秋山英宏コラム

錦織が3戦連続ストレート勝ち。好調のサーブが原動力に

「ウィンブルドン」での錦織

錦織圭が順調に4回戦にコマを進めた。失セット0で四大大会の4回戦に進むのは、14年全米、15年全仏に次いで3度目となる。14年全米の2回戦は2セットを取ったところで相手が棄権。また、15年全仏は3回戦が相手の棄権で不戦勝だった。3戦とも3−0のストレート勝ちで4回戦に進むのは四大大会では初めてだ。

サーブやストロークでのいわゆる“一発”がなく、常にラリー戦を強いられる錦織は、どうしても競り合う展開が多くなる。勝負強さで接戦を制するのが持ち味だが、競り合いのなかで、どうしてもセットを失うことはある。ところが今大会は3戦とももつれる場面が少なく、どの試合も快勝、圧勝の部類だ。所要時間は1回戦から順に2時間10分、1時間48分、1時間50分と“省エネ”に成功している。


四大大会ではこのところ準々決勝が壁となり、ビッグ3と当たる準々決勝までにいかに体力の消耗を押さえるかが課題だった。その点、今までの勝ち上がりは理想的だ。


試合のスタッツ(統計)が素晴らしい。なかでも注目すべきはサービスゲームのプレーぶりだろう。ファーストサーブの確率は、1回戦から順に70%、70%、75%。ファーストサーブ時のポイント獲得率は78%、79%、85%。セカンドサーブ時のポイント獲得率も59%、67%、56%と、どれも申し分ない。


サービスゲームでブレークを許したのは、3試合で4度しかない。ビッグサーバーのようなサービスゲームの安定感だ。スティーブ・ジョンソン(アメリカ)に圧勝した3回戦のあと、こう話している。


「サーブは謎にいいですね。なんでか分からないですけど。ファーストサーブを打っている感触はいいので、劣勢のときも自信を持ってファーストサーブを決めにいくことができる。なんでか分からないが、芝になるとよくなる」


「謎にいい」と独特の言い回しを使ったが、リラックスして打てているのが大きい。このコラムに書いたように、「僕みたいなサーブでも、ワイドに打ったり、スライスで曲げたりすれば、結構簡単にポイントが取れたりする」と、芝コートで有効なサーブ、サーブからのポイントの取り方が分かってきたからだ。球種やコースをうまく組み立てれば、案外楽にポイントが取れる、その安心感が好調さにつながっていると見ていい。


大会ではサーブの確率、ポイント獲得率のほかに「Unreturned Serves」(エースやリターンミスなど、相手が返球できなかったサーブの割合)も集計しているが、これも1回戦から33%、31%、30%と、ほぼ3本に1本はサーブだけでポイントが終わっていることが分かる。他のサーフェスでは、ほぼリターンが返ってくる前提でサーブを打たなくてはならない錦織にとって、これだけリターンが返ってこなかったら心身の負担は相当軽くなるだろう。


もちろん、サーブ自体の質が向上していることが大きい。右手首の負傷で17年シーズン後半戦を棒に振ったが、復帰後、サーブ力がぐんと上がった。以前は少なかったデュースコートのセンターへのサーブ、アドコートのショートワイドのサーブが増え、バリエーションが増えた。高い技術が求められるアドコートの「T」、すなわちサービスラインとセンターサービスラインの交点に打つサーブもときおり見せる。


この3回戦では、球速はそれほどではないが、深いサーブや縦のライン際を狙うサーブが冴え、ジョンソンにリターンを自由に打たせなかった。


「サーブはよかったですね。今日は一番良かったんじゃないかってくらい、気持ちよく打てた。リターンゲームでも相手にプレッシャーをかけることができたが、それもサーブをリラックスして打てたことが要因だった」


一方がうまくいけば他方もうまくいく好循環。しかも、どれだけリードしても安心せず、集中力を保とうと努める姿があった。そのマインドセットが、6-4、6-3、6-2の圧勝劇につながった。


ツアー通算400勝目の節目の勝利をつかんだ錦織。このサーブは大会第2週を勝ち進む推進力になるだろう。


(秋山英宏)


※写真は「ウィンブルドン」での錦織
(Photo by TPN/Getty Images)


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