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秋山英宏コラム

敗退の望月が第1シードの重圧を否定。「みんなライバル。ランキングは気にしない」

「全米オープン」ジュニアの部でのインタビューに答える望月

ジュニア男子シングルスで第1シード望月慎太郎が2回戦で敗退した。ウィンブルドンジュニアで優勝、その後、ジュニアランキング1位に上りつめ、期待されていただけに早すぎる敗退となった。

もっとも、ランキングポイントと高額の賞金、さらに言えば人生をかけて戦うメインドローの選手とジュニアは、目指すものが違う。日本の男子として四大大会ジュニアのシングルス初優勝はもちろん誇るべき成果だが、あくまでもプロへの準備段階であり、結果だけに重きを置くべきではない。


今大会の望月は、2日前の1回戦から体調不良に見舞われた。周囲の話では胃腸の調子が悪いといい、ポイント間にも体を2つに折って苦しそうな表情を浮かべた。


敗れた2回戦のあと、望月はコンディションについて話した。
「(影響は)そんなにはなかった。準備もしっかりできていた。ただ、最近、あんまり体調はよくなくて、トレーニングで脚が攣ったりとかはあった。試合中はそんなに悪くなかった。ちょくちょく何かしら悪くなる。でも、それで負けたわけではないと思う」


体調不良の原因は不明だが、盛田正明テニス・ファンド専属コーチで、米国のIMGアカデミーで望月の指導にあたる山中夏雄コーチは、ストレスの影響もあるのではないかと推測する。


テレビの情報番組にも取り上げられ、一躍、期待の星となった。ウィンブルドン優勝後の望月フィーバーを察知したIMGアカデミーと盛田ファンドは本人への直接取材を制限したというが、賢明な措置だろう。望月は「(取り巻く環境は)そんなに変わってはいない。あの(優勝の)一瞬だけで、そのあとは今まで通りなので、あまり気にしていない」という。


ただし、ジュニアテニス界での立ち位置は大きく変わった。少し前まで四大大会ジュニア出場が目標だったのに、出場2大会目で早くも頂点を極め、全選手から追われる立場になった。180度の立場の変化が16歳の精神面、体調面に変調をもたらしたとしても不思議ではない。


とはいえ、「もとから、背は小さいですし、頑張ってみんなを倒そうとしているので、そこ(周りの選手が向かってくる感じ)は感じない」と本人が立場の変化を気にしていないのが救いだ。


「いつも挑戦者の気持ちでやっているので、ランキングとかはまったく(気にしない)。みんな自分のライバルですし、ランキングが上がったからどうこうというのはまったくない。いつも通り練習し、いつも通り試合をした。プレッシャーとかは別に、そこまでは感じていなかった」


想定外の敗退に、日本の報道陣は「第1シードのプレッシャーか」と先入観を持ったが、16歳に受け流された。


追われる立場のプレッシャー、注目されるプレッシャーといった精神面に敗因を求めすぎないのは正しい態度だ。コンディション不良も言い訳にしない。賢い選手なのだ。山中コーチはじめ、周囲の指導も行き届いているに違いない。


では、敗因はどこにあったか。望月はリードを生かせなかった第2セットの攻防についてこう話している。


「自分も良いプレーをしていて、彼も良いプレーをしていたので、追いつかれることに関してはしょうがないと思っていましたけど、マッチポイントは完全に意識して、ちょっとびびったのかなと思います」


山中コーチの言葉で補足しよう。コーチは「ひとことで言えば、消極的だった」と話している。


「チャンスが来たら、失敗しても自分から取りにいくのが彼のいいところなのに、(有利な展開を)作りにいった。びびっているのに、難しいところで勝負した」


硬くなったことが悪いのではない。ショットを組み立て、もっと状況をよくして安全に得点しようとした戦術選択がまずかったというのだ。


プレッシャーのせいにしたら、問題解決の方程式が複雑になり、糸口が見えにくくなる。山中コーチは本人以上にそれを分かっている。そして、本調子ではない中で健闘した望月をこう称えた。
「動きはよくなかった。その割によく頑張ったことは評価したい」


ランキング1位の立場は簡単ではない。ただでさえ、将来に向けて足場を固め、覚悟を決めなくてはならない大事な時期だ。だから望月と山中コーチはプレッシャーに蓋をしてしまうのだ。プロを目指すなら、今後、嫌でもプレッシャーと闘わなくてはならない。だから今は、プレッシャーは関係ないと言い切ってしまって構わない。プレッシャーの海を、上手に渡っていってほしい。


(秋山英宏)


※写真は「全米オープン」ジュニアの部でのインタビューに答える望月
(画像提供:WOWOW)

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