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今さら聞けないテニスのイロハ ~第8回 ドーピングについて~

写真はウィンブルドンでのセレナ

先頃、セレナ・ウイリアムズ(アメリカ)が「ドーピング検査は公平に行われていない」と不満を述べたことが話題になりました。そんな彼女だけでなく多くの選手たちが、今のシステムに疑問を感じているようです。テニス界のドーピング検査の実態とはどのようなものなのかを解説します。

■お休み中も実施、抜き打ちも

ITF(国際テニス連盟)が中心になって行っているドーピング検査はテニスの大会中にはもちろん実施されますが、問題視されているのはそれ以外の検査。選手たちは、大会に出場していない時は毎日1時間の検査可能な時間と居場所を3ヶ月ごとに報告することを義務付けられています。その時間、その場所に検査員が来て、選手がいなければ、検査を受ける義務を怠ったことになり、それが12ヶ月間に3回あると、「ドーピング違反」として処分対象になってしまうのです。

それだけでもかなり窮屈なことに思われますが、選手が指定した場所・時間以外で行われる抜き打ち検査も、選手たちにとっては悩みの種。6月のセレナの件も、事の発端は検査員が抜き打ちで彼女が不在だった朝の8時半にフロリダの自宅を訪れたこと。検査員が検査するまで帰らないと言ったことからセレナはWTA(女子テニス協会)CEOスティーブ・サイモンに電話する事態に。詳細は明かされていませんが、結局この時は検査はされていません。

セレナは大会外で5回の検査を受けており(6月27日時点)、この数はほかのアメリカ人女子選手の倍以上。「検査は必要だと思うし、大賛成よ。だけど私はこれまで1度だって陽性反応が出たことなどないのに、なぜほかの選手よりはるかに頻繁に検査されるのかわからない。検査をするのは良いけど、公平にやって欲しい」と訴えました。それについて意見を求められたロジャー・フェデラー(スイス)は、「僕はスイスとドバイに家があって、スイスでは検査員と同じ村に住んでいるから結構頻繁に検査されるけど、ドバイでは15年間で1回しかない。住んでいる場所によって検査される回数が違うなら、不公平だと思う」などと述べ、セレナに共感を示しています。

■禁止薬物のリストの把握は選手の自己責任

そうした検査員の訪問や、大会の会場では、選手の尿と血液の両方、あるいはその一方が採取され、禁止されている薬物等を使用した痕跡がないか調べられます。禁止薬物のリストはWADA(ワールド・アンチ・ドーピング・エージェンシー)により作成されており、病気や怪我の治療に必要な薬品がこのリストに載っている成分を含む場合、選手はそれをTADP(テニス・アンチ・ドーピング・プログラム)に申請して許可を得なければなりません。

しかし、このリストは随時更新されるので、選手たちの中には新たに禁止薬物扱いとなったことを知らずに服用してしまう例もあるようです。2016年にマリア・シャラポワ(ロシア)がドーピング検査で陽性反応が出たとして大きな話題を呼びましたが、彼女は糖尿病予防のために2006年から使用していた薬が2016年に新たに禁止薬物に指定されたことを知らなかったと釈明しました。しかし、規則には「どの薬物が禁止されているかを認識するのは選手の責任」と明記されているため、結局15ヶ月の出場停止処分を科されています。

■終わりに

7月19日に発行されたドーピングに関する四半期のレポートでは、4つのケースについて報告されています。3ヶ月の間に4つのケースについての報告があるということは(1件は「ドーピング」自体ではなく「検査」を受けなかったケースですが)、ドーピング問題はかなりの広さ、深さで存在しているようです。悲しいことですが早急なドーピングの根絶を考えるより、選手にとってより不快でなく、効果的なドーピング検査の方法を考える方が現実的なのかもしれません。

(文/月島ゆみ)

※写真はウィンブルドンでのセレナ
(Photo by Matthew Stockman/Getty Images)

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