秋山英宏コラム

いかに早い展開に持ち込むか。この点で大きく後れをとった錦織

「ウィンブルドン」でのフェデラー(右)と錦織圭(左)

 錦織圭は敗因を二つ挙げた。


「(第2セット以降)彼のファーストサーブの確率が上がり、エースも増えてきて、リターンゲームでほぼチャンスがなかった。セカンドサーブにもタイミングが合わなくなってきた。あと、自分のファーストサーブの確率が低かったので、どのゲームもプレッシャーを感じながらやっていた」

 一方、ロジャー・フェデラー(スイス)はサーブを勝因に挙げている。両者とも、サーブとリターンが試合を左右したと見ていることになる。


 フェデラーのエースは4セットで12本とそれほど多くなかったが、「返されなかったサーブ」(サーブのウィナーかリターンのミスで決着したポイント=いわゆるフリーポイント)が全体の40%にも達した。このことが錦織に「エースも増えてきて」と言わせたのだろう。


 フリーポイント40%は、フェデラーにとって1回戦からの5試合で最も大きな数字だった。第1セットは28%だったが、第2セット以降、37%、36%、62%と増えていった。ツアー有数のリターナーである錦織が返せないほど、サーブが好調だったと見ていい。  


 四苦八苦してリターンを返しても、次の「3球目」が厳しかった。甘くなった返球を容赦なく厳しいコースに叩き、錦織を立ち往生させた。リターンゲームの錦織は、これでほぼ息の根を止められた。


 フェデラーのファーストサーブ時のポイント獲得率は第1セットから順に76%、100%、80%、79%と、特に第2セット以降は申し分のない数字が並ぶ。第2セットはファーストサーブが入ると1ポイントも失っていない。4セット通算では81%という高い数字をマークし、錦織には付け入る隙がなかった。


 リターンに回ってもフェデラーは厳しかった。低い弾道で足もとに打ってくるボールがとりわけやっかいだった。錦織は、このリターンに詰まらされ、グラウンドストロークのミスを強いられた。この大会ではサーブが好調だった錦織の自信を打ち砕くようなリターンだった。


 錦織のファーストサーブ時のポイント獲得率は、4セット通算で57%と低調だった。3回戦では85%という数字をたたき出したが、これだけ数字が下がっては勝負にならない。特に第2セットは、ファーストサーブ時に36%、セカンドサーブ時は25%しか得点できなかった。


 ほかにも興味深いスタッツがある。サーブとリターンを含む4本以内のショットで決着した場合の両者の得点を見ると、第1セットは錦織が27ポイント対22ポイントと上回ったが、第2セットはサーブの調子を戻したフェデラーが20対6と圧倒した。第3セットは錦織がやや持ち直したが、それでもフェデラーが35対29と優位に立ち、第4セットもフェデラーが30対19と大きく上回った。


 第2セット以降のフェデラーが、サーブとリターンを使って完全にゲームを支配したことが、この数字でおわかりいだけるだろう。


「ショット4本以内の得点数」で上回った選手が必ずセットを取っているのも興味深い。


 この試合の焦点は、フェデラーの早い攻めを錦織がいかに封じるかにあった。逆に、錦織がいかに先に早い攻めに持ち込むか、だった。鮮やかな攻撃で第1セットを奪った錦織だったが、第2セット以降はフェデラーの早い攻めに完全に飲み込まれた。


「第2セットにいいスタートを切ることが大事だった。それがうまくできた」とフェデラー。一方、「焦っていた部分もあった。もうちょっと我慢していたらよかった」と錦織は苦い表情で振り返った。


「第2セット以降、先にブレークできそうな光が見えなかった」と錦織。これが、すべての男子プレーヤーが恐れるフェデラーの「早い攻め」なのだ。サーブとリターンという武器を駆使して、思い通りの早い展開に持ち込んだフェデラーに対し、錦織はこの点で大きく後れをとった。


(秋山英宏)


※写真は「ウィンブルドン」でのフェデラー(右)と錦織圭(左)
(Photo by Mike Hewitt/Getty Images)

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