秋山英宏コラム

身長170cmの闘士シュワルツマンは強烈な印象を残して大会を去った[全仏オープン]

準々決勝で敗れたシュワルツマン

昨日の男子シングルス準々決勝が雨天順延になったため、このコラムも前日の続編。小柄な選手の試合が面白いのは、パワーに恵まれない分、自分の持っている強み、他の選手にはない武器で勝負しようとするから、という話の続きです。

ディエゴ・シュワルツマン(アルゼンチン)の母親は、彼が台所の壁にスープスプーン(!)でボールを打ち返す姿を見て、幼い息子のテニスの才能に気づいたという。しかし、10代前半の頃、シュワルツマンはテニスを断念しようと考えていた。将来的にも身長は170cmを超えないであろうと医師に告げられたからだ。だが母親は、身長はテニス選手になるというあなたの夢を妨げるものではないと言い聞かせ、頑張りなさいと諭したという。

シュワルツマンはツアー屈指の俊足の持ち主として知られるが、このエピソードが物語るように、ラケット扱い、ボール扱いも抜群にうまい。幼い頃、家族に披露したその才能を伸ばし、この地位にたどり着いた。

前回、取り上げたシモナ・ハレプ(ルーマニア)の特徴は脚力と展開力だ。彼女の目標となったのはジュスティーヌ・エナン(ベルギー)であり、ロジャー・フェデラー(スイス)だった。今大会、彼女は錦織圭(日本/日清食品)の練習を観客席から見ていたそうだ。男子の練習を見るのが好きだという。錦織の自由な創造性を盗もうとしていたのだろうか。これも体格に恵まれない選手ならではの工夫、知恵だろう。

そのハレプはガルビネ・ムグルッサ(スペイン)を倒し、2年連続で決勝にコマを進めた。一方、シュワルツマンは、第2セット途中から再開された男子シングルス準々決勝で、第1シードラファエル・ナダル(スペイン)に逆転を許し、敗れた。

ボールを巧みにコントロールするスキル、いわゆるグッドハンドとコートカバーリング能力は見せたものの、前日から調子を上げたナダルに及ばなかった。

昨日の中断前、シュワルツマンは第1セットを6-4で奪い、第2セットも相手のサーブをブレークして3-2とした。だが、ここで雨が強くなり、最初の中断。これがナダルに味方した。再開直後のサービスゲームをブレークされ、3-5となったところで再び雨が強くなり、順延となった。再開後の試合は、テニスではよくあることだが、前日とはまったく別のものになった。

「ラファは昨日とは別人だった」とシュワルツマンが舌を巻いた。

「第1セットはたくさんウィナーを奪い、ミスもなかった。ラファはベストの状態ではなかった。ラファを倒すなら昨日だった。今日は最初からまったく違っていた。攻撃的で、ミスもしなかった。試合は全然違うものになった。僕には、雨で何もいいことがなかった」

泣き言と言っては彼に悪い。出だしの勢いを止められ、プレー環境が大きく変わり、さらにナダルは戦術も変えてきた。シュワルツマンはこう振り返る。

「僕は昨日のようにプレーしたかった。でも、彼がそれを妨げた。彼はポジションを変え、僕はもっと左右に振りたかったが、そのゲームができなかった。ダウン・ザ・ラインも多かった。すごく攻撃的だった」

番狂わせは起こせなかったが、最後まで抵抗した。第4セットは2-6のスコアで決着したのに、54分もかかった。2-5からのナダルのサービング・フォー・ザ・マッチは10分以上を要した。ウィナーの数は4セットで37本と、ナダルの34本を上回った。

マッチポイントを制したナダルはネットに歩み寄り、シュワルツマンの肩を抱いた。二人はスペインにあるナダルのアカデミーで時々、練習を共にする仲。レッドクレーの王者と肩を組み合ったシュワルツマンの笑顔は、すべてを出し尽くしたという表情に見えた。

月曜日に更新される世界ランキングでは、11位に浮上する見込みだ。近いうちに身長170cmのトップ10プレーヤーが誕生するだろう。

(秋山英宏)

※写真は準々決勝で敗れたシュワルツマン
(Photo by Clive Brunskill/Getty Images)

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