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秋山英宏コラム

穂積、二宮の史上初の決勝進出にジュニアも続いた--日本のダブルスが強くなった理由[全仏オープン]

2017年「香港オープン」のときの二宮

女子ダブルスで、穂積絵莉(日本/橋本総業ホールディングス)/二宮真琴(日本/橋本総業ホールディングス)が日本選手同士のペアとして初の四大大会決勝進出を果たした。準々決勝で第1シードティメア・バボス(ハンガリー)/クリスティーナ・ムラデノビッチ(フランス)を倒し、準決勝では第8シードのペアを圧倒した。

全仏ではキム・クライシュテルスと組んだ杉山愛さんの03年の優勝もあるが、体格やパワーでトップ選手に及ばない日本選手同士が組んでここまで勝ち進んだことには大きな価値がある。

たまたま同じ日に、ジュニア男子ダブルスでチェコ選手と組んだ田島尚輝が、さらにジュニア女子ダブルスで内藤祐希佐藤南帆のペアがそろって決勝進出を決めた。

年代を問わず、日本勢がダブルスで優位を示した形だが、果たして偶然なのか。選手たちが試合後、似たような言い回しを使ったことに気がついた。

「今回のパートナーと組んだのは初めてですけど、1回戦から、やることをお互い確認しながらやってきました。向こう(この日の対戦相手)は多分、ただやってきた感じなので、そこの差が勝ちにつながったかなと思います」

これは田島の振り返りだ。次は佐藤のコメント。今大会と同じ内藤と組んで準決勝敗退の全豪と変わった点は、と問われ、こう答えた。「やることをはっきり、明確にするように、ポイントの前とかに話したりしました」

一方、内藤はこんな話をしている。「(お互い)日本語だから、外国人の選手と組むよりコミュニケーションをとることが多いし、困ったときもすぐ相談できるので、それはほかの国の選手と組むより長所だと思います」

コミュニケーションをとり、やることを明確に、互いに確認しながら、というのが17歳の3人に見られた共通項だ。一方、穂積もペア同士がコミュニケーションをとり、戦術を相談しながらゲームを進める利点について話している。

「日本人は、しっかり綿密に話し合ったり、コミュニケーションをとってやるのがいいんじゃないかなと思います」「外国選手はあまり考えずにフィーリングでやる」

穂積は、チームでの「作戦会議」の効果についても話している。「コーチと選手で共有することで頭も整理されますし、ピンチになったときに何をすべきか、二人で瞬時に考えられる。『ストレートに打っていって。ロブを使って』と言葉に出して確認するだけなんですけど、言葉に出すことで整理できます」

日本のプレーヤーが、もともとペア同士、話し合いながら共同作業を行うことに長けているのは確かだろう。ただ、こうした試合の進め方が、年代を問わず共通理解となっているのは、やはり指導や訓練の結果ではないか。

日本の強化を束ねるのは、フェドカップ代表監督も兼ねる土橋登志久強化本部長だ。15年11月にフェド杯監督に就任すると、ダブルス強化を長期的な課題の一つに掲げた。当時の植田実デビスカップ監督も、ダブルス強化の課題を突きつけられており、近年、ダブルスの強化はナショナルチームの重要課題となっていた。

そこで、現役時代にダブルスで実績を残したトーマス嶋田と古庄大二郎が相次いでナショナルチームコーチに招かれた。また、英国ナショナルチームなどを指導し、ダブルス指導の権威とされるルイ・カイエ氏を招聘して指導者講習会を行うなど、地道な取り組みがあったことも見逃せない。

17年には穂積と加藤未唯(日本/ザイマックス)が全豪の女子ダブルスで4強入り。ウィンブルドンで二宮が続いた。チェコ選手と組んでやはりベスト4。今年の全豪では、ドイツ選手と組んだマクラクラン勉(日本)が4強入りした。強化は徐々に実りつつある。

海外を転戦する選手やジュニアにダブルスの指導を行う機会は限られるが、土橋本部長は、四大大会や味の素ナショナルトレーニングセンターで、機会を見つけて助言をしてきたという。同本部長にはその助言が「浸透し始めている」という手応えもある。

話し合って、やるべきことを明確にする--特別、難しいことではないが、ジュニア、プロを問わず、選手がその大切さを理解しているのは、指導が行き渡ってきたあかしだろう。3組同時の決勝進出は、たまたまというわけではない。

(秋山英宏)

※写真は2017年「香港オープン」のときの二宮
(Photo by Power Sport Images/Getty Images)

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