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華やかなイメージのテニス選手。その裏にある厳しい経済事情

心身ともにギリギリまで追い込まれることもあるテニスのシングルスは、数多くあるスポーツの中でも孤独な戦いの一つ。しかし、そんな状態はコートの中だけとは限らない。世界的に人気の高いスポーツだが、その裏にはシビアな現実が横たわっている。

■フェデラーでも年間獲得賞金は「92位」
数々の世界記録を保持するロジャー・フェデラー(スイス)を例に挙げて説明してみよう。史上最多のグランドスラム20回優勝を誇る彼は、もちろん歴代獲得賞金ランキングでもトップ。20年におよぶキャリアで1億1,697万ドル(約130億円/2018年7月30日時点)を稼ぎ出し、ここ1年の収入7,720万ドル/約86億円は経済誌フォーブスの発表した「世界のスポーツ選手長者番付」で7位、「世界で最も稼ぐセレブリティ100人」では23位に入った。

しかし、賞金で得たのは1,120万ドル(約12億円)と15%にも満たず、残る85%はスポンサー料などだ。「世界のスポーツ選手長者番付」で7位のフェデラーが、賞金別で見ると100人中で下から9番目(92位)になることが、内訳のアンバランスさを示している。これはフェデラーに限った話ではなく、総合ランキングで同じくトップ100入りしていたラファエル・ナダル(20位)、錦織圭(35位)、ノバク・ジョコビッチ(86位)も、賞金別では91位、97位、98位と、4人そろってワースト10だ。
しかも、これは実績がトップクラスで人気もある(=多くのスポンサー収入が見込める)一握りの選手の話。そうでない選手には、さらに辛い現実が......。

■"世界最速男"が日々の支払いに悩む
2012年に時速163.4マイル(約263km)という世界最速サーブを記録し、シングルスでの自己最高ランキングが53位のサム・グロス(オーストラリア)をご存知の方もいるのではないだろうか。2018年1月、30歳にして現役引退を表明した彼は、自身の経済事情について以下のように語っている。

「(テニス選手は)自営業だよ。経費がとにかくかさむんだ。僕は年に40週くらい遠征していたんだけど、2週間の休暇がどのくらいかかるかを想像して、その金額を20倍してみてほしい。しかもそれは僕の分だけで、実際にはコーチの帯同費や給料も必要だし、婚約者が一緒なら彼女の分もかかるんだ。いい成績を収めて賞金を得られるならお金の心配はいらない。そうでなければ、"この試合に勝てなかったらコーチへの週末の支払いをどうする?"と悩む羽目になるんだ」

グロスの場合、コーチの週給はおよそ3,100ドル(約34万円)+ボーナスで、一年あたりの経費はトータルで25万~32万ドル(約2,775万~3,552万円)かかったとのこと。12年にわたるプロ生活で彼が得たタイトルはダブルスの2つのみで、賞金総額は200万ドル(約2億円)に満たなかった。少なくとも単純計算で100万ドル(約1億円)の赤字である。

さらに4大大会すべてで男女シングルスの賞金金額が統一されたのはここ10年ほどの話であることを考えると、女子は男子よりも厳しい。出産・育児で長期離脱したセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)が外れたこともあり、長者番付には女子選手が一人も入っていない。

近年、有名サッカー選手の移籍金が1億ユーロ(約129億円)を超えることがざらにあり、さらにスーパーボウル(NFLの優勝決定戦)が5億ドル(約555億円)の経済効果をもたらしている。テニス界でも、8月27日に本戦がスタートする「全米オープン」の賞金総額が史上最高の5,300万ドル(約59億円)と規模は拡大しているが、その金額はシングルス優勝者で前年の10万ドル(約1110万円)増と、他のスポーツに比べれば微々たるものだ。今後テニスがさらに拡大し、選手たちに還元されるようになるための課題は少なくない。

(テニスデイリー編集部)

※写真は左からフェデラー(Photo by Matthew Stockman/Getty Images)、ナダル(Photo by Michael Steele/Getty Images)

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