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秋山英宏コラム

バーティとプリスコバが、ともにピンチを乗り越えて決勝進出

写真は2019年「WTAファイナルズ」でのバーティ(左)とプリスコバ(右)

女子シングルス準決勝の2試合は、4人の選手がそれぞれ特徴を発揮、ともに好試合となった

アシュリー・バーティ(オーストラリア)にアンジェリック・ケルバー(ドイツ)、カロリーナ・プリスコバ(チェコ)にアリーナ・サバレンカ(ベラルーシ)、女王バーティはじめケルバー、プリスコバと世界ランキング1位になった選手が3人いる。残るサバレンカも今季好調、ひとつ殻を破って自己最高の4位につける。昨年のローランギャロスから今大会まで、4つのグランドスラムで4強の顔ぶれはすべて異なる。それくらい女子ツアーは混戦状態にあるのだが、この4人は実力的にはいずれも主役クラス。その期待にたがわぬ準決勝だった。


第1試合では、今大会好調のケルバーがカウンターパンチャーの本領を発揮した。早いタイミングでコースを変えるショットの精度が素晴らしかった。チャンスを待つだけでなく、甘いボールを逃さない積極性もあった。バーティのウィナー38本、アンフォーストエラー16本は素晴らしいスタッツだが、バーティの半分以下のウィナー16本で互角の戦いに持ち込んだケルバーはさすがだった。


その鉄壁の守りをバーティのラケットが破った。第2セットは2-5まで離されたが、バーティがここから巻き返す。5-3のサービング・フォー・セットを逃したケルバーが振り返った。


「ほんの数ポイントでゲームが変わってしまったのだと思います。また、試合を通じて彼女は思い切ってプレーしていました。たとえ劣勢でも、重要な場面でリスクを冒していました。そこときに私は自分のテニスができませんでした」


一方のバーティは、ピンチ脱出の場面についてこう話している。


「セットの序盤、相手のサービスゲームで何度かチャンスがありましたが、そこで彼女は素晴らしいプレーをしていました。その時は相手に脱帽して次に進もうと思いました。私にはスコアの流れは重要ではありませんでした。3-5だろうと、まったく気になりませんでした。それより、一つ一つのポイントを大事にプレーすること、また、自分がミスをすることも彼女が素晴らしいプレーをすることも理解することが大切だと思いました。受け入れて前に進み、自分のパターンに戻す努力を続ける、一番大事なときにそれができたと思います」


決着はタイブレークにもつれたが、この時点でバーティは「やりたかったパターン」を取り戻していた。バックハンドスライスで相手のカウンターを防ぎ、フォアのクロスで崩し、返球が甘くなったら前に入ってフォアの逆クロスをオープンコートに--セットの終盤はこの組み立てが面白いように決まった。


コートを去るケルバーの明るい表情も印象的だった。


「頭の中にあったのは、本当に長い時間を経てカムバックできたこと、すべてを好転させられたこと、信じられないようなテニスをしたこと、たくさんの感情をコートにぶつけたことです。ウィンブルドンのセンターコートでスタンディングオベーションを受ければ、たとえ負けても最高の気分になります。今日はすべてを出し尽くしました。今日のアッシュ(バーティ)は勝者にふさわしい選手でした」


敗者は、晴れ晴れとした気分でウィンブルドンをあとにした。


第2試合でも両者が持ち味を出した。サービスエースは、敗れたサバレンカが18本でプリスコバが14本。ウィナーもサバレンカが38本で、プリスコバの32本を上回った。バーティの攻撃が短銃なら、両者の武器は大砲だ。準決勝までの6試合でプリスコバが決めたエースは54本で、出場選手のトップ、サバレンカが52本で続いている。プリスコバのサービスゲームのキープ率93%は、ダントツの1位だ。パワーヒッター同士のストローク戦も見応えがあった。


勝敗を分けたのは、第1セットを優勢に進めながら土俵際で逆転されたプリスコバの、気持の切り替えだろう。


「第1セットを失ったときは、勝つのはとても難しいと思っていました」とプリスコバ。8回あったブレークポイントを一度もものにできなかった。しかも最後のポイントは自分のダブルフォールト。落とし方としては最悪に近い。記者会見で「第2セットを0-6で失うパターンだね」と指摘されたプリスコバは「私も一瞬、そう思いました」と笑った。


何度もブレークのチャンスを逃したことで「フラストレーションを感じすぎていた」という。だが、その苛立ちを封じたところが彼女の成長だろう。


「我慢することは、特に私にとっては難しいことです(笑)。でも、最終的にはうまくいきました」


状況に対応できたこと、やり遂げたことを誇りに思う、とプリスコバは言う。バーティと当たる決勝についてはこう話している。


「彼女はグランドスラムのタイトルを持っています。簡単にいくとは思いません。(でも、)絶対にチャンスはあると思います」


バーティとプリスコバ、タイプは異なるが、アグレッシブなプレーヤー同士、楽しみな決勝の顔合わせだ。


(秋山英宏)


※写真は2019年「WTAファイナルズ」でのバーティ(左)とプリスコバ(右)
(Photo by Matthew Stockman/Getty Images)

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