秋山英宏コラム

世界1位のバーティ敗れる。敗戦後に見る本当の強さ。

「ウィンブルドン」でのバーティ

試合後のアシュリー・バーティ(オーストラリア)の表情、態度は、勝った試合と少しも変わらなかった。記者会見では「今はがっかりしているけど、1時間もしたら、もう大丈夫でしょう」と話し、ときおり笑顔も見せた。

 全仏オープンで四大大会初制覇、その後、初めてWTA1位の座につき、今大会には第1シードで臨んだ。3回戦まで極めて順調に勝ち進んでいただけに、ノーシードのアリソン・リスク(アメリカ)に逆転負けは不本意だろう。だが、「悪い試合をしたとは思いません。大事なところで彼女が一段上手でした」と落胆の色は見せなかった。


 確かにリスクが素晴らしかった。アンフォーストエラーはわずかに15本で、2倍の30本のウィナーを決めた。この大会には絶好調で乗り込んでいた。ウィンブルドン前哨戦の「リベマ・オープン」で優勝。今大会は1回戦で第22シードのドナ・ベキッチ(クロアチア)に逆転勝ち、3回戦でも第13シードのベリンダ・ベンチッチ(スイス)を逆転で破っている。ウィンブルドンではこれまで3回戦進出が3度あったが、4回戦進出は初めてだった。


 ベースラインのすぐ後ろにポジショニングし、正確なカウンターパンチを放った。腰を落とし、175㎝の長身を前傾させて打つフォームは華麗とは言いにくい。しかし、果敢に、また、どん欲にプレーする。グラウンドストロークは深く、ダウン・ザ・ラインも思い切りがよかった。これだけ厳しく攻めているのに、ショットは最後まで乱れなかった。


「私のボールはすごくフラットで、ネットでフィニッシュする形が好き。このプレーが芝に合うのでしょう」とテレビインタビューに答える間も会心の笑顔だった。


 バーティもその強さ体感し、敗戦を受け入れているように見えた。


 この大会はここまで失セット0で勝ち上がった。所要時間1時間未満で勝った試合も2つあった。3回戦まで計2度しかサービスゲームを落としていない。4回戦敗退は、ランキング1位のプレッシャーとは無関係だろう。大会前、バーティはナンバーワンとして初めて四大大会を迎える感想を話している。


「新しい感覚、いまだ経験したことのないものです。ただ、これまでと大きくは変わりません。私たち(チーム)は自分たちのやるべきことをやるだけ、その準備をするだけです。できる限り普段通りにやることだと思っています。注目が集まり、雑音も入ってきます。でも、コートでやるべきことは同じ。成長を続け、1日1日向上する、それだけです」


 テニスの準備だけでなく、マインドセット(心構え)も正しく行ったことが分かる。プレッシャーについて話す言葉から、彼女のテニス観も読み取れた。


「勝つか負けるかには関係なく、笑ってコートを出られるように、ベストを尽くし、できることをすべて出し尽くす」というのだ。この4回戦でも、できることはやったという思いがあったのだろう。口調は明るく、言葉は明快だった。


「今日は自分の日ではありませんでしたが、この結果は私たちのチームの限界を示すものでもなければ、私個人の限界でもありません」


 大会前には、こんな話もしていた。


「テニスのいいところは、常に次の大会が待っているということです。勝負を楽しむ機会があり、それに備えなくてはいけないということです」


 負けを受け入れ、負けから学ぶことは競技スポーツの常道だ。それを現ナンバーワンのバーティは実践している。会見場で涙をため、5分足らずで退出した大坂なおみの姿を思い出さずにはいられなかった。大坂ももう少し、敗戦との向き合い方を覚える必要がある。大丈夫、最初から負けることに慣れている選手はいない。経験し、少しずつ上手になっていけばいいのだ。


(秋山英宏)


※写真は「ウィンブルドン」でのバーティ
(Photo by Matthias Hangst/Getty Images)

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