秋山英宏コラム

「選手としての成熟を示した」大坂が2試合連続の逆転勝ち[全豪オープン]

大坂なおみ(日本/日清食品)のコーチ、サーシャ・バジンは、WTAツアーで行われているオンコートコーチングや、今大会の予選で採用されたコートサイドからのコーチングは、個人的には好きではないという。「テニスの純粋さを損なうものだと考えている」と手厳しい。

「まったく正しいとは思わない。父が僕をコートに連れて行ったのは、自立心を伸ばすためだった。いかに問題に対処するかを学ぶため、だれも助けてくれなくても自分でやることを学ぶためだった」


まさに正論だ。だからバジンコーチは、第1セットを落としながらも第2セットで巻き返し、苦しみながらも2試合連続の逆転勝ちを収めた大坂を褒めるのだ。


「この2試合、第1セットを失いながら、自分で問題を解決し、挽回して勝ったのは立派だった。彼女は成熟を示した。以前よりはるかによくなった」


昨シーズン、大坂とともに取り組んできたのがまさに「自分で問題を解決する」という点だった。オンコートコーチングに呼ばれたバジンコーチが大坂を励まし、力づけ、イライラをなだめ、頭の中をポジティブに切り替えるようアドバイスする姿がたびたび見られた。だが、それは二人が望んだ形ではなかったのだ。本来は自分で問題を解決すべきであり、実際、うまくいかなくても、そこから学ぶことが選手としての成熟を促す、二人のこの考え方は揺らがなかった。


アナスタシア・セバストワ(ラトビア)は手強い選手だった。よく走って大坂の強打を拾い、けっしてあきらめない。フラット系のグラウンドストロークはライン際にコントロールされ、バックハンドスライスはコートを滑り、容易に攻撃を許さない。


強打者タイプがこういう選手の落とし穴にはまる場面は珍しくない。四大大会の4回戦では3勝1敗と大舞台で強い選手でもある。対戦成績は2勝2敗。大坂にとっては最も苦手なタイプと言える。


第1セット、先にブレークを許した大坂に挽回のチャンスはこなかった。自分の調子が悪いわけではないが、打っても打っても返ってくる。大坂は「もっと打たなくては彼女に拾われてしまう」とムキになった。しかし、第2セット以降は違った。「圧倒されているとは思わなくていい」と考え方を変え、冷静さを取り戻していた。


「落ち着いて、自分のできる範囲内でプレーすべきだと考えた」。まさに自分で問題を解決したのだ。


第1セット終盤、印象的な場面があった。フォアハンドのミスでポイントを失い、ゲームカウント3-5とあとがなくなった。フラストレーションは少なからずあっただろう。しかし大坂はコート後方に置いたラケットの面の上でボールを弾ませた。ラケットをたたきつけるかわりにボールと戯れ、気持ちを切り替えたのだ。子供のような姿の裏には、落ち着こう、感情的になるのをやめなければ、という意志があったはずだ。


第2セット5-3からのサービスゲームでは、フォアをミスしてボールをコートに打ち付けた。最終セットにも3-2からブレークバックを許し、ラケットを投げる場面があった。それでも、大崩れはしなかった。


試合後、選手としての成熟、すなわち大人のプレーヤーになることについて、大坂はこんな話をしている。


「自分にとって成熟とは、うまくいかないことも受け入れることだと思っています。自分にとって大事なことですが、これまで、なかなか上手にできていませんでした。すぐに泣き言を言ったりするところがありましたが、もっとしっかりすべきだと思っています。私の大きな課題です」


精神面の問題であるだけに、なかなか一足飛びに課題解決とはいかない。それでもバジンコーチが「成熟した」と褒めるのは、大坂が課題と向き合う姿を見ているからだ。コーチは言う。


「彼女は昨年、多くを学んだと思う。あらゆる状況から学ぶことがあっただろう。このことが今の彼女につながっている」


どの選手も、こうやって失敗しながら、自分と闘いながら、学ぶのだろう。大坂が2試合連続で1セットダウンから逆転勝ちを収めるのは、ツアー本戦では初めてだった。成熟に向けて一歩ずつ進んでいるのは明らかだ。


(秋山英宏)


※写真は「全豪オープン」での大坂
(Photo by TPN/Getty Images)

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