コラム

次代のテニス界を牽引する若手選手~早熟のサラブレッド、アレクサンダー・ズベレフ~

写真は2018「Nitto ATPファイナルズ」で優勝したズベレフ

ロジャー・フェデラー(スイス)、ラファエル・ナダル(スペイン)、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)が10年以上にわたりトップクラスを誇る一方、台頭する若手の少なさが憂慮されていた男子テニス界。しかし、その状況はようやく変わりつつある。着実に成長している若手選手を、その生い立ちや人となりも合わせて紹介していこう。

今回取り上げるのは、若手世代の筆頭候補であるアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)。


先月22歳になったばかりの彼は、2017年11月に20歳で世界3位となった早熟。ともにテニスコーチである両親のもとにドイツで生まれ、5歳でテニスを始めると、10歳離れた兄ミーシャの後を追って2013年に16歳でプロ入り。当初は800位台だったが、2014年末に136位、その後も右肩上がりで順位を上げ、2016年10月にトップ20、2017年5月にトップ10の壁を破った。しかも2017年9月からずっとトップ5圏内をキープと、安定感も光る。


獲得タイトル数も若手としては異例の多さで、2016年9月の「ATP250 サンクトペテルブルク」で当時世界3位のスタン・ワウリンカ(スイス)らを破って初優勝。翌年には2つのマスターズ(ATP1000)を含む5つのタイトルを獲得し、2018年には3つ目のマスターズ優勝、さらには「ATPファイナルズ」制覇も成し遂げた。21歳6ヵ月(21歳212日)での「ATPファイナルズ」優勝は、20歳8ヵ月のレイトン・ヒューイット(オーストラリア)、21歳5ヵ月のジョコビッチに次いで史上3番目の若さだ。


なお、21歳212日で優勝したズベレフとBIG4の同じ年齢時の成績(優勝回数、自己最高ランキング、通算成績)を比較してみると、ズベレフは、19歳でグランドスラム初優勝のナダルを除き、ジョコビッチとほぼ同じ、フェデラーとアンディ・マレー(イギリス)を上回るという結果になっている。


198cm の長身で、ベースラインから放つ強力なストロークが最大の武器。ATP最多の58勝をあげた2018年にはリターンゲーム獲得数(252)でトップと、サービスの方が得意なことが多い長身選手には珍しい傾向を持つ。


勝負強さも特長の一つ。BIG3のうち、フェデラーとジョコビッチ相手には五分の成績。それも白星は、マスターズ決勝、2018年の「ATPファイナルズ」での準決勝、決勝という大舞台であげたものだ。ナダルに対しては5戦全敗ながら、2017年の「全豪オープン」を含む3試合でフルセットにもつれ込んでいる。2017年のカナダでのマスターズ決勝に敗れたフェデラーは、「チャンスはあったが、彼がとにかく素晴らしかった。あらゆる面で、一つ上でなく二つ上のレベルにアップしている」と、当時20歳のズベレフを称えている。


子どもの頃から父親に師事するズベレフだが、トップレベルからも貪欲に知識を吸収。2017年にフアン カルロス・フェレロ(スペイン)、2018年にはイワン・レンドル(アメリカ)と、グランドスラム優勝も知る元世界1位の二人をコーチに招聘。かつてマレーと組んでいたフィジカルトレーナーもチームに加えている。


メンタルが重要なテニスで若くして成功している理由の一つは、家族の支えにあるようだ。コーチである父はもちろん、母親や愛犬も含めて家族でツアーを回っており、「世界のどこへ行くにも家族と一緒だから、ホームシックには縁がないんだ」と語る。


急成長の理由について、「よりしっかりと準備し、身体面を鍛え、判断力も上がり、より良い選手になった」と自己分析するズベレフ。対してレンドルは「自分を信じられるようになったこと」が大きいと指摘し、「ATPファイナルズ」優勝がさらに一歩進むきっかけになると見る。ATP公式サイトも同意見で、2019年展望でズベレフが「トップ5で終わる可能性」は96%と、95%のフェデラーを押さえて3番目。「トップ10で終わる可能性」が99%というのはBIG3以外では彼だけだ。


しかし予想に反し、シーズンが始まってみると早期敗退が相次ぐ。ただし、「全豪オープン」では開幕直前に足首を捻挫、3月のインディアンウェルズとマイアミでのマスターズでは発熱と、ベストなコンディションではなかった。本人も焦っておらず、4月下旬に「調子は戻ってきている。タフな試合で勝てれば、もっと良くなっていくだろう」と語る。


ビッグタイトルも手にした一方、グランドスラムは鬼門。2015年の「ウィンブルドン」から15大会連続で本戦に出場中だが、最高成績は2018年「全仏オープン」の準々決勝で、他はすべて4回戦以下で姿を消した。しかし、ズベレフは攻略のヒントをつかんでいる。「ATPファイナルズ」で決して状態が良くない中、考え過ぎずに楽しもうと割り切ったことが奏功したため、「グランドスラムも同じメンタリティで臨む必要がある」ととらえている。


そのヒントを手に、復調しつつあるズベレフが次に臨むのは、得意とするクレーコートの「全仏オープン」。最高成績を記録したその場所でベスト8の壁を破ることができれば、ATP公式サイトの2019年展望にあったように、「年末に世界2位」も見えてくるはずだ。


(テニスデイリー編集部)


※写真は2018「Nitto ATPファイナルズ」で優勝したズベレフ(Photo by Julian Finney/Getty Images)

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