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ウィンブルドン

初出場でベスト16のコルダと、陰で支えた父ペトル・コルダ

写真は「ウィンブルドン」のコルダ

アメリカの新鋭セバスチャン・コルダが21歳の誕生日にウィンブルドンを去った。カレン・ハチャノフ(ロシア)との4回戦は3時間49分の大熱戦。最終セットは8-10で決着した。最終盤は両者ともサービスゲームがキープできず、このレベルでは珍しいブレーク合戦になった。コルダは混戦となった原因についてこう語る。

「よくわからない。一進一退の攻防が続いていた。サーブがキープできなかったけれど、両者ともリターンが本当によかったんだ。ボールについて言えば、少しずつ遅くなっていたように感じた。ふわふわしてきて、ラリーも少し長くなり、リターンもしやすかった」


ボールの交換はルール通り行われたはずだから、それくらい両者のリターンがうまくハマったのだろう。最終セット、コルダのファーストサーブ時のポイント獲得率は35%にとどまった。ハチャノフも50%と第4セットまでのサービスゲームの出来とはほど遠かったが、最後に意地を見せた。両者とも、サーブを軸に、グラウンドストロークの最初の数本で決着をつける速攻型。だが、全体的に速い攻めが機能したのはハチャノフのほうだった。0~4本の短いラリーでの獲得ポイントはハチャノフが120対94と上回り、最終セットには40対26と大差がついた。


コルダは疲労の影響を否定しなかった。慣れないグラスコートで、臀部に痛みが出ていたという。プロになってから芝コートでプレーするのは、ベスト8入りした前哨戦のハレ(ドイツ)が初めてだった。今大会、第15シードアレックス・デミノー(オーストラリア)との1回戦は3時間25分を要し、3回戦では第22シードのダニエル・エバンズ(イギリス)を4セットで倒した。そうして、大会での通算16セット目を8-10で失い、敗退した。


「大会全体と今日の結果にはすごく満足している。やれるだけのことはやった。テニスを志したときから、誕生日をウィンブルドンで迎えることが夢だった。ここで(※大会が中盤から終盤の時期に訪れる)誕生日を迎えられるなら、とてもいい1週間を過ごせたことになるからね。初めてここで誕生日を迎えることができた。これから、もっとそうなればいい。最高の一日だった」


敗者とは思えないほど前向きな、コルダのコメントだった。


「初めてのウィンブルドンで第2週に残ることができた。信じられないよ。今日の失敗から学ぶことができればいいと思う。今日は初めての5セットだった。僕にはまったく新しい経験だった。僕はどの大会でも、ただただ学んでいる。大会ごとに新しいことを学ぶ、それが今の自分にできる最善のことなのだと思う」


と、コルダは謙虚に話す。昨年のローランギャロスで四大大会デビュー、いきなりベスト16入りして驚かせたが、グランドスラム通算でも今回が3大会目。まだまだ経験を積んでいく段階なのだ。ただ、全仏とウィンブルドンの両大会で初出場時に16強入りは、過去にビヨン・ボルグ(スウェーデン)など2例しかない。コルダがいかに非凡な選手であるかを示す一つの証拠だ。


学ぶこと、一歩一歩積み上げていくことがいかに大切か、これを教えてくれたのは、ともにテニスツアーで活躍した両親だという。父親のペトルは1998年の全豪で優勝、ATPランキングで2位に上りつめた。母親のレジーナは最高位26位をマークした。セバスチャンは「コート上でポーカーフェイスでいること、ネガティブな感情を表に出さないこと」を母親から学んだという。また、二人の姉、ジェシカとネリーはゴルフのLPGAツアーで活躍するスター選手だが、弟のセバスチャンにとっては一番の応援団だ。


テレビカメラはときおり、コートサイドで見守る父親の姿をとらえた。もう一人のコーチ、ディーン・ゴールドファインと時々話すものの、ペトルは感情をあらわさず、静かに息子の試合を見守った。ただ、最終セットの勝負どころで立ち上がって拍手を送ったのが印象的だった。


有名選手の息子、さらに有名ゴルフ選手の弟というだけで重圧のかかるセバスチャンを、家族は一歩下がって見守ってきた。以前、ATPツアーの公式サイトは父親ペトルのこんな言葉を載せた。


「僕は自分の子供の陰にいることを楽しんでいる。彼はエンジンであり、僕は車輪にすぎない」


また、1年ほど前、当時ATP200位台だったセバスチャンについて、ペトルはこうコメントしている。


「彼はコート上でもコート外でも学習している。これは驚くべきことだ。彼はこの競技について、右往左往しながら学んでいる。もう1年か2年は多くのことを学ばなければならないのではないか」


ペトルにとって、昨年からの大活躍はやや想定外だったかもしれない。だが、教育は成功しているようだ。コルダが、あと一歩で勝利を逃したこの4回戦を「最高の1日だった」と振り返っているのがその証拠だ。彼自身、学ぶことの大切がよく分かっているから、「やれるだけのことはやった」と前を向き、この大会での「新しい経験」を喜ぶのだ。


(テニスデイリー編集部)


※写真は「ウィンブルドン」のコルダ
(Photo by Julian Finney/Getty Image)

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現地在住ライター、テニスライター内田暁がレポート!

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