秋山英宏コラム

対戦相手もあきれるジョコビッチの強さ。決勝はナダルとの横綱対決に[全豪オープン]

0-6、2-6、2-6で第1シードノバク・ジョコビッチ(セルビア)に敗れたルカ・プイユ(フランス)が嘆いた。


「戦術を実行する時間さえなかった。戦術はアグレッシブにいくこと、ポイントで主導権を握ることだった。しかし、彼は常にベースラインから10cmしか下がらずにプレーしていて、攻撃を仕掛けることができなかった」

そんなポジションで多くのボールを処理していたのに、フォースト(守勢に回っての)エラーは21本、アンフォーストエラーはわずか5本と、恐ろしい安定感だった。


ベースラインのラリーでポイントが取れないプイユには、サーブで厳しいコースを突くくらいしか得点機会がない。しかし、厳しく狙うから確率は上がらず、得点を重ねることはできなかった。


試合時間わずか1時間23分、プイユは計4ゲームしか奪えなかった。総獲得ポイントは83対44と、このレベルではめったに見られないダブルスコアに迫る数字で、ジョコビッチが圧勝した。


24歳のプイユは大会の台風の目になっていた。4回戦で第11シードボルナ・チョリッチ(クロアチア)、準々決勝で第16シードのミロシュ・ラオニッチ(カナダ)を破っていた。新たに迎えたコーチ、アメリー・モレスモー(フランス)とのコンビがうまく機能し、これまで5回連続1回戦敗退に終わっていた全豪で、4強入り。四大大会の4強は16年のウィンブルドンと全米の8強を上回る自己最高の成績だった。


準決勝に勝てば、フランス選手としては2008年全豪のジョーウィルフリード・ツォンガ(フランス)以来11年ぶりの四大大会決勝が待っていた。しかし、まさにその決勝でツォンガが敗れた相手、ジョコビッチに快進撃を止められた。


「こういうプレーをしたら彼が間違いなく世界ナンバーワンになる。ミスをせず、よく動き、守備から攻撃にスムーズに切り替える。完璧と言えるほどのプレーをしている」


プイユは相手のプレーを称えるしなかった。母国の記者とフランス語で行う記者会見なら、また違った内容になるはずだが、英語での会見は結果的に大半がジョコビッチの強さを描写するために費やされた。


「ノバクはとてもとても速い。体勢も低い。ベースラインのすぐ近くにいて、どんな状況でもボールのプレースメントがいい。守備的な状況でもベースライン深く、ラインから10cm、20cmのところに送り込んでくる。そんなショットは簡単には打てるものじゃない。1回か2回、3回までならできるかもしれない。彼は3時間、4時間それをやってのける。ただ、僕はそれを想像するだけだ。僕は2時間持ちこたえることさえできなかったのだから」


昨日の第2シード、ラファエル・ナダル(スペイン)と第14シード、ステファノス・チチパス(ギリシャ)との準決勝も、予想に反し、6-2、6-4、6-0と一方的な結果だった。所要時間は1時間46分。プイユ同様、第3シードのロジャー・フェデラー(スイス)らを破って旋風を起こしたチチパスが止められた。チチパスはナダルのプレーをこう描写した。


「彼のプレーには驚いた。ツアーでは最高のビッグサーバーではないのに、まったくブレークチャンスに近づけもしないのはもどかしかった。ベースラインのプレーはアグレッシブだった。この試合からポジティブな要素を見つけるのは難しい。まったく違う次元のテニスをした感じだ」


チチパスもまた、相手のプレーを称え、強さにあきれ、溜息をつくしかなかった。こうして、相似形のような勝ち方で準決勝を通過した上位2シード、二人の横綱が決勝で相まみえる。


二人は12年に、記録が残っている中では大会最長となる5時間53分の戦いを演じ、ジョコビッチが優勝した。これは四大大会決勝での最長時間でもある。ともに準決勝は圧勝、ガソリン満タンで決勝を迎えるだろう。素晴らしい決勝になりそうだ。


(秋山英宏)


※写真は「全豪オープン」でのジョコビッチ
(Photo by Fred Lee/Getty Images)

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