マイページ

コラム

マッケンロー、ズベレフ、マレー、プリスコバ...テニス選手同士の兄弟姉妹【2】

@Getty Images

他のスポーツと同じように、テニスでも兄弟・姉妹で揃ってプレーしていることは珍しくない。とはいえ、ともにプロとなり大舞台で活躍するのは非常に狭き門。そんな偉業を成し遂げた稀有な例を、同じスポーツで切磋琢磨することにはどんな恩恵、苦労があったのかといったエピソードも交えてご紹介しよう。

■悪童の天才と正反対の弟~ジョン&パトリック・マッケンロー


ジョン・マッケンロー(アメリカ)とパトリック・マッケンロー(アメリカ)は太陽と月にたとえられるほど対照的なキャリアを歩んできた。1959年生まれのジョンがテニスを始めたのは8歳の時と決して早くはなかったものの、すぐさま才能を発揮していく。1978年にプロになるとその2年後にシングルスで世界1位、ダブルスでも1983年に世界トップとなった。シングルスで77、ダブルスで78ものタイトルを獲得。グランドスラム優勝はシングルス、ダブルス、ミックスダブルス合わせて17回を数える、伝説的な選手の一人だ。


そんな兄と7歳離れているパトリックは、判定をめぐってクレームや暴言が多く、悪童と呼ばれたジョンと昔から仲が良かったそう。彼らの父親によれば、3人兄弟の長男であるジョンはすぐ下の弟マークのことは気に入らなかったが、末っ子のパトリックが生まれた時は大喜びしたという。「誰もがパトリックを好きになるんだ」


パトリックは早くから成功を収めた兄を尊敬し、テニスアカデミーや大学も同じところに入り、テニス選手になり、引退後は解説者となるなど、兄の足跡を辿っていく。だが、選手としては兄ほどの成功を収めることはできなかった。シングルスでキャリア最高28位、優勝はわずか1回。比較的成績の良かったダブルスでも世界3位、「全仏オープン」を含む16のタイトル獲得と、偉大な兄に大きく水を開けられた。シングルスで3度兄弟対決が実現しているが、テニス史上2度目のシングルス決勝での兄弟対決となった1991年のワシントン大会を含むすべてで兄が勝利。ダブルスでも基本的に別の相手と組んでおり、兄弟で獲得したタイトルは2つにとどまっている。


しかしパトリックは生来の人当たりの良さを生かし指導者として成功。ジョンがすぐやめることになった「デビスカップ」のキャプテンもパトリックは全米歴代最長となる10年務め上げ、2007年には母国を12年ぶりの優勝へ導いた。また、全米テニス協会(USTA)にも長年関わり、選手育成などに尽力した。


現在は二人とも解説者としてESPNなどで仕事をするほか、2017年から行われている「レーバー・カップ」で「チーム・ワールド」(世界選抜)の監督を務めるジョンの傍らに助監督としてパトリックの姿を見ることができる。50年以上前から今でも、ジョンとパトリックはコート内外で一緒に過ごしているのだ。


■直接対決でも終始仲良し~ミーシャ&アレクサンダー・ズべレフ


前述のマッケンロー兄弟のように仲が良いのが、ミーシャ・ズべレフ(ドイツ)とアレクサンダー・ズべレフ(ドイツ)。1987年生まれのミーシャと1997年生まれのアレクサンダーは10歳離れているが、元テニス選手の両親のもとに生まれ、ともに父親に教わる形で幼い頃からテニスをプレーしてきた。


だが、選手としての成績はかなり異なる。ミーシャは2017年の世界25位がキャリアハイで、優勝は2018年の「ATP250 イーストボーン」のみ。対するアレクサンダーのベストは世界3位で、2017年に20歳で達成したその数字を更新できていないが、11のタイトルを手にし、鬼門だったグランドスラムでも近年は「全仏オープン」で準々決勝、「全豪オープン」で準決勝進出を果たしている。


しかし、兄弟の間に競争心は存在しない。それを如実に表していたのが、ツアーレベルでは唯一の直接対戦となった2018年「ATP500 ワシントン」。「どういう結果になろうともウィンウィンだ」と試合前に話していた二人は、対戦当日の練習もいつものように一緒に行い、試合後は笑顔でハグをし合い、試合後会見も共同で行った。「特別な瞬間だった。すごく楽しめたよ」とアレクサンダーが言えば、試合前に二人でウォーミングアップをしている時すでに「感情が込み上げて涙ぐんでしまった」と語るミーシャは「誇らしかったし幸せだった。家の裏庭で一緒にプレーしながら、いつか大きな大会で対戦することを夢見てきたからね。夢が叶ったよ。素晴らしい日になった。二人ともいいプレーができたしね」と、敗れても晴れ晴れとした表情で話した。


二人はダブルスでもよくペアを組んでおり、アレクサンダーにとって2回のダブルス優勝、2017年の「ATP250 モンペリエ」と2019年の「ATP500 アカプルコ」はいずれも兄と達成したものだ。仲良し兄弟がグランドスラム決勝で対戦する、あるいはオリンピックのダブルスにともに出場するという、別の夢も叶えることができれば、そのコートは再び笑顔にあふれるものになるだろう。


ともに世界1位で素晴らしい人間~アンディ&ジェイミー・マレー


1986年2月生まれのジェイミー・マレー(イギリス)と1987年5月生まれのアンディ・マレー(イギリス)。15ヶ月違いの年子は、幼い頃から母ジュディにテニスを教わる傍ら、サッカーやレスリングも一緒に楽しんできた。「いかにも男兄弟って感じよ。仲良くしていたかと思うと、次の瞬間には喧嘩しているの。いつも一緒だったわ」と、母親は二人の子ども時代を回想する。


幼い頃から切磋琢磨し合った甲斐もあって、ジェイミーはダブルスで、アンディはシングルスでともに成功。母国開催の「ウィンブルドン」を含むグランドスラムで何度も優勝し、2015年には「デビスカップ」も制覇。ベルギーとの決勝では兄弟でダブルスを組んで勝利した。2016年にともに世界1位に輝き、兄弟揃って大英帝国勲章(OBE)を授与されている。年齢の近い兄がいることはアンディの成長に大きく影響したと母親は考えている。「アンディのあの競争心は、兄のジェイミーがいたから養われたと思う」


英国を代表する二人だが、ジェイミーがシングルスではツアーレベルでほとんど試合に出たことがないため、シングルスで対戦したことはない。一方ダブルスではジェイミーの2戦2勝。ただし、兄弟対決はジェイミーにとってきついものだったようで「ネットを挟んで対戦するのは変な気分だよ。弟に勝ってほしい気持ちがあるのに倒さなければならないから、思い乱れたよ」と漏らしている。


味方としては前述の「デビスカップ」以外でも何度も戦っており、アンディがダブルスであげた好成績の多くは、3回の優勝のうち2回も含めて、ジェイミーと組んで成し遂げたものだ。2016年のリオデジャネイロ五輪でも二人でダブルスに出場していた。なお、ダブルスを組んでいる時のボスは「間違いなくいつもジェイミー」だと母親は証言する。


お互いの結婚式で付添人を務めたり、クリスマスに揃いのセーターを着たりと、プライベートでも親しい二人。彼らをよく知る母国の先輩、元世界4位のティム・ヘンマン(イギリス)は「たまにジェイミーがアンディの成功に嫉妬しているんじゃないかという声を聞くが、事実は全然違う。二人はお互いのことを気にかけていて、素晴らしい関係だよ」と語る。ケガに苦しむアンディが現役最後の大会になるかもしれないと考えていた2019年の「全豪オープン」の会場にもジェイミーは駆けつけていた。アンディ復帰後も、ダブルスで組んだり、支援するコメントをしたりと、兄は弟をサポートしている。


母親は誇らしそうにこう語る。「二人とも謙虚で努力家で理想的なロールモデルよ。良い選手であり、何よりも素晴らしい人間なの」


■ライバルでなく親友~カロリーナ&クリスティーナ・プリスコバ


マレー兄弟よりも近しい関係と言えるのが、一卵性双生児のカロリーナ・プリスコバ(チェコ)とクリスティーナ・プリスコバ(チェコ)。生年月日はもちろん、顔や身長もほとんど同じ二人だが、妹のカロリーナが2017年に25歳で世界1位を記録し、ここ3年半トップ10をキープしているのに対し、2分早く生まれた姉のクリスティーナはトップ30に到達していない。


ともに4歳でテニスを始め、「どちらがうまくなるかという競争心でプレーし続けていた」(カロリーナ)二人。ジュニアだった2010年当時、カロリーナは「全豪オープン」を、クリスティーナは「ウィンブルドン」を制覇している。実はプロになった当初、順調だったのはクリスティーナだった。2012年の「ウィンブルドン」で本戦初勝利をあげ(カロリーナは1回戦敗退)、2013年1月に妹より1年以上早くトップ100入りを果たした。しかしその後カロリーナが急成長し、2016年の「全米オープン」で第10シードながらも決勝進出すると、「全豪オープン」と「全仏オープン」でベスト4入り。一方のクリスティーナはグランドスラムでまだ3回戦を突破できていない。


しかし、ランキングは関係ないとカロリーナは語る。プロ転身後これまで10回対戦した両者の対戦成績は5勝5敗とまったくの五分。最新の対戦である2019年のバーミンガムで接戦の末に敗れたカロリーナは試合後、「クリスティーナはもっと上位にいるべき。今回のようなプレーができれば、大抵の相手を倒せるはずよ」と姉の実力に太鼓判を押す。


同じ大会に参加した時はコートの外でなるべく一緒に過ごしている姉妹は、対戦することになってもその習慣を崩すことはない。バーミンガムでも対戦前日には二人でショッピングとディナーに出掛け、試合当日も朝食と昼食をともにしていた。また、試合に負けてもご褒美があるそうで、「買った方は負けた方に何かを買うのがルールなの。だからプレゼントをもらったわ!」とカロリーナは語る。


今回カロリーナを破ったことで初めてトップ5から勝利をあげたクリスティーナだが、「私にとってカロリーナは世界3位の選手でなく、あくまで妹なの。勝った相手が彼女でなければすごく嬉しいだろうけど」と、勝利しても喜びはない。一方のカロリーナも「私たちは姉妹だから、どちらが勝っても二人の関係に影響はないわ」と断言する。


15歳で揃って最初のタトゥーを入れ、今でもお揃いの服を着てヘアスタイルも合わせた姿をSNSに投稿したりと、何をするにも一緒の二人。コート外でずっと一緒にいるため、コートでは少し距離を置いた方がいいという話になり、ここ数年は基本的に別々に練習しているが、「テニスコートでもどこでも、自分には頼れる友達がいるというのはありがたい」(カロリーナ)という絆はずっと変わらないだろう。


(テニスデイリー編集部)


※写真はズベレフ兄弟(左)とプリスコバ姉妹(右)
(@Getty Images)

コラムの関連記事

PAGE TOP
menu