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ウィンブルドン

ウィンブルドンの歴史に変化。男子シングルス決勝に130年で初の女性審判

写真は「ウィンブルドン」決勝でのチチャック氏

世界王者ノバク・ジョコビッチ(セルビア)とグランドスラム決勝初進出のマッテオ・ベレッティーニ(イタリア)が対戦した「ウィンブルドン」男子シングルス決勝が先週日曜日に行われた。この試合で主審を務めたマリヤ・チチャック氏に注目が集まっている。テニスの歴史に新たな1ページを刻んだチチャック氏のこれまでの歩みや彼女の仕事観を、英スポーツメディアSky Sportsなど複数メディアが報じている。

チチャック氏はこれまで15年連続で「ウィンブルドン」の審判を務めている他、「WTAファイナルズ」でも10年審判を行っている。そしてチチャック氏は今年の「ウィンブルドン」で、130年の歴史で初めて男子シングルス決勝の主審を務めた女性審判となった。


現在43歳のチチャック氏は、主審の最高レベルであるITFゴールドバッジを持ち、大舞台での経験を多く持つベテラン審判だ。2014年の「ウィンブルドン」女子シングルス決勝、2017年「ウィンブルドン」女子ダブルス決勝、そして2016年「リオデジャネイロオリンピック」女子シングルス決勝などで主審を務めている。ケビン・アンダーソン(南アフリカ)とジョン・イズナー(アメリカ)が対戦し「ウィンブルドン」史上2番目に長い試合となった2018年の準決勝で主審を務めたのもチチャック氏だった。


チチャック氏はクロアチア出身で、子供の頃から様々なスポーツに親しんできた。「空手、卓球、ハンドボール、水泳をやっていて、テニスもそうやって始めました。私が6歳の頃に、やらせてみてはと叔父が母に進言したんです。子供向けのレッスンから始めて、12歳から大会に出場しました」と昨年のWTAのインタビューで語っている。


その後、クロアチア国内で審判のニーズが増えたため、15歳の時に審判の資格を獲得し、線審や主審を務めるようになる。自身も選手として小さな大会に出場していたチチャック氏だが、ある時テニスをやめる決意をした。


「18歳の時にテニスをやめて大学に行くことにしました。やめると決めた理由は、ここではスポーツのキャリアと大学を両立させることは簡単ではないからです。例えばアメリカのような国とはシステムが違います。正直なところ、テニスをするより他のことに集中したかった面もあります。学校に通い、審判を楽しみたかったのです」とチチャック氏は続けた。


大学在学中は、審判をキャリアとして考えてはいなかったチチャック氏は、趣味として審判を続けながら、トライアスロンに挑戦するなど活動的に過ごしていた。では、チチャック氏が審判に専念すると決意するきっかけは何だったのだろうか。


「2・3年ほど、10歳以下、12歳以下の子供たちのテニスコーチをしていました。並行して、フューチャーズ大会の主審や、ツアー大会やATPチャレンジャー大会の線審もしました。ある時、自分が今後どうしたいのか決断する必要が出てきました。私はテニスと関わり続けられる道を選び、審判に専念することにしました。すべてのエネルギーを注ぎ、努力は報われました」


チチャック氏は2011年にゴールド バッジを獲得し、翌年にフルタイムの審判としてWTAの審判チームに加入する。「私にとって重要なのは、同じ価値観や考え方の人と働けるということです。テニスが世界の女子スポーツの中でも先進的であるのは偶然ではありません。私はとても恵まれていると感じています。私達は、私達なりに世界を少しでもより良い場所にしようとしているのです」


チチャック氏は後進育成にも力を入れていて、若い審判のインストラクターとしても活躍している。「試合の審判をすることは、全く異なる経験です。2万3000人の観客が見守るアーサー・アッシュ・スタジアムで、大きな試合を素晴らしい雰囲気の中で行うことは、ある種のアドレナリンです。学校で教えることは、異なるプレッシャーがあり、また違ったタイプのアドレナリンです。ですが、どちらの状況も知識と経験がなければ味わうことができません」


「すべてが変化するものであるように、私達も変わっていきます。最終的には、私達は若い審判員たちにすべてを残して去っていきます。ただ、今後はもっとランクの高い女性審判が増えることを望んでいます。それは起こるべきことだと思います。なぜなら、そうやって私達はここまで来たからです」


現在、トップレベルのテニス大会で審判を務めるチチャック氏は、年間平均30週は世界のどこかで審判席に座っている。


「移動することは私の仕事の大きな一部です。飛行機から飛行機へ乗り継ぎ、スーツケースの間で眠って。ですが、自分の好きなことなのでとても幸運だと感じます。そうやって世界中を旅していると、同じ場所に何度も行くことがあります。ですが、同じ場所でもその場所を特別なものにしている人々がいますし、時間をかけてそういう人々と知り合う機会もあります。街は変わり、会場も変わり、一緒に働く人でさえ変わっていきます。ですがそれらはすべて私の人生経験を豊かなものにしてくれます」


そんなチチャック氏のライフスタイルや人生観が、彼女の仕事観にも影響を与えている。


「仕事というと、朝早く起きて、嫌だなと思ったり行きたくないと思ったりするものかもしれません。でも私はそういう気持ちになったことはありません。3年くらい前だったか、これが私の仕事なんだと気がつきました。それまでずっと、審判は大好きな趣味で、仕事と思っていませんでした。朝起きて仕事に行くときも、気合を入れることはありません。何か他のことをやりたいとか、他の場所にいたいと考えたこともありません。自分の好きなことをできて、すごく幸運だと思っています」


これまで女性審判としてのキャリアを開拓してきたチチャック氏。今後も審判として第一線で活躍し、若手審判員のロールモデルとなっていくことだろう。


(テニスデイリー編集部)


※写真は「ウィンブルドン」決勝でのチチャック氏
(Photo by Clive Brunskill/Getty Images)

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