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年間製造は3億個!テニスボールの過去・現在・未来

写真は2021年「全仏オープン」でのテニスボール

テニスの試合に欠かせないテニスボール。年間3億個製造されるというテニスボールの過去・現在・そして未来を伊ニュースサイトUBI Tennisが解説している。

テニス競技が産声を上げたのは1870年代のこと。当時はグレーか赤に着色したゴム製のボールを使用していた。その後1880年代にゴムを布で覆うようになった。1925年に初めてテニスボールの規格が設定され、100インチ(254cm)の高さから落とされた時に53〜58インチ(135cm〜147cm)跳ね返ることが条件となった。この条件は、標高の高い地域で行われる試合用のボールや子供用のボールなどを除いて今も使用されている。現在のテニスボールでよく使用される蛍光黄色が使用されるようになったのは1972年になってから。それまでは白や黒のボールだったが、テレビが普及し、放映時の視認性を向上させるため鮮やかな色に変更された。ただ「ウィンブルドン」でだけは、1986年まで白いボールが使用されていた。


テニスボールには空気穴がないため、内部の空気圧を製造工程で高めておくことで弾性をもたせている。テニス黎明期にはボールはダンボールに梱包され、ボール内の空気圧を高めにして出荷されていた。だがそれでは保管中に徐々に空気圧が下がってきてしまうため、シーズン開始直後のほうが終盤よりボールの跳ね返りが強く、品質が一定ではなかった。現在使用されているような加圧された金属製の缶にボールを梱包するようになったのは1926年以降だ。約2.0気圧に加圧された缶にボールを充填することで、ボール内の空気圧(約1.8気圧)が変化しないようになっている。


テニスボールはゴム製のボールにフェルトが巻きついた構造になっているが、フェルトの目的は3つある。1つ目はラケットに当たった後のボールの速度を落とすこと、2つ目はラケットで打った際の不規則な跳ね返りを防ぎボールコントロールを向上させること、そして3つ目はどんなサーフェスであっても丁度いい高さにボールがくるようボールの跳ね返りを抑えることだ。ボールに使用されている原料の中で最も高価なのがフェルトだ。


さて、全て同じに見えるテニスボールだが、実は、次のような異なる種類が存在する。


タイプ1:ファーストまたはレギュラーデューティ。主にクレーコートで使用


タイプ2:ミディアム。従来、男子ではエキストラデューティ、女子ではレギュラーデューティに分かれていた。主にハードコートで使用


タイプ3:スロー。主にグラスで使用


高標高タイプ


それぞれのタイプは重さや大きさ、跳ね返り、ボールの変形の範囲などがITF(国際テニス連盟)


により定められている。さらに、現在は7〜12歳の子供向けのテニスボールが新たに開発され使用されている。


プロ選手にとって重要となってくるのが、大会が定める公式ボールだ。つまり、選手らは各大会のサーフェスの違いに対応するだけではなく、ボールの違いにも対応しなければならない。中にはボールに合わせてラケットのストリングを調節する選手もいる。また、気候によってもボールの特質は変化する。例えば、熱はゴムの弾性を高めるため跳ね返りが強くなり、湿気はボールを重くすることがよく知られている。晴れた日の「全仏オープン」でラファエル・ナダル(スペイン)がますます活躍する理由の1つがこれだ。


主要大会を見てみると、「全豪オープン」、「ATP1000 マイアミ」、「ATP1000 モンテカルロ」、「ATP1000 ローマ」、「ATP1000 バルセロナ」、「ATP1000 マドリード」、「ATP1000 上海」、「Nitto ATP ファイナルズ」はダンロップ社製。「全仏オープン」、「全米オープン」はウィルソン社製。「ウィンブルドン」はスラセンジャー社製。「ATP1000 インディアンウェルズ」、「ATP1000 シンシナティ」、「ATP1000 パリ」、「ATP1000 トロント/モントリオール」ではヘッド社のPennが使われている。さらに、ATPの公式ボールはダンロップ社製であり、テニス界でもっとも使用されているのはダンロップのボールだ。


ボール製造会社は常に新技術を開発しボールの性能を高めている。例えば、スラセンジャーは独自の撥水ボールで特許を取得しているし、ウィルソンは圧力を調整し「全米オープン」専用のボールを製造している。


最後に、テニスボールの未来に関わる動きを見てみよう。現在、毎年約3億個のテニスボールが製造されていると推測されるが、そのうち再利用されるのは3〜7%に留まり、残りはゴミとして廃棄されている。この状況を改善するため、2015年よりRebounce社、Advanced Polymer Technology社、Ace Surfaces社がタッグを組み、古いボールをリサイクルしてテニスコートの材料として生まれ変わらせる事業が始まった。まずは、1回使用されたボールは再度圧力を調整し、寿命を延ばす。その上でフェルトが完全に摩耗したボールは切断され、ゴム部分をリサイクルし、テニスコートの舗装に使用される。1コートあたり最大1万個のボールがリサイクル素材として使用されるそうだ。


他にも、2020年にオランダのスタートアップ企業Renewaballが使い古しのボールから新しいボールを再生する事業を開始した。これまで、ボールのゴム部分とフェルト部分は分離することができず、リサイクル工程の大きな妨げになっていた。Renewaballはこれを可能にし、100%ではないが今後ボールのリサイクル率を高めていく予定だという。


世界中で使用されるテニスボールの85%が天然ゴムの主要生産地であるタイ、中国、フィリピンで製造されている。製造地が大会開催地から遠く離れていることも、CO2排出量の観点から問題視されている。また、ボールをラケットで打つ瞬間にポリエステル・ナイロン製のフェルトから多数のマイクロプラスチックが空中に放出されることも分かっており、今後どのようにテニスボールによる環境負荷を低減していくかが課題となる。


(テニスデイリー編集部)


※写真は2021年「全仏オープン」でのテニスボール
(Photo by Tim Clayton/Corbis via Getty Images)

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