秋山英宏コラム

女子ダブルスの強豪国日本。選手それぞれの思いが火花を散らした[全豪オープン]

大会第3日のスケジュール表に、日本女子の名前が4人。いずれも女子ダブルス1回戦の出場選手だ。加藤未唯(日本/ザイマックス)/二宮真琴(日本/橋本総業ホールディングス)ペアと、アメリカ選手と組んだ日比野菜緒(日本/LuLuLun)が直接対決。同じ時間帯にベラルーシ選手と組む青山修子(日本/近藤乳業)の試合も予定されていた。

日本人対決を制したのは日比野ペアだった。第1セットを落としたが、第2セット以降はプレーが噛み合い、流れを引き寄せた。勝利の瞬間、日比野ペアはそろって両手を突き上げ、笑顔をはじけさせた。


対戦相手の加藤、二宮と日比野は同い年。加藤は同じ練習拠点で競い合うチームメイトであり、二宮も一時、同じ拠点で腕を磨いた。試合後、近い関係だったから余計にうれしかったかと聞いたが、そうではなかった。


「相手がどうこうより、パートナーが同い年で、今回初めて組んだが、感じの良い子なので、この子と一緒に勝ちたいと思った」という。


もともと、ダブルスでの加藤と二宮の技量、適性を認め、一目置いていた。だから、対戦相手よりパートナーを意識した。そして、逆転勝ちを「ダブルスとしては向こうの方が完成度が高い。私たちは数本のラッキーなポイントだったり、流れをつかんだという感じ。雰囲気で持っていった感じです」と謙虚に振り返るのだ。


日比野は「ダブルスで良い感じをつかんでシングルスに生かしたい」と考えている。ダブルスに専念している二宮とは目的意識も大きく異なる。そうやって無欲で臨み、ダブルスで実績のあるペアに勝ってしまうのもこの競技の妙味だ。


敗れた加藤と二宮は、試合後、仲の良い日比野との対戦はやりにくかったかと聞かれると即座に否定した。それが2人のプライドだろう。日比野は「プレッシャーは(何度もペアを組み、完成度を高めてきた)向こうのほうがあったと思う」と相手を思いやった。


青山は第12シードで実績豊富なアンナ レナ・グロエネフェルト(ドイツ)とバニア・キング(アメリカ)をストレートで破る会心の試合となった。


現在のシングルスランキングは633位、ダブルスは39位だ。13年のウィンブルドン女子ダブルス4強など、キャリアのほとんどはダブルスで築いたものであり、この種目への思いは強い。フェド杯日本代表でもダブルスの柱として活躍したが、近年は加藤、二宮、穂積絵莉(日本/日本住宅ローン株式会社)の台頭で、その地位が脅かされている。


それだけに、ダブルスで通算16タイトルのグロエネフェルトと同15のキングに勝ったのは大きかった。


「自分の弱い部分が出ているときは、試合に入れていないというか、戦えていない試合が何回かあった。今日はとにかく自分のできることを出そうと思った。勝つためにしっかり戦えた」


謙虚な青山の口から聞かれたこれらの言葉から、満足感と自負が読み取れる。昨年の全仏女子ダブルスでは、穂積/二宮が日本選手同士のペアとして初の四大大会準優勝と活躍した。昨年以降、穂積、加藤、二宮、日比野には直接対決でも苦杯をなめていた。


「負けたことに関しては悔しい気持ちもある。自分もダブルスを理解しようとやっている中でなかなか結果が出ず、先に結果を出されて悔しく思った。結果を出しきれない自分に悔しさもあった」


長く日本の女子ダブルスを先導してきた選手の正直な思いだ。ただ、今は、自分にできることをやる、周囲に惑わされず自分に集中する、と気持ちを切り替えている。


ダブルス世界ランキングを見ると、22位に二宮、31位に穂積、39位に青山、45位に加藤、70位に日比野と日本女子が高いレベルで競い合う。互いに刺激し、高め合っている。


表面上、ぎらぎらしたものは見られないが、見えない火花を散らしているはずだ。意識するしないにかかわらず、負けるものかという思いはどこかにあるだろう。


それぞれのダブルスへの思い、同国の仲間への思いが、同時進行で行われた2試合に凝縮されていた。その強い思いが、女子ダブルスで強豪国となった日本を支えている。


(秋山英宏)


※写真は「全豪オープン」での二宮(左)と加藤(右)
(Photo by Mike Owen/Getty Images)

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