「ウィンブルドン」3回戦のときのセレナ
(AP Photo/Ben Curtis)

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