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オフコート

チャンピオンを生んだスポーツ心理学者が語る、心の健康の大切さ

写真は「全仏オープン」でのシフィオンテク

コロナ禍のせいで通常の5月ではなく9月に開幕となった2020年の「全仏オープン」で、19歳にしてポーランド人初のグランドスラムチャンピオンとなり一躍注目を集めたイガ・シフィオンテク(ポーランド)。そして彼女は、その優勝にチームの一員であるスポーツ心理学者の多大な貢献があったことを隠さなかった。シンデレラガール誕生に大きく寄与したこの女性が、テニス選手たちのプレッシャーとの戦いや、テニスと他のスポーツとの違いなどについて語った。伊ニュースサイトUBI Tennisが報じた。

シフィオンテクの成功により、ダリア・アブラモビッツはまだ30代前半だが、女子テニス界では最もよく知られたスポーツ心理学者となった。彼女はセーリングの元選手で、大学で犯罪心理学を、大学院でスポーツ心理学を学び、水泳や自転車のポーランドのナショナルチームや、テニス選手たちのためにスポーツ心理学者として働いてきた。


ポーランド人選手として初めてグランドスラムを制した昨年の「全仏オープン」で、シフィオンテクは1セットも落とさない圧倒的な強さを見せた。セットを落とさないでの優勝は、2007年にジュスティーヌ・エナン(ベルギー)が達成して以来のことだった。


「彼女(アブラモビッツ)は私をより賢くしてくれた。スポーツのこと、心理学のことを知るようになって、自分の感情を理解し、それを口に出して言えるようになった」とシフィオンテクは語る。シフィオンテクがディフェンディングチャンピオンとして臨む2021年「全仏オープン」を前に、アブラモビッツが記者の質問に答えた。


Q:スポーツ心理学者から見て、テニスと他のスポーツの違いは?


どのスポーツも、みんな違うユニークなものです。私の見方は、テニスは間(ま)に基づいています。ラリーの間、ポイントの間、ゲームの間、セットの間。もっと大きい観点では、大会と大会の間にも時間があります。これはメンタルの準備に関係してきます。メンタルトレーニングのやり方、集中を保ち、ストレスを管理し、感情をコントロールすることに。


またテニスではとても高いレベルのパフォーマンスが要求されます。1年のうち8・9ヶ月は世界中を回って、それを15年とか、時には20年も続けます。本当に大変なことです。そんな中でどうやって自分らしくあり続け、社会的なつながりも保ちながら、そんなに長いことそれを楽しみ続けることができるかが重要なのです。


Q:昨年覇者として、イガには今年の「全仏オープン」までの期間、大きなプレッシャーがあると思いますが、それにより昨年と違う準備をしますか?


昨年より大きな期待がかかる、という話はしています。周りの人々からだけでなく、本人の期待も。それは昨年と違う点ですね。でもこれまでと全く同じこともしています。一つ一つのやるべきことに集中してやろうとしています。リカバリーがとても大切なので、そのための用意をしています。


(優勝すると)何もかもが変わる、というのは一種の神話です。多くのことはそれほど変わりません。もしもアスリートが、パフォーマンスの質とその時にやるべきことに集中できれば、自分がディフェンディングチャンピオンであるということや、それに付随してくる期待は遠く消えていくと思います。


Q:「WTA1000 マイアミ」で早期敗退した後、イガは自分の経験を正直にSNSで綴りました。プロ選手の中には、弱みを見せたくないからと、あまりオープンに語りたがらない選手たちもいます。よりオープンになることが、プレーの向上につながると思いますか?他の選手たちにも、もっとオープンになるようアドバイスしたいですか?


今は昔より多くの選手たちがSNSで自分の経験を率直に語っています。これはスポーツ界で今起こっている変化です。多くのアスリートたちがウェブサイトやブログで発信しており、それはとても価値あることだと思います。


それにより人々に、アスリートの考え方、スポーツへのアプローチの仕方、ある経験が彼らにどんな意味を持っていたかなどを知らせることができます。どのアスリートも、自分のやり方でそれぞれのスポーツに向き合っています。そのやり方を、少しずつ皆に知ってもらえます。


また書くことによりアスリート本人も、自分のやり方を理解し、問題を解決する助けになることもあります。それは偏見をなくす助けにもなります。トップ選手たちの世界は、夢のように良いことばかりではありません。それは厳しく、時には孤独で、誰にも助けてもらえないと感じるような、人間的な世界なんです。


Q:以前インタビューで、スポーツ心理学は今も少し誤解を受けていると話していましたね。それはどういう意味で、それを変えるために何ができると思いますか?


スポーツ心理学というか、心理学そのものに対して誤解があると思います。心理学者は、スポーツ界だけでなくすべての人々の助けになることができます。テニスが心理学に対する誤解を解くというのは難しいでしょうが、すべてのアスリートにとって、そしてすべての人にとって、メンタルの準備、メンタルの健康に気を付けることは、体の健康と同じぐらい大切なのです。そう発信することは、とても価値のあることです。


Q:トップ100位下の選手たちは、心理学者を雇うことは経済的に無理かもしれません。彼らのために何ができるでしょうか?


私がいつも言っていることですが、コーチはアスリートの最も近くにいる人です。コーチは誰よりもよくアスリートのことを知っており、アスリートを進歩させるための様々な方法を知っています。テニスの技術や肉体的な強さだけではなく、メンタルの面でもです。


実際に心理学者を雇うことはできないとしても、ネット上で助けを得ることもできます。コロナ禍が広がってからは特に一般的なことになりました。今ではネット上で大概のことはできますよね。


コーチとアスリートの関係を深めることがとても大事です。また社会のサポートシステムも、非常に重要です。


Q:ポーランドにはフベルト・フルカチュという素晴らしい男子選手もいますね。男子選手と女子選手で、メンタルのアプローチは違いますか?


男女の違いについては本が書けますね。感情面、ストレスや集中力のコントロールの仕方など。でも一番重要な違いは、練習の仕方、リカバリーのやり方、社会的なサポートシステムの使い方です。


とはいえ、人は皆違いますから、それぞれがどう振る舞うかのカギとなるのはジェンダーではありません。男性は女性に比べて、感情や気分を言葉で伝えようとはしません。例えばうつ病の症例は女性の方がよく聞きますが、それは男性が感情を出さないことが多いからです。それはスポーツにも関わってきます。


Q:テニスとメンタルの健康という面についても、多くの仕事をしてこられましたね。身体的な活動はメンタルの健康を促進するということが実証され、テニス界もそれに注目してきています。選手たちのためにもっとやれることがありますか?


スポーツと心理学はとても良い方向に進歩してきており、今では試合で最も効果的に実力を発揮するためにメンタルトレーニングをし、メンタルの準備をすることは、机上の空論ではなくなりました。でも我々は、メンタルヘルス、心の健康ということを、特にこのパンデミックの時代に話題にしています。これはテニスでも他のどんな団体でも、今もっと焦点を当てるべきことです。


そのためにメンタルトレーニングをどう使うか、テクノロジーをどう役立てられるかという面で、もっと人々に知らせ、気づきを促す必要があると思います。私にとって最も重要なことは、誤解をなくし、心の健康をケアすることの大切さを広めることです。


(テニスデイリー編集部)


※写真は「全仏オープン」でのシフィオンテク
(Photo by Julian Finney/Getty Images)

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