秋山英宏コラム

11年前の雪辱を果たしたフェデラーが決勝進出。ジョコビッチと対戦

「ウィンブルドン」でのフェデラー(右)とナダル(左)

ロジャー・フェデラー(スイス)がとうとう雪辱を果たした。伝説の試合となった2008年の男子シングルス決勝でラファエル・ナダル(スペイン)に敗れてから11年後、同じセンターコートでライバルを破ったのだ。

ナダルがキング・オブ・クレーなら、フェデラーは芝の帝王だ。自分の庭のウィンブルドンで敗れたフェデラーは「断然、最もつらい敗戦だ」と話した。その後、ウィンブルドンで両雄が相まみえる機会は途絶え、11年ぶりに実現した対戦だった。
 
激しいラリーの応酬だった。対戦前、フェデラーは「ラファは、どのサーフェスでも、あらゆる選手に勝つことができる。クレーコートスペシャリストではない」と話した。一方、ナダルも「このサーフェスで史上最強の選手とやるのは楽しみだ。決勝に進むには自分のベストのテニスをする必要がある。ロジャーとプレーするのは無二の機会だ」と帝王をリスペクトした。
 
ラリーの激しさ、両者の動きのスムーズさは、まさにレジェンド同士のバトルにふさわしかった。フェデラーは錦織圭(日本/日清食品)との準々決勝で見せた早い攻めをここでも見せた。ただし、それはナダルも同じだ。
 
ファーストサーブでのポイント獲得率ではナダルが74%、フェデラーが73%とほぼ互角。ショットが4本目までに決着したショートラリーでの得点数では、ナダルが86ポイント、フェデラーが81ポイントと、ナダルが5ポイント多かった。先に攻めるという点では互角か、ナダルがやや上回ったことになる。
 
フェデラーは、二人の戦い方は以前と大きく変わったと言う。「ラリーが短くなった」というのだ。


「ワンツーパンチで決まることが多くなった。いつも攻める機会をうかがっている。この点でナダルはベストのプレーヤーの一人だ。長いラリーが減ったのは、10年前、11年前との大きな違いだ」
 
守備的、あるいは攻めが遅いというイメージは、今ではナダルに対する固定観念でしかない。
 
錦織圭は「昔のようにゆっくりラリーをしてくれなくなった」とフェデラーの変化を指摘している。もともと攻めが早かったが、ますます早くなったというのだ。フェデラーもナダルも、30歳を超えて進化を止めていない。
 
中程度の長さのラリー、つまり5〜8本のショットで決着したラリーでの得点は、フェデラーが35ポイント、ナダルが21ポイントと、フェデラーが大きく上回った。さらに9本以上のラリーでは、互いに10ポイントずつ取り合い、全くの互角だった。
 
フェデラーがロングラリーでもナダルのトップスピンに打ち負けず、走り負けしなかったことが分かる。
 
それを象徴するシーンが第3セット中盤にあった。フェデラーはナダルのサービスゲームを破り、3‐1とした。しかし、次のサービスゲームでナダルの反撃にあう。ブレークポイントが2本あったが、20ショットを超えるロングラリーを2度制し、サービスキープに成功する。先にブレークを許したナダルは必死だったが、それをフェデラーがねじ伏せた。
 
これでフェデラーは主導権を取り戻した。また、二人が最高のアスリートであることを示したのもこのゲームだった。フェデラーは試合後、ロングラリーに強かったことを指摘されると、こう答えている。


「ロングラリーを制するのは気分がいいものだよ。こういう内容の濃いラリーはそんなに多くない。スピード、パワー、スピン、すべてにおいてハイレベルだ。クロスを打ち合うだけじゃない。我々はほとんどのポイントで自分から点を取りにいく。僕はそれを制することが大事だと分かっている」
 
このセット、5本以上のラリーでは、フェデラーが14ポイントを奪ったのに対し、ナダルが得たのはわずか3ポイントだった。
 
ロングラリーでも強いのは、動かされてもボディバランスを崩さないこと、そして、相手を左右に振るショットの厳しさとその精度、それらを支えるフィジカルの強さだろう。フェデラーのテニスは美しいと評されることが多いが、それに加え、この試合では肉体の強さ、精神的な強さも見せた。
 
フェデラーは、自身が持っていたウィンブルドンでの最多記録を更新する12回目の決勝進出となった。ナダルの全仏での決勝進出も12回で、同一のグランドスラム大会での男子の最多記録だったが、それに並んだ。
 
四大大会通算では31度目の決勝進出だ。30歳を超えてからウィンブルドンの決勝の舞台に立つのはこれで5度目となる。超人という言葉は、彼のような選手のためにあるのだろう。


(秋山英宏)


※写真は「ウィンブルドン」でのフェデラー(右)とナダル(左)
(Photo by Shi Tang/Getty Images)

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