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コラム

球速が7キロも!? テニス選手の「うなり声」、科学でわかった効果とは

写真はうなり声をあげるシャラポワ(「クレムリン・カップ」のときのもの)

テニスの観戦中につい気になってしまうのが、一流プレイヤーらがインパクトの瞬間に上げるうなり声だ。気迫に満ちた一声は白熱するゲームを盛り上げる一方、シャラポワやセレスなど特に迫力ある声を発する選手に関しては、やや耳障りに感じている対戦相手や観客もいるようだ。プレーの妨げとなることから女子テニス協会内には規制論も一時あったが、現状ではゲームの一部として黙認されている。うなり声は選手自身と対戦相手にどのような影響を与えるのだろうか?

◆相手はパフォーマンス低下 科学が証明
 BBCでは直近の例として、ウォズニアッキがニクレスクのうなり声について審判に直訴したと伝えている。すでにウォズニアッキ側のコートにボールが入っている状態で発声している点を妨害行為と捉えたようだ。こうした行為はルールで禁止されているとウォズニアッキは主張している。

 実際にうなり声で対戦相手が不利に陥ることは起こり得るのだろうか? オーストラリア放送協会は、科学的見地から、こうした事態は起こり得ると判断している。プロ選手らはラケットへの打音を聞いてアンティシペーション(予測)を行い、返球のために向かうべきポジションを判断している。ある実験では、被験者らにインパクトの音を聞かせて音源の位置を訊ねたところ、余計な騒音のある環境において30ミリ秒の反応の遅れが観測された。このことから、うなり声で打音をかき消された相手プレイヤーは不利になると言えそうだ。

 こうしたうなり声をめぐっては、セレスとシャラポワを指導したボロテリーがわざとうなり声で妨害するよう教育していると批判されるなど、たびたび物議を醸している(スポーツ・ネット誌、2017年8月5日)。

◆実際にはベストなプレーの「副産物」
 しかし、フェアプレーを重視するテニス界において、多くのプレイヤーらが妨害を意図しているとは考えにくい。スポーツ・ネット誌は、うなり声は選手らがバランスを保とうとした際に起きてしまうもので、「必要なものというよりは副産物」だと解説している。英ボーンマス大学の教授によると、選手らはショットの直前に空気を吸い込み、肺を膨張させることで体幹を安定させる。返球後は呼気を排出することになるが、体の安定を維持すべく喉と声帯を絞って空気を排出するため、大きなうなり声が起きる----と同教授は説明している。最高のプレーを生むための副産物だという捉え方が興味深い。

 英紙メトロによると、批判の渦中のセレナ・ウイリアムズも、プレー中はゾーン状態にあるため、意図して叫び声を放っているわけではないと述べている。

 オーストラリア放送協会もうなり声は自然な現象だとの立場だ。記事ではうなり声を上げたときの球速が4.9%(時速にして7キロ)向上するなど、ポジティブな効果を強調する。カンフーをしているというある読者は記事に対し、テニスでは程度も考慮する必要があるかもしれないとしつつ、叫び声はフィジカルだけでなくメンタルにもプラスの効果を与えるとの実感をコメントしている。

◆協会は対処の予定なし 試合の一部との見方が主流
 世界団体である女子テニス協会は、一連のうなり声問題をどう捉えているのだろうか? BBCによると過去には協会は、過度の騒音に対して騒音計を設置するなど客観的尺度で判断する必要があるとの認識を示していた。また、呼吸法のトレーニングを普及させるなどのアプローチも検討されていた模様だ。行き過ぎたうなり声を問題視していた様子が伺える。

 しかし、スポーツ・ネット誌が伝えるところでは、協会の現トップを務めるスティーブ・サイモン氏には対策を進める意思はないようだ。記事では前述の通り体幹の安定のためにうなり声が発生するというメカニズムを示し、自然なプレーの一部であるとのスタンスを取っている。

 オーストラリア放送協会の記事も、どこまでがフェアなうなり声かは科学ではまだ定義できないとしつつ、ある程度は許容すべきとの立場を示している。選手たちの熱気のこもる掛け声は、ゲームの醍醐味の一部として寛容に受け止められているようだ。

(テニスデイリー編集部)


※写真はうなり声をあげるシャラポワ(「クレムリン・カップ」のときのもの)
(AP Photo/Alexander Zemlianichenko)

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