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秋山英宏コラム

新星シフィオンテクを奮い立たせた大坂の全米制覇

写真は「全仏オープン」でのシフィオンテク

この全仏では、知名度の低かった選手や伏兵たちの活躍がグランドスラムに新風を吹き込んだ。なかでも、ノーシードから決勝進出を果たした19歳、イガ・シフィオンテク(ポーランド)のテニスは見る者を強く引きつける。

準決勝まですべてストレート勝ち、失ったゲーム数は6試合でわずか23。失セット0で優勝すれば、全仏では2007年のジュスティーヌ・エナン(ベルギー)以来の快挙となる。


昨年、全仏初出場で16強に入り、今年の全豪でも第19シードドナ・ベキッチ(クロアチア)らを破り、再びベスト16に残った。その意味では、事前にもう少し注目が集まってもよかったはずだが、最新WTAランキングが54位では、なかなか要注意印も打ちにくい。決勝進出を決めて自分で「驚いている」というのだから、だれにも予想できなかった勝ち上がりだ。ただ、「もし自分が最初にグランドスラムの決勝に進むとすれば全仏だと思っていた」と続けるところは、この19歳、初々しいだけではない。


実際に対戦した選手の何人かは、快挙をなかば当然と受け止めているかもしれない。その一人が、先の全米の3回戦で対戦し、6-4,6-2で勝ったビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)だろう。アザレンカはこのとき、相手の印象をこう話した。


「信じられないようなプレーでした。どの角度からもウィナー級のショットが飛んでくる。少し彼女の試合を見たことはあったけれど、今日はレベルが違いました。予想もしていなかった。ただ驚きでした。素晴らしい才能です。美しいテニス、賢い選手です。特にスライドしてポジションに入る、独特の動きがいい」


対戦相手への社交辞令を超えた、まさに絶賛だ。確かにシフィオンテクの「動き」は武器の一つだ。脚が速いだけでなく、体が強く、バランスもいいから、相手に振られても軸が揺るがず、質の高い返球ができる。攻撃的な状況では、素早くポジションに入り、クッと一瞬のタメを作る。これで相手は脚を止められてしまう。アザレンカもさすが一流選手、長所をただちに見抜いた。


もう一人、シフィオンテクの才能に太鼓判を押すのが大坂なおみだ。両者は昨年、全米前哨戦トロントの3回戦で対戦、大坂が7-6,6-4で競り勝っている。


試合後、大坂は自身のツイッターで、相手の走り抜けながらのパッシングショットを「この試合で一番のショット」と称えた。また、「彼女のボールの叩き方はどの選手とも比べられない」と褒め、さらに「一番印象的だったのは彼女の動きでした。素晴らしく動きが上手で、ただ滑っているだけのように見える。これを学べるといいのだけど」と続けた。今年の全米で決勝を戦った両者、大坂とアザレンカのシフィオンテクへの見方がピタリと重なったことが興味深い。


1年前、対戦相手の大坂からの好意的な評価に、シフィオンテクは「試合に負けて、こんなに満ち足りた気持ちになったことはありません。なおみ、ありがとう。いい試合でしたね」とツイッターを通じて感謝した。この対戦(と試合後のやりとり)から二人の交流が始まった。直後の全米では大坂が呼びかけて一緒に練習を行ったという。


当時18歳で無名に近い存在だったシフィオンテクには、スター選手たちは別の世界の人間に見えていたことだろう。その中で大坂が示してくれた好意がうれしかったようだ。WTAの公式サイトは「素晴らしい人。世界ナンバーワンになったのに、あんなに地に足が着いた態度でいられるなんて」と大坂の人間性を称える言葉を伝えている。


今回の全仏でも、シフィオンテクは大坂について話している。


「彼女の全米優勝は私を奮い立たせてくれました。それより前に彼女の試合を見たときには、彼女はもっと良いプレーができるのに、と感じていました。ウェスタン&サザンオープンや全米では、なおみの最高レベルが戻っていました。このことは刺激になりました。私は『自分ももっとやれる』と思わされ、努力を続けました。正しい努力を続ける、その成果が成績となってあらわれるという点で、なおみは選手のお手本です」


大坂を近くで見てきたシフィオンテクには、若くして成功した大坂がプレッシャーに苦しむ姿も見えていたようだ。それを乗り越えたことも見習いたいという。昨年の全米で大坂のスポーツマンシップを称えたコリ・ガウフ(米国)といい、大坂の周囲にいい人間関係が築かれていくのは偶然ではないだろう。


大坂は1997年10月生まれで、シフィオンテクは2001年5月生まれだから、現時点で年齢差は3歳。シフィオンテクが四大大会初タイトルを手にすれば、大坂には最強のライバルが一人増えることになる。だが、大坂にはそれを期待する気持ちもあるだろう。


大坂、そしてアザレンカという元世界1位の女王が押すシフィオンテク。彼女が挑むのは第4シード、今年の全豪で四大大会初優勝を飾ったソフィア・ケニン(アメリカ)だ。二人の決勝が待ち遠しくてならない。


秋山英宏


※写真は「全仏オープン」でのシフィオンテク
(Photo by Tim Clayton/Corbis via Getty Images)

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