コラム

全豪で大坂、ズベレフも......ラケットへの「八つ当たり」、ファンや選手はどう見る?

プレーに自信のある選手ほど、思い通りのゲーム展開とならなかったときの悔しさもひとしおだろう。今年の全豪オープンでも、選手がストレスをラケットにぶつけるシーンが何度か見られた。3回戦で第1セットを落とし、ラケットを投げ捨てた大坂なおみ(日本)もその一人だ。選手たちのこうした行為にはヤジが飛ぶことがある一方で、感情の爆発は良いことだと捉えるプロ選手もいる。

◆選手愛用のラケット、受難は今年も
全豪オープンの男子シングルス4回戦、アレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)は敗退寸前に追い込まれると、ラケットを8回にわたってコートに打ち付けた。ほかにも今年の全豪オープン期間中だけでも、ドミニク・ティーム(オーストリア)、ライアン・ハリソン(アメリカ)、ダニール・メドベージェフ(ロシア)、そして大坂がラケットにうっ憤をぶつけている。大坂はシェイ・スーウェイ(台湾)との女子シングルス3回戦で第1セットを落とすとラケットを地面に投げつけ、その後調子を取り戻して逆転勝ちに繋げた。

過去には、グランドスラムで三度優勝したスタン・ワウリンカ(スイス)が膝でラケットを半分に折った一件が有名。2012年の全豪ではマルコス・バグダティス(キプロス)がチェンジオーバー中にバッグに手を伸ばすと、予備のラケットを取り出し計4本を次々と破壊。今も昔も愛用のラケットがプレーヤーの怒りを受け止めている。

◆ペナルティ
思わず感情を抑えきれずにラケットを破壊してしまった場合、重いペナルティが課されることも。古くは1960年にチャック・マッキンリー(アメリカ)がラケットを放り投げたとして、3ヶ月の出場停止処分を受けている。

現在のグランドスラムには、約80ページに及ぶルールブックが存在する。ラケットの破壊行為は、このうち「第3条:現地での違反行為」に定める「O. ラケットまたは用具の破壊」として禁止されている。昨年の全米オープンでは決勝で大坂に敗れたセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)が審判への暴言とラケットの破壊行為に及び、ポイントペナルティを受けている。また、昨年のATP500ワシントンD.C.での1回戦では、癇癪を起こしたブノワ・ペール(フランス)が複数のラケットの破壊と非紳士的な発言で罰金処分に。没収された金額は1万6500ドル(約180万円)となり、同大会で彼が稼いだ賞金額の2倍を上回った。

◆ポジティブな視線
選手の違反行為はときにファンたちを失望させているが、テニスという競技には付き物だとポジティブに捉える向きもある。1988年の全仏オープンで準優勝したアンリ・ルコント(フランス)は、ラケットの破壊に価値を見出す人物の一人だ。幼い観客には教育上良くない影響があるとは認めるものの、感情を発散させることは非常に重要だと、AP通信に語っている。また、対戦相手がラケットを破壊した際は、相手が動揺しており自分が優位にあることを確認できるのだという。

昨年のカタール・エクソンモービル・オープンでは、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)がラケットを3度にわたりコートに激しく叩き付けた。動画サイトに寄せられたファンの反応はさまざまだ。「ATPで最も短気な男」「フェデラーは格式、ラファはパワー、ジョコビッチは暴力」という否定的な意見から、「(より酷い)キリオスを知らないのか」「ジョコビッチは心を込めてプレーし、競争心を持っているからだ」という擁護派まで、さまざまな意見が飛び交っている。

今年の全豪オープンでは現在世界ランク8位のドミニク・ティーム(オーストリア)がラケットをコートに打ち付け、観客からヤジが飛んだ。ティームは第3セットで棄権し、グランドスラム初出場のアレクセイ・ポプリン(オーストラリア)に勝ちを譲った。折れ曲がったティームのラケットが観客席にいたファンの少年に贈られると、少年には満面の笑みが。選手のストレスが思わぬ贈り物となるケースもあるようだ。

(テニスデイリー編集部)

※写真は今年の全豪オープンでラケットにうっ憤をぶつけたひとりのアレクサンダー・ズベレフ(Rena Schild / Shutterstock.com)

友だち追加

人気記事ランキング

PAGE TOP
menu