秋山英宏コラム

男子は上位が盤石のプレー。群を抜くフェデラーの安定感

写真は「全仏オープン」でのフェデラー

 3回戦までの結果を受け、男子ツアーを運営するATPが公式サイトに〈四大大会でトップ10シードがそろって16強に残るのはオープン化以降3度目〉と題する記事を載せた。オープン化、すなわちプロ解禁の1968年からの半世紀の歴史で、これだけ上位陣が安泰の大会は2度しかなかったという事実にまず驚かされる。

 我々はよく〈順当に勝ち上がれば〉という表現を使って大会の先行きを占うが、実際、順当に勝ち上がるケースはそれほど珍しいのだ。


 過去2回とは、1969年全仏オープンと70年全豪オープン。選手層の厚さは今と比べようもない。なお、70年全豪は48ドローで行われている。69年の全仏では決勝でロッド・レーバー(豪州)がケン・ローズウォール(同)を破った。なお、この大会では準々決勝時点でも8人のうち7人までが上位10シード以内の選手だった。


 格段に選手層が厚くなった、にもかかわらず上位が順当に勝ち残っている。このことから容易に分かるのは、今の上位陣が盤石であるということだ。


 第1シード(以下、シード順は#で表記)のノバク・ジョコビッチ(セルビア)、#2ラファエル・ナダル(スペイン)、#3ロジャー・フェデラー(スイス)、#4ドミニク・ティーム(オーストリア)。#5アレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)といった面々が順調に勝ち上がっている。単純比較にあまり意味はないが、上位10シードのうち第1シードの大坂なおみを含む7人までが3回戦までに大会を去った女子シングルスとは好対照だ。


 2日の4回戦ではフェデラーがレオナルド・メイヤー(アルゼンチン)に6-2、6-3、6-3で快勝。わずか1時間42分で決着した。さらに、本命の一人に挙げられるナダルも、ストレート勝ちで無難に8強入りを決めた。第6シードのステファノス・チチパス(ギリシャ)は敗れたが、勝ったのが15年大会優勝の第24シード、スタン・ワウリンカ(スイス)なのだから、番狂わせとも言えない。


 4年ぶりに準々決勝に勝ち上がったフェデラーが試合を振り返った。
「相手にはビッグサーブがあり、風が強く厳しいコンディションだった。あまりベースラインでのラリーは多くなかったね。どちらか一方が常に押して、もう一方が守るという形になった。風が強く、しかも巻いていたから、風を背にしたら山の上から打ち下ろす感じだし、風下からだと丘の上に向かって打つ感じになるんだ。こういうコンディションで大事なのは集中で、それがうまくできた。この試合には満足している」


 相手に一度もブレークポイントを与えなかった。ファーストサーブ時のポイント獲得率83%、セカンドサーブ時も70%と非の打ち所のない内容だった。


 興味深いスタッツがある。3セットで獲得した94ポイントのうち、5本未満のラリーで取ったのが77ポイントにのぼる。すなわち、サーブを軸に、ストローク戦の最初のショットでほぼ決着をつけたことが分かる。


 強風、しかも気温30度を超える猛暑という条件下、ベースラインでの長いラリーを避け、武器の一つであるサーブで押したのだ。難しいコンディションのなかで正しい選択をしたことがわかる。


 これで4試合連続のストレート勝ちとなった。初戦からの所要時間はそれぞれ1時間41分、1時間36分、2時間11分、1時間42分。1試合平均平均1時間47分ほどで勝ち星をつかんでいる。快調に失セット1で4試合を勝ち抜いたナダルも1試合平均2時間17分かかっており、フェデラーの好調さ、効率の良さが分かる。完全無欠と評されるフェデラーにしても、クレーの全仏でこれだけ安定した戦いを見せることはそれほど多くない。


 前日、3回戦で敗退した大坂なおみは、「一般の人はランキングを見ただけで『彼女が勝つね』と言うけれど、選手というのはアップダウンがあるもの」とコンスタントに勝つ難しさを口にした。ランキング42位の選手に敗れた腹立ちまぎれというより、一般論を述べたものだ。しかし、フェデラーにこの論理は当てはまらない。


 この安定感、スタミナ消耗を最小限に抑えての勝ち上がりは、10年ぶりのタイトルに向けて、なによりの好材料だ。


(秋山英宏)


※写真は「全仏オープン」でのフェデラー(Photo by Quality Sport Images/Getty Images)

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