コラム

今年から「プロ」が14,000人から1,500人に 若手にチャンスを与えるITFの大改革

写真はテニスボールのイメージ

全世界で1万人を超えるプロのテニス選手たちのなかで、生計を維持できている選手は実はほんの一部。こんな現状を変えようと、今年から制度改革が行われる。

♦︎8割以上は生活できず
西オーストラリア大学経済学助教授のミカエル・ジェッター氏は、Conversation誌に寄せた記事のなかで、テニス界でプロとして生き抜くことの厳しさを指摘する。生活に十分な収入を得ることのできる選手は少数であり、テニス選手とはわずかな望みに賭けるギャンブラーにも似ていると述べている。では、大金を手にできる可能性はどれほどだろうか? 「1997年時点、世界ランキング100位、18歳男子」という条件を仮定した場合、この選手が生涯で1000万ドル(約11億円)以上稼ぐことのできる確率は、わずか0.001%に満たないという。

そればかりか、生活の維持すら難しい選手が大半だ。選手全体の生涯賞金額は平均で30万ドル(約3300万円)ほどだが、これは一部のスター選手が平均値を押し上げた結果だ。実際には8割ほどの選手がゼロに近い賞金額に甘んじている。

希望を胸にプロ選手を目指す若者は数多いが、大部分はキャリアの途中で挫折し経済的に破綻することになる、とロイターも厳しい現実に触れている。2017年の時点でいわゆる「プロ選手」は1万4000名ほど存在するが、そのうちコーチング費用をテニスの収入で賄えている選手は男女合わせて600名を切るのが現実だ。

♦︎ITFの制度変更で改善図る
この現状を打破しようと、国際テニス連盟(ITF)は今年から改革に踏み切った。増えすぎたプロ選手の数を絞るほか、新ポイント制度の導入で有能な若手が迅速にプロ入りできるよう支援する。

ベースとなるのは、ITFが2017年に予告した制度変更計画だ。同計画ではプロ選手を男女各750名にまで絞り込むことが発表された。これが実行に移され、今年のATP・WTAの各ランキングには、各トップ750名だけが掲載される。頭数を減らすことで選手一人当たりの賞金額の向上を狙う、思い切った構造改革となる。

さらに、大会の規格を整理するほか、「ITFワールドテニス・ランキングポイント(以下ITFポイント)」を新設して若手のプロ入りへの道筋をつける。男子の場合、これまでは上位から、ATPツアー、ATPチャレンジャーツアー、ITFフューチャーズ、ITFジュニアサーキットという大会の序列があった。このうちITFフューチャーズ大会を昨年で終了し、2019年からは「ITFワールドテニスツアー」に移行する。賞金総額1万5000ドル(約170万円)規模と2万5000ドル(約280万円)規模の大会が用意され、ここでは従来のATPランキングポイントに代わって「ITFワールドテニス・ランキングポイント」を付与。新設されるこのポイントを元にITFワールドテニスランキングが決定し、順位に応じて上位大会への出場権が得られる仕組みだ。

女子は構造が多少異なり、新しい構造は上位から順にWTAツアー、ITFワールドテニスツアー(10万ドルまたは6万ドル規模、2万5000ドル規模、1万5000ドル規模の3ランク)、そしてITFジュニアサーキットとなる。

♦︎若手の才能発掘を迅速化
ITFプロサーキットの事務局長であるジャッキー・ネスビット氏は、新制度は現在のところうまく機能しているように見られるとコメント。選手のためにテニスという競技を改善しなければならないという意識が以前からあったという。新しく導入されたITFポイントは、いわばジュニア以上プロ未満の選手専用のポイント制度だ。前述のように、得られたポイントに応じて上位大会への出場権が用意される。若い選手がATP出場への階段をより迅速に駆け上がれるようになり、それに伴い費用負担も軽減するという算段。人数削減については既存のプロ選手には厳しいアプローチとなるが、環境改善のためには止むなしといったところだろうか。

(テニスデイリー編集部)

※写真はテニスボールのイメージ(Teo Wei Keong / Shutterstock.com)

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