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アンダーサーブは卑怯? 意表突く好手? キリオスのプレーが議論の種に

写真は常識に囚われないキリオス

何かと話題になるニック・キリオス(オーストラリア)が、3月のマイアミオープンでまた賛否両論の行動に出た。突如繰り出したテニス初心者のようなアンダーサーブでポイントを獲得。それも一つの戦術だと認める声もあるが、力無いサーブは対戦相手への敬意を欠くとの意見も出ている。

♦︎意表を突いて流れ掴む
問題のサーブが放たれたのは3月24日、マイアミオープンの男子シングルス3回戦でのこと。現在世界ランク48位のドゥサン・ラヨビッチ(セルビア)と対戦した同34位のキリオスは、第1セットでアンダーサーブを展開。意外な一手でエースを奪うとそのまま流れを掴み、6-3、6-1と優勢のまま4回戦進出を決めた。


件のサーブの様子は、ATP公式のサイト「Tennis TV」がインスタグラムなどでも配信している。ボールを地面に数回突くルーティーンの動作に入ったキリオスは、通常のサーブのように身体を伸ばしきることなく、低い姿勢から不意にアンダーサーブを開始。ラヨビッチはこれに反応できず、ネットを越えたボールがそのまま相手コートに落ちると、キリオスは得意顔を浮かべた。キリオスがアンダーサーブを繰り出したのはこれが初めてではなく、2月のメキシコ・オープンではラファエル・ナダル(スペイン)との対戦でも披露している。


♦︎賛否両論
今回のサーブを海外メディアはどのように捉えているのだろうか? ロイターは「卑怯な」サーブだと批評する一方で、テニスの精神に反する可能性はあるものの、完全にルールの範囲内で実行された行動だとも認めている。ナダルへのアンダーサーブは非常に効果的だったことからも、相応の時間をかけてこの戦術の訓練に望んだことは明らかだと述べ、準備にきちんと時間をかけた戦術だと評価している。


アンディ・マレー(イギリス)の母であり元コーチでもあるジュディ・マレーは、戦術に興奮しているという。ロイターの伝えるところによると、テニスの本質とは相手にプレッシャーを与えて混乱させることであり、ほかのプレーヤーが追随していないのが不思議なくらいだ、と彼女は述べている。プロ選手のキルステン・フリプケンス(ベルギー)も彼女と同様の立場だ。しかし、ロジャー・フェデラー(スイス)は、挑戦自体に問題はないが、もし失敗すれば滑稽に見える、と問題点を指摘している。


対戦相手の心証は良くないようだ。2月にこの戦術を仕掛けられたナダルは不快さを露わに。試合後にキリオスに接近したナダルは握手こそしたものの、ハグの姿勢に入ろうとしたキリオスを避けるようにしてコート外へ退出。悪童キリオスのアンダーアーム・サーブにナダルが激怒、とSun紙は報じている。試合後にナダルは「キリオスは有能な選手だが、今のポジションに留まっているのには相応の理由がある」「周囲と自身への敬意を欠く」などと述べ、不満を噴出させた。


♦︎アンダーサーブは過去にも
キリオス以前にも戦略的なアンダーサーブに挑んだ選手は存在するが、今回と同様、観客の反応は必ずしも芳しいものではなかった。グランドスラム5冠のマルチナ・ヒンギス(スイス)は、1999年のフレンチオープンでシュテフィ・グラフ(ドイツ)にアンダーサーブを仕掛けたものの、結局のところ試合に敗れた上に観客から辛辣な批判を浴びた。ルールとスポーツの精神とは別問題だ、とロイターは指摘する。


ただし、革命的との見方もある。Guardian紙は、常識に囚われない革新者だとキリオスを賞賛している。普通の選手には見えていないポイントが視界に入っており、どのような結果を招くかに尻込みしていない彼だからこそ、このような大胆な一手に出ることができるという。古くは1920年代に活躍した名選手であり、テニス界の反逆児とも言われたスザンヌ・ランラン(フランス)も同様の精神を持っていた、と同紙は歴史を振り返る。観客を怒らせることを気にも留めなかったランランは、フランス国民からテニスの女神として今も慕われている。


何かと世間を騒がせるキリオスだが、後世のテニス評論家はまた違った視点で彼を評価するのだろうか。


(テニスデイリー編集部)


※写真は常識に囚われないキリオス(jctabb / Shutterstock.com)

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