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秋山英宏コラム

全豪OPがいよいよ開幕。大気汚染の不安を吹き飛ばすような熱戦を期待

「全豪オープン」会場で練習する大坂なおみ

広い範囲で発生したオーストラリアの森林火災は、人的被害を含め、深刻な影響を及ぼした。犠牲になった消防士や住居を失った方々、森をすみかとするコアラなどの動物たちや焼け焦げた樹木を想像すると心が痛む。


しかし、一時は開催が危ぶまれた「全豪オープン」は18日までに予選の日程を消化、本戦開幕を待つばかりとなった。

煙霧の影響で試合進行に影響が出たのは予選初日、1月14日のことだった。大気汚染が改善されるのを待って試合開始が遅れたばかりか、女子のダリラ・ヤクポビッチ(スロベニア)は試合途中に激しく咳き込み、結局、棄権に追い込まれた。この映像が拡散したことで、今年の「全豪オープン」は開催できないのではないかとの観測が広がり、"開催すべきではない"、"時期を遅らせて開催すべきだ"などとする意見も出た。


本戦選手のエリナ・スビトリーナ(ウクライナ)は、SNSに大気汚染の数値を示したうえで、「私たちは悪い出来事が起こるのを待たなくてはいけないのかしら」と問題提起した。


翌15日のメルボルンは最高気温が摂氏35度を超える暑さとなった。朝、筆者が部屋の窓を開けると焚き火のような匂いが部屋に流れ込み、町並みが白く霞んで見えた。ところが、午後から雲が広がって猛暑がやわらぎ、夕方から激しい雷雨となった。まさに恵みの雨だ。新鮮な空気に入れ替わり、屋外を歩いても違和感がなくなった。大気汚染の数値も急降下し、翌日以降は予選終了まで試合進行に影響は出ていない。


日本ではその後もしばらく大気汚染と大会開催の危機を伝える報道が続いたが、実情とはかけ離れたものだった。15日夜には森林火災被災支援のチャリティーマッチが開催され、ロジャー・フェデラー(スイス)、ラファエル・ナダル(スペイン)、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)、セレナ・ウイリアムズ(アメリカ)、大坂なおみ(日本/日清食品)、地元オーストラリアのテニス協会にチャリティーイベントの開催を促した同国のニック・キリオス(オーストラリア)といったトップ選手が会場のロッド・レーバー・アリーナでエキシビションマッチを行った。集まった支援金は日本円で約3億6,500万円に達したという。


そうそうたるメンバーが大会開幕直前の貴重な時間を犠牲にして集まったことには、大きな価値がある。日頃から慈善活動に熱心なキリオスはじめ、選手たちの社会貢献への意識の高さを示す迅速な行動だった。


大気汚染の危機が完全に去ったわけではなかったが、トーナメントディレクターのクレイグ・タイリーは「大会は開催できないなどとする様々な憶測もあったが、大会はこうして予定通り行われています」と話し、「選手たちの安全と健康は私たちにとって優先事項であり、スタッフやファンにとっても同じことが言えます」と強調した。


一方で、開催を疑問視する選手たちは大会側への意思表示を続けた。


イギリスのリアム・ブローディ(イギリス)は16日、「ATPと"全豪オープン"から届いたメールには、ほっぺたをひっぱたかれたような気分だった。プレーできる環境だという。彼らは大丈夫なのかね? メルボルン市民に対し、ペットを屋内に入れるように警告が発せられたまさにその日に、僕は予選を戦ったんだよ」とSNSを通じて抗議した。


デニス・シャポバロフ(カナダ)も「あのようなコンディションでプレーして、自分の生命、健康にリスクを負いたくない」と不安を口にするなど、まだ火種はくすぶっている。


大会は善後策として、大気汚染の程度によって試合実施を考慮する「Air Quality Policy」を発表、大気汚染を示す数値が基準を超えると試合を一時中断するとしている。


フェデラーやナダルは大会側の決定を尊重する態度を見せている。フェデラーはこう話している。


「安全にプレーできるか否か、大会側は私たちに情報を提供してくれるだろう。大会期間中、常に空気が悪いとかそういうことにはならないと思う。なんとか切り抜けられるのではないか」


ナダルは「医師など専門家の声を聞いた上で大会側が判断を下すことが最も重要だ」と語ったが、開催自体に反対の意思は示していない。


多くのファンが開幕を心待ちにしている。失われた人命や自然はもとに戻らないが、大会が開催されれば、少しは心が晴れたと感じるメルボルン市民、オーストラリア国民も少なくないだろう。選手はじめ審判やボールパーソンなど大会を支える人々の健康は最大限守られるべきだが、大会が予定通り開催されるのはいいことだと思う。


20日の月曜日には、青い空の下、透明な空気の中で開幕を迎えられることを祈るばかりだ。


(秋山英宏)


※写真は「全豪オープン」会場で練習する大坂なおみ
(Photo by Darrian Traynor/Getty Images)

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