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秋山英宏コラム

父の教えを実践したフェルナンデスが四大大会初のベスト4

写真は「全米オープン」でのフェルナンデス

女子テニスの頂点を極めた二人、大坂なおみ(日清食品)とアンジェリック・ケルバー(ドイツ)を破ったレイラ・フェルナンデス(カナダ)が、今度は自己最高3位のエリナ・スビトリーナ(ウクライナ)を3セットで倒し、ベスト4に進出した。

内容も素晴らしかった。スビトリーナに巻き返されてセットオールとなり、最終セットも5-2から追いつかれる嫌な展開だったが、追いすがる相手を振り払い、タイブレークで勝利をつかんだ。総獲得ポイントはフェルナンデスの97に対しスビトリーナが99と、敗者が上回った。フェルナンデスが放ったウィナーは42本で、スビトリーナのアンフォーストエラーはわずか25本。こうした数字だけでも内容の濃さが読み取れる。


フェルナンデスは前日に19歳の誕生日を迎えたばかり。しかし、攻撃のバリエーションと勝負勘、冷静さはベテランのようだ。


勝利者インタビューでは、コーチをつとめる父親ホルヘさんから試合の前に贈られた言葉を明かした。


「楽しんできなさい、そして、すべてのポイントでファイトしなさい。今日ははじめての(グランドスラムの)準々決勝、これを最後にしてはいけない。夢に向かって戦うんだ』


ホルヘさんは全米オープンの会場に来ていないが、常に連絡をとりあっている。試合後にも電話で話したという。


「父は正直に、この試合で地獄を見せられた言っていました(笑)。でも、私がすべてのポイントで頑張れたことを喜んでくれました」


父親には幼少期から指導を受けた。元サッカー選手のホルヘさんにテニスの経験はないが、勝利者インタビューで「分析は父に任せる」と話したように、今も戦術面などで助言をもらっている。


競技の経験も知識もないホルヘさんが注目したのは、ウィリアムズ姉妹の父、リチャードさんだという。自分と同じくテニスに関しては門外漢のリチャードさんが、いかに姉妹を世界一の選手に育てたか。そこにホルヘさんは興味を持った。大坂の父親レオナルドさんのアプローチとの符合が興味深い。


フェルナンデスのボールを捉える技術、配球の巧みさ、そしてどんなスコアでも変わらない堅実さは高い才能を感じさせる。だが、これらは厳しい練習のたまものだ。


幼い頃、娘のレイラが練習で同じミスを繰り返すと、ホルヘさんは全力ダッシュを命じたという。いわゆる「罰走」だ。この時代、失敗したら罰を受けるような練習は一般的とは言えず、好まない指導者もいる。せいぜいグループレッスンで競わせ、〈負けたチームはダブルニージャンプ〉とか、コーチとポイント形式の練習をして〈負けたほうが腕立て伏せ〉とか、遊び感覚の罰ゲームとして取り入れるくらいだろう。だが、ホルヘさんの考え方は違った--試合では頻繁に起こりうることだから、練習でも居心地の悪い状態に身を置かせる、状況を克服し解決策を見つけるのは自分だ、と考えたのだ。


この準々決勝、フェルナンデスは厳しい状況に動じなかった。おびえたり、躊躇したりすることがなかった。試合中の胸中についてフェルナンデスはこう語る。


「自分を信じること、自分のゲームを信じることだけ考えていました。ポイントを取っても取られても、『自分のゲームを信じて、自分のショットを打ち、ボールの行方だけ見極めよう』と自分に言い聞かせていました」


終始、自分のプレーに徹した。相手のミスを待たずに、勇気を持って攻め続けた。大坂のハードヒットに耐え、ケルバーの粘りにも音を上げず、スビトリーナのカウンターパンチも恐れなかったのは、このメンタリティーがあったからだろう。


父親から学んだことはそれだけではない。ケルバーを破った4回戦のあとでフェルナンデスはこう話している。


「コートで楽しむことは、誰にとっても成功の鍵だと思います。これは私がもともと持っている考え方で、父と母にも、人生を楽しむためにそうしなさいと言われています。この仕事を選んだのだから、できるだけ楽しみたいし、このことは私にとって最大の鍵なのです」


(秋山英宏)


※写真は「全米オープン」でのフェルナンデス
(Photo by Elsa/Getty Images)

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