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秋山英宏コラム

「我慢の3時間57分」を戦い抜いた錦織圭

「全米オープン」での錦織

最初の2セットを奪った錦織圭は、第3セットもワンブレークの差をつけてサービング・フォー・マッチを迎えた。紙一重の苦しい戦いだったが、これでもう大丈夫、無事に3セットで終わる、終わってほしい、次のラウンドを考えればストレート勝ちはありがたい--錦織を応援するファンはみな、そう思ったことだろう。ところが、このサービスゲームを取れず、試合は最終セットまでもつれていく。

「彼のプレーも良かったが、自分のプレーがちょっと消極的だったなというのは感じた。彼のプレーに押されてしまったところもあった。取れていれば、もうちょっと楽に終わった。これがテニスの難しいところかなと感じた」


ものにできなかったサービング・フォー・マッチを、錦織はこう振り返った。悔やまれる逸機だからこそ、あえて感情を押し殺し、平凡な言葉を選び、平板な口調で話しているようにも聞こえた。


ただ、「これがテニスの難しいところ」というのはひとつの真理だ。リードを守って逃げ切ることがいかに難しいか。リードした選手、チャンスを迎えた選手が逆に硬くなってプレーが変わってしまうことは珍しくない。ノバク・ジョコビッチ(セルビア)のようなレジェンドならいざ知らず、ども選手にも起こりうる。特に試合の最後を締めくくるのは大仕事だ。サービング・フォー・マッチとはいえ、サーブが不調なら、最初の1ポイントを失っただけでイヤな感じが頭をもたげる。次も失えば、にわかに心拍数が上がるだろう。相手は開き直っている。劣勢だからこそ、かえってリラックスして戦えることもある。それもこの競技の「難しいところ」だ。


マッケンジー・マクドナルドにも、チャンスをふいにする場面があった。第1セットは一時、5-2とリード。錦織の挽回で5-4まで迫られたが、次の錦織のサービスゲームでは0-40のトリプルセットポイントもあった。ところがこれを生かせず、結局、タイブレークでセットを失った。


ただ、いつまでも悔やんでいる暇はない。錦織、マクドナルドとも、チャンスを逃しても気持ちを立て直した。それができる選手たちだったから、5セットの大熱戦になったのだ。


両者にとって我慢の3時間57分だった。特に、実績で上回り、受けて立つ立場の錦織にとっては忍耐力が試される試合だった。終始、マクドナルドの出来が良く、事前の対策を上回るプレーをされた。好ショットを続けても、相手の守備力に阻まれ、1ポイントが遠い。強風にも悩まされてショットは安定せず、「攻めるのか、入れにいくのか模索しながら」の戦いが続いた。


最初の2セットを奪ったが、内容は「シーソーゲーム、どっちがどのセットを取ってもおかしくない展開」(錦織)。そうして、第3セットにはサービング・フォー・マッチを逃す最大の逸機があった。この痛手は大きく、そのまま第3、第4セットを失った。だが、最終セット、先にサービスゲームをブレークされたことで、「ふっきれた」。自問自答しながら、言い換えれば、モヤモヤしながら戦っていたが、窮地に陥ってはじめて「おもいきりやったほうがいい」と結論が導き出せたのだ。


ブレークバックで1-1、さらに3-1と逆転し、「ガラッと雰囲気が変わった」。最後の最後に、我慢が実を結んだ。


テニスは我慢の勝負だと言われる。攻められて我慢するのは当然で、相手にリードされて我慢するのも当たり前だ。だが、攻めても攻めても相手に粘られてポイントが取れない、王手をかけながら締め切れない、そんな状況を耐え抜くのは何倍もつらいだろう。それでも我慢を続けた錦織に、勝利の女神が味方をしてくれた。


(秋山英宏)


※写真は「全米オープン」での錦織圭
(Photo by Sarah Stier/Getty Images)

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