コラム

女子テニス界をより良く......産後復帰したアザレンカの情熱、後進への思い

写真は「戦うママ」アザレンカ

元世界ランク1位のビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)は、テニス界の状況を変革しようと尽力する「戦うママ」たちの一人だ。妊娠により選手生命の危機を感じ一時動揺したものの、精神が落ち着くと、産後の選手の待遇改善運動に着手。後進の女子プレーヤーたちのため道を切り拓いた。

♦︎予期せぬ妊娠に、一時は「選手生活終わった」
アザレンカの妊娠は、望んだものではなかった。2016年当時の彼女は、WTAランク6位という好位置につけていた。妊娠が発覚すると動揺し、シーズン途中でのプレー中断を決意。さらに恋人と破局し養育権争いに発展したことから、生まれた子供を連れてカリフォルニア州を出ることが不可能となった。ニューヨークで開催された2017年の全米オープンを含め、複数の大会の欠場を余儀なくされている。BBCによると、一時は「自分のキャリアは終わった。もう二度とプレーすることはないだろう」と覚悟したようだ。しかし葛藤の末、結局は自分の信念と意思次第だという結論を見出し、コートへの復帰を決断。子を持てたことは幸せだが、同時に自分の夢も捨てきれなかった、と心情を吐露している。


出産後は育児が優先事項となり、テニスは全人生をかけた取り組みではなくなったという。しかし、仕事として今後も続けたいというアザレンカ。子供が学校に上がるまでの5年ほどはプレーを続けていきたい、との意気込みをみせている(Metro紙)。出産とそれに続くいざこざから一時は失意に沈んだものの、テニスへの情熱は失われていなかった。


♦︎女子テニス界に変革を
妊娠後のアザレンカは単なるプレーヤーという存在を超え、以前よりも精力的な取り組みに注力している。2017年に出産したセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)やトッププレーヤーのジョハナ・コンタ(イギリス)たちとともに、産後の選手に対する待遇の改善をWTAに訴えた。WTAは2018年、これに応じる形で女子プレーヤーから広く意見を募り、2019年からルールの改正を実行。出産あるいは怪我から復帰したプレーヤーが以前のランクで出場できる「スペシャル・ランキング」という制度が設けられているが、この制度を行使できる大会数が年間8大会から12大会まで拡大した。さらに、初戦でシード選手と当たることのないよう調整が施される。BBCの取材にアザレンカは、「ルールを変えるだけの力が私たちにはあるし、それを実際に決行した」とコメント。女性の待遇改善を訴え、状況を少しずつ変えてゆく姿勢を次世代への遺産にしたい、と語っている。


こうした変化は時代の流れに沿うものだと言えよう。10年前ならば30代に近づくと引退する選手が多かったが、37歳のセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)やロジャー・フェデラー(スイス)らによって状況は変化している、とMetro紙は解説。アザレンカ自身も、肉体面のコンディションは20代の頃よりずっと良いと語っている。選手生命の長期化が指摘される昨今、長く活躍できる環境づくりは理に適った動きだ。


♦︎今春以降の躍進めざましく
復帰後のアザレンカは好調だ。今年1月には不調に悩まされたものの、4月には世界ランク5位以内の選手を2度も撃破している。メキシコでのモンテレイ・オープンでは、当時世界ランク5位のアンジェリック・ケルバー(ドイツ)に準決勝で勝利。出産後初となる決勝進出を果たした。さらに、ドイツで行われたポルシェ・テニス・グランプリでは、当時4位のカロリーナ・プリスコバ(チェコ)戦を4-6、6-3、6-4で突破し、準々決勝に駒を進めている。


5月に入ると、BNLイタリア国際ではアシュリー・バーティ(オーストラリア)と組んだダブルスで優勝。ノーシードから勝ち進み、決勝で第8シードのアンナ レナ・グロエネフェルト(ドイツ)/デミ・スゥース(オランダ)ペアを下した。「戦うママ」アザレンカの快進撃は続く。


(テニスデイリー編集部)


※写真は「戦うママ」アザレンカ(Jimmie48 Photography / Shutterstock.co)

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