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秋山英宏コラム

決勝を戦うフェルナンデスとラドゥカヌの共通点と正反対な部分

写真はフェルナンデス(左)とラドゥカヌ(右)

記録ずくめの女子シングルス決勝となった。19歳のレイラ・フェルナンデス(カナダ)と、予選を勝ち上がった18歳、エマ・ラドゥカヌ(イギリス)。1999年の全米で17歳のセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)が18歳のマルチナ・ヒンギス(スイス)を破ってから22年ぶりに、10代選手同士のグランドスラム決勝が実現した。

1968年のオープン化(プロ解禁)以降、予選勝者のグランドスラム決勝進出は男女を初めてだという。ラドゥカヌはまた、全米デビューの年にいきなり決勝に進出した4人目のプレーヤーになった。


決勝進出を決めると、ラドゥカヌは自分の成し遂げたことをこう表現した。


「驚きです。正直言って信じられない。衝撃。クレイジー。そのすべてです」


この二人が決勝に残ったという事実も、まったく同じ言葉で表現していいだろう。


さて、ティーンエイジャーという以外にも二人には共通項がある。まずはその接点から。


ツアーでの対戦はないが、オレンジボウルの12歳以下の部門で二人は初めて当たっている。ラドゥカヌによると「私がトロント生まれで彼女がカナダ人だったから」、その後も大会で顔を合わせると「フレンドリーに挨拶する」仲になったという。


ともに母親はアジア系のルーツを持ち、本人はカナダで生まれた。その後、ラドゥカヌはロンドンへ移住、フェルナンデスは今、アメリカのフロリダを拠点にしている。


最も顕著な共通項は、ラドゥカヌに完敗したマリア・サカーリ(ギリシャ)が言ったように、「恐れを知らない」という点だろう。これ以上、二人の今大会の戦いぶりにふさわしい言葉はない。サカーリも、フェルナンデスに敗れたアーニャ・サバレンカ(ベラルーシ)も、それぞれ対戦相手の試合態度を「失うものはないという感じ」と表現した。


大事な共通項がもう一つ、二人がゲームを楽しんでいることだ。ラドゥカヌの満面の笑み、フェルナンデスのラケットを高く突き上げる姿を見れば、彼女たちの第一のモチベーションが試合を楽しむことであるのが見てとれる。


フェルナンデスはこう話している。


「私は楽しんでいるし、お客さんにエンジョイしてもらえるようなものを作り出したいと思っています。私がコートで行うことをファンの皆さんが楽しんでくれているのがうれしいし、私もそれを楽しんでいます。これはまるで魔法のようです」


二人のテニスへのアプローチは少し異なる。ラドゥカヌはLTA(英国テニス協会)の育成システムで育ったのに対し、フェルナンデスは元サッカー選手の父親に手ほどきを受けた。フェルナンデスの才能を認める人は周囲になく、7歳で入門した育成プログラムでもうまくいかなかった。父親の指導で腕を磨くしかなかったのだ。


プレースタイルも似て非なるものだ。ラドゥカヌは機を見て積極的に攻める王道のテニスを志向しているのに対し、フェルナンデスは典型的なカウンターパンチャー。相手のショットのスピードを利用しながらコースをつけて返球し、そのタイミングと正確なプレースメントで相手を四苦八苦させるのだ。


また、学業について二人はそれぞれエピソードを持っている。フェルナンデスは小学校高学年の頃、先生に「テニスはやめなさい、あなたは絶対に成功しないから。学業に専念しなさい」と言われたと明かしている。ずいぶんな言いようだが、フェルナンデスはこの言葉をバネにして、「私は前に進み続ける」「夢見たことはすべて実現させられるのだと彼女(先生)に証明してみせる」と自分に言い聞かせていたという。


一方、ラドゥカヌはこの4月まで学校に通い、イギリスの大学入学資格試験を受験したという(課目は数学と経済学だとか)。トップジュニアとしてそれなりに活躍したラドゥカヌが、今年のウィンブルドンで4回戦に進出するまでほとんど実績がなかったのは、ケガや体調不良に加え、学業による制約もあったようだ。


面白いのが家族との関わりだ。フェルナンデスの父親もラドゥカヌの両親も、今回、フラッシングメドウズに来ていない。フェルナンデスは父のホルヘさんと毎日何度も電話で話すという。コーチも務めるホルヘさんによると、前夜に試合に向けたミーティングを行い、当日朝には準備の流れを確認する。そうして試合前にも最後の会話をかわす。これはコーチと選手というより「父と娘」の会話で、「仮想のハグとキス」をかわすのだという。


ラドゥカヌの場合は真逆だ。準々決勝のあと「実は長い間、電話をしていなかった」と笑った。だれかの決めたゲン担ぎなのだろうか、電話をしても出てくれず、メールを送っても返信がないという。「私は無視されているみたい」とラドゥカヌは苦笑する。


恐れを知らないティーンエイジャー、突然、スポットライトを浴びたシンデレラストーリーの主役という共通項を持つ二人だが、もちろん似ていない部分も多い。決勝でもまた、それぞれのやり方で、恐れを知らぬプレーを披露してほしい。


(秋山英宏)


※写真は「全米オープン」でのフェルナンデスとラドゥカヌ
(Getty Images)

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