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メルボルンに新風吹くか。Next Genと大坂なおみへの期待

2018年「ホップマンカップ」でのアレクサンダー・ズベレフ

 全豪オープンの開幕が近づいた。全体的な展望についてはすでに書いたので、ここでは少し片寄った「見どころ」を書いてみたい。

 今季はなんといっても、Next Gen(21歳までの"次世代"男子)だ。2018年は必ず彼らのシーズンになるだろう。20歳のアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)は17年に自己最高の世界ランキング3位をマークし、すでにトップの仲間入りを果たしたが、今季は彼に限らず数人の選手がランキング上位に食い込み、四大大会で上位に進出するだろう。全豪オープンはその兆しがくっきりと立ち上がり、ファンの確信が深まる大会になるのではないか。

 1月8日付けのATPランキングでNext GenはA・ズベレフが4位と同年代で一人抜けているが、32位のアンドレイ・ルブレフ(ロシア、20歳)、48位のカレン・ハチャノフ(ロシア、21歳)、50位のデニス・シャポバロフ(カナダ、18歳)、79位のフランシス・ティアフォー(アメリカ、19歳)、80位のステファノス・チチパス(ギリシャ、19歳)、それに17年のNext Gen ATPファイナルズを制した韓国の21歳、チョン・ヒョン(62位)も忘れてはならない。名前を挙げていくときりがないのでこれくらいにしておくが、人材は極めて豊富だ。

 彼らにはプレースタイルの上でいくつか共通項がある。一つは攻撃性だ。躍進を目指す選手が必ず持ち合わせていなければならないのが積極性、攻撃性。また、若さの勢いは当然、多くの場合、恐れを知らぬハードヒットの形で示されるが、彼らはそうした一般論を超えた攻めの積極性、ショットの強さを持っている。

 彼らのジュニア期からのターゲットはノバク・ジョコビッチ(セルビア)、アンディ・マレー(イギリス)といった高度なディフェンス力を持つ選手であり、その壁を打ち抜くために超攻撃的なスタイルを磨いたと見ることができる。

 ハードヒットそのものが特徴となっているのがルブレフ、ハチャノフのロシア勢。チョン・ヒョンは堅実さという土台の上に攻撃的なオプションを加え、ひと皮むけた。

 一方、シャポバロフは単に強打するのではなく、正確にプレースメントしながら、徐々に前に入り、ラリーの5球目、7球目で確実に仕留める綿密さがある。ネットプレーでのフィニッシュも彼の形だ。昨年の楽天ジャパンオープンはビザの問題で出場を逃したが、練習コートでコーチとともに丁寧にネットプレーを磨く姿が見られた。

 そして、攻めの厳しさと堅実性、重要な場面でギアを上げるメンタルの強さとすべての要素を備えているのが、A・ズベレフだ。
 驚かされるのは、本来はディフェンシブにプレーすべきベースライン後方から、あるいは様子を見ながらラリーを続けるのが常識であるニュートラルな状況から、積極的なプレーを見せることだ。

 錦織圭が以前、ジョコビッチのディフェンシブなショットを指して、「守っているのに攻められているように感じる」と評したことがあったが、ズベレフのプレーにもそれに通じるものがある。いや、より積極的に打ってくるだけに、相手の選手はジョコビッチ以上に圧力を感じるのではないか。これはどの選手にも脅威となるはずだ。

 シーズンオフに錦織に取材した際、ズベレフについて「別格。すべてのショットができる、弱点のない選手。1位になってもまったく驚かない」と手放しで褒めた。また錦織はNext Gen全体に関しても「上だけを目指していたのが、下から強い奴らがいっぱい出てきた」と強く警戒していることを明かした。杉田祐一にもこの世代を強く意識する発言があった。

 昨年の全米8強のルブレフを除き、四大大会ではまだ目立った成績を残していないが、この全豪がブレークの機会となるかもしれない。特にA・ズベレフ、そしてシャポバロフは今、最も注目すべき選手と言える。

 女子にはこうしたグループこそ存在しないが、ブレークを予感させる選手が数人いる。大坂なおみも間違いなくその一人だ。
 現状での課題は、上位に見事に勝ったと思えば下位選手相手に大苦戦したりと、パフォーマンスが安定しないことだろう。オフに行ったインタビューではこんな話をしている。

「大きなコートで最高の選手たち、トップ10プレーヤーとプレーするのは好きで、普段よりいいプレーができます。でも、誰も見ていないような、例えば13番コートとかでプレーするのは楽しくないし(笑)。だから、常に大きなステージでプレーできるように、地道な努力をしなければといけないと思っています。そして、集中することですね。みんな素晴らしい選手なのですが、ランキングが低い選手と対戦すると、強い選手のときほど集中しなくなる傾向があるので、まさにそこが改善すべき点です」

 大坂は、17年には周囲の期待、自分自身への大きな期待をうまく扱えず、重圧で自分のプレーを失う場面もあった。インタビューで大坂は「私は完璧主義タイプで、どの試合にも勝ちたいと思っているのですが、自分の中から出てくるプレッシャーやフラストレーションもあって、うまくいかないこともあります。その都度、イライラとの戦い方、その抑え方を学んでいます」と話している。

 元女王のクリス・エバートさんが18年にブレークが予想される選手に彼女の名前を挙げていることは前に紹介した。未成熟の選手には必ずつきまとうこの種の課題を乗り越えれば、今季は四大大会の頂点を狙う選手に飛躍するのではないか。

(秋山英宏)


※写真は2018年「ホップマンカップ」でのアレクサンダー・ズベレフ
(Photo by Paul Kane/Getty Images)

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