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秋山英宏コラム

4強入りの大坂に対戦相手から「トッププレーヤー」のお墨付き[全豪オープン]

エリナ・スビトリーナ(ウクライナ)は首から肩の違和感を訴え、試合中にトレーナーの処置を受けた。「四大大会では体にちょっとした張りがあるのはごく普通ですが、今日は思ったより悪くなっていて、違和感を取り除くことができませんでした」。本人によると、終盤は少し攣ったような状態だったという。

「自分の100%を発揮することはできませんでした」と話したスビトリーナだが、すぐにこう続けた。


「でも、結局のところ、彼女が良いプレーをしたことに尽きると思います」


第1セットのスビトリーナは決して悪くなかった。彼女らしい、ミスの少ない安定したプレーだった。大坂なおみ(日本/日清食品)のリズムにならないように、深いトップスピンにバックハンドスライスを交ぜ、ラリーを自分のテンポに持ち込んだ。


先に大坂がブレークしたが、すぐにブレークバックされ、4-3となった。さらにブレークするも再びブレークバックで5-4。リードしてもそのたびに巻き返された。ランキングで上回り、優勢と見られていた大坂にはストレスの溜まる展開だったはずだ。


続く第10ゲームで0-40と大坂にトリプルセットポイントがきた。最初のポイントは大坂のバックハンドのミス。次も、バックハンドがベースラインを大きく越えた。大坂は左太ももを2度、強く打ちすえた。


次のポイントは、フォアハンドのエラー。イライラが高じたのか、大坂が大きな声を挙げた。それでも崩れなかった。相手のセカンドサーブをバックハンドでサイドライン際にリターンエース。4度目のセットポイントでは、大坂のバックハンドに重圧を受けたスビトリーナが返球をミス。ここまでミスの目立ったバックハンドを最後はしっかり打ち抜き、大坂が第1セットを制した。


第2セット、大坂が3-0としたところでスビトリーナがメディカルタイムアウトをとったが、すでに調子は下降線をたどっており、ゲームの行方はあらかた決していた。


試合後、大坂はこう話した。「今日のテーマはただ一つ。できる限り怒らないように努めることでした」。


イライラの溜まる試合であったことは間違いない。ブレーク合戦は自分のやりたい試合展開ではない。第1セットのバックハンドのアンフォーストエラーは19本に達した。安定したバックハンドの持ち主である大坂には、めったに見られないミスの数だった。


それでも気持ちを切らさなかった。大坂はこれまで2勝3敗のスビトリーナを難敵と認め、うまくいかなくなることも想定して臨んだはずだ。大坂は相手のプレーについてこう語る。


「彼女とプレーするのはとてもタフ。彼女のペースにはまってしまうからです。強打すれば、それをそっくりそのまま私に返してくる。特にバックハンドサイドはクロスを何本も続けるので、とても困難です」


「怒らないように努めた」のは、それくらい難しい試合が想定されたからだ。怒りが試合を台無しにすることは、昨年の全米優勝後の数カ月で学んでいた。


「全米では感情をあらわすことはありませんでしたが、その後は、がっかりしたり、ラケットを投げたり、感情を表に出してしまいました。そうしたいと思ってやったことではありません。冷静にやれば良いプレーができるのです。落ち着きを失うと良いことはありません」


相手は世界ランク7位の実力者、苦手なスビトリーナだっただけに、自分に課したテーマをクリアしたのは立派だった。


スビトリーナはこう振り返った。「彼女はトッププレーヤー、私が100%でなかったら、そして彼女にチャンスを与えたら、間違いなくそれをものにしてしまうでしょう。そうしてしまったのは残念です。私は彼女のレベルに匹敵するだけの特別な何かを発揮することができませんでした」。


ツアー通算13勝、昨年のWTAファイナルズを制した実力者が、大坂をそこまで警戒していたことに少し驚かされた。昨年の2度の対戦はともにスビトリーナが制した。それでも自分の「エクストラ」を出さねば勝てない、と見定めていた。何度も対戦したスビトリーナが言うのだから、間違いない。そこが大坂の現在地なのだ。


(秋山英宏)


※写真は「全豪オープン」での大坂なおみ
(Photo by Fred Lee/Getty Images)

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