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オフコート

テニス選手が一年にかけるラケットのストリング代って?

2019年「全米オープン」で練習するフェデラー

スキーや自転車競技には、道具を整備し、舞台裏で選手を支える技術者たちがいる。テニスでは、それがストリンガーだ。ストリンガーたちは、選手のラケットのストリングの張りを微調整することで彼らのベストなパフォーマンスを引き出す。トップ選手はストリング代にどのくらい支払っているのだろうか。伊ニュースサイトUBI Tennisが検証している。

一般的に、テニスラケットにストリングを張るのにはどれくらい費用がかかるのだろうか。アメリカでtennisgems.comが行った調査によると、平均総コストは20〜40ドル(約2200~4400円)、そのうちストリング代は10〜20ドル(約1100~2200円)、人件費が10〜20ドルだった。ヨーロッパでracketstringers.comが行った同様の調査によると、ストリング代に平均15ユーロ(約1950円)、人件費に平均12.50ユーロ(約1625円)、つまり一回のストリング張りにトータルで27.50ユーロ(約3575円)支払っていた。


ストリングの金額は、ブランドや素材など様々な要素によって決まる。前述したアメリカやヨーロッパの平均金額は、信頼できるストリングを求める一般的なテニスプレーヤーとしては公正な金額だと言える。オンラインで注文すればより安くなることもあるだろう。考え方としては、スポーツショップなどに行くと固定費などのコストが生じることから一般的に金額は高くなり、独立したストリンガーやアマチュアの人に頼めばそのようなコストがない分安くなる。


一方、プロテニス選手ではどうだろうか。男子プロテニス選手のほとんどは、大会側が用意した現地のストリンガーを使用し、ストリングを張り替えている。これらのストリンガーは、ごく一般的な価格でサービスを提供しており、一本のラケットあたり最大20ドル/20ユーロ(約2200円/約2600円)程度が相場だ。多くのプロにとってはこれで十分なのだが、ごく一部の選手は抜かりなく準備することを好み、毎週同じストリングを求める。


1998年にネイト・ファーガソンさんが設立したPriority Oneはそのようなニーズを満たすストリングサービス専門会社だ。ファーガソンさんは8年間ピート・サンプラス(アメリカ)のストリンガーを努めた後に独立、同社を興した。現在Priority Oneは、2004年からの顧客であるロジャー・フェデラー(スイス)をはじめ、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)、スタン・ワウリンカ(スイス)、アンディ・マレー(イギリス)、ミロシュ・ラオニッチ(カナダ)、そしてジョン・イズナー(アメリカ)などのごく一部のATPのエリートプレーヤーに対し、グランドスラムやATPツアーの主要大会に同行し、ラケットの微調整を行うサービスを提供している。


2019年の「ATP500 バーゼル」の大会中、スイスのTV局SRFがPriority Oneのストリンガーの一人、ロン・ユーさんに取材をし、フェデラーのストリング代は一括で年間4万ドル(約440万円)であることが明らかになった。とてつもない金額だが、これでグランドスラム、マスターズ1000大会、そして「ATP500 ドバイ」「ATP500 ハレ」「ATP500 バーゼル」などフェデラーがよく出場するATP500の大会をカバーするという。フェデラーは、2019年に17大会に出場した(「レーバー・カップ」を除く)ので、一大会あたり2353ドル(約25万8800円)かかっている計算だ。大会賞金額から考えると、フェデラーは2019年に871万6975ドル(約9億5887万円)もの賞金を獲得しているため、したがってストリング代は賞金額の0.5%を占める。この年フェデラーは63試合でプレーしており(うち53試合で勝利)、一試合あたり9本のラケットを使うので、大会中の一本のラケットあたりの費用は簡単に計算できる。40000÷63÷9で約70.55ドル(約7760円)だ。フェデラーほどの選手ともなれば、70ドルのストリング代は安いと思えるのだろう。だが、4万ドルには何が含まれるのか、他のサービス代やボーナスが別に支払われるのかなどは明らかになっていない。


同じくPriority Oneを使っているジョーウィルフリード・ツォンガ(フランス)は2019年の獲得賞金の3.7%を、ラオニッチは同3.1%をストリング代に支払っている。しかし、この2人も年に100万ドル(約1億1000万円)以上の賞金を稼ぐトッププレーヤーだ。


テニスはトップダウン型のスポーツで、実力主義の世界だ。格安の画期的なロボットストリンガーでも開発されない限り、超高級ストリングサービスはこれからもトップクラスの選手たちを支え続けるだろう。


※為替レートは2021年4月3日時点


(テニスデイリー編集部)


※写真は2019年「全米オープン」で練習するフェデラー
(Photo by TPN/Getty Images)

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