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グランドスラム

年間2,000万円を超えるグランドスラムの罰金はどこへ?

2019年「全仏オープン」

プロテニス選手が試合中にラケットを壊す、汚い言葉を使う、不適切な態度を示すなど、大会の行動規範に違反する行動を取ると、罰金を科される。社会と同じように、スポーツでもある一定のルールを定め、公平で合理的な基準を設けることで秩序を維持するよう管理されている。グランドスラム大会の場合は、それらの規則はグランドスラムルールブックに記されている。

そのルールブックは90ページにも及ぶが、簡単な概要とグランドスラムで罰金が徴収される理由と金額、そしてその罰金はどのように使われるのかについて、ITF(国際テニス連盟)の公式ホームページでQ&A形式で解説されている。


どのような違反に罰金が課せられるのか?
グランドスラムでよく見られる罰金対象となる行動は、ラケット破壊や暴言、そして選手が自身の能力を最大限発揮する努力を怠ったと判断された場合などだ。だが他にも様々な違反行為で罰金を科されることがある。


時間を守らない、許可なくコートを去る、十分な理由なく試合を途中放棄する、不適切な言葉を使う、不適切なジェスチャーをする、スポーツマンらしくない行動をする、そして試合後にメディアの取材に答えない、などが行動規範に記されている。


ここに紹介したのはどちらかと言うと軽微な違反行動だが、もしある1回の行動、あるいは小さな違反行為の繰り返しが、試合の健全性を脅かす悪質な行為(重大違反)と捉えられた場合は、グランドスラム役員会から更に厳しい処分を受けることもある。


グランドスラム役員会というのは?ITFがグランドスラムを運営しているのでは?
よく誤解されるが、ITFはグランドスラムを運営しているのではない。ITFは、「全豪オープン」、「全仏オープン」、「ウィンブルドン」、「全米オープン」をそれぞれ運営するオーストラリアテニス協会(TA)、フランステニス協会(FFT)、オールイングランド・ローンテニス・アンド・クローケー・クラブ(AELTC)、そしてアメリカテニス協会(USTA)と共に、グランドスラム役員会に名を連ねている。


通常罰金は、各大会の規則に則って徴収される。ATP(男子プロテニス協会)やWTA(女子プロテニス協会)は、それぞれが運営する大会において、選手が犯した違反行為に対し罰金を科す責任がある。ITFもITFワールドテニス・ツアーや「デビスカップ」、「ビリー・ジーン・キング・カップ」などITFが運営する大会に関連する罰金に対する責任を負う。グランドスラム役員会は、グランドスラム大会で行動規範に沿って取り締まる責任がある。


グランドスラム役員会により科される罰金の額はどのくらい?
罰金は、選手のランキング、つまり予想される収入と、違反の程度に応じて決定される。例えば世界ランキング150位以下の選手であれば1000ドル(約11万円)程度、世界10位以内のトップ選手であれば最大2万ドル(約220万円)が徴収される。


とは言っても、例えば世界1位の選手がラケットをフェンスの外に投げたからといって最大額の2万ドルを払うよう要求されるわけではない(同じ違反行為を200位の選手が行うよりは多くの額が科せられるが)。最終的な金額を判断するのはグランドスラム役員会のディレクターだ。特定の行為の重大度を調査してから決定される。


しかし、もし重大違反だと判断された場合、最大25万ドル(約2,740万円)、もしくは大会で獲得した賞金全額を徴収されることもある。


罰金はどこへ行く?
自分の努力によって勝ち取った賞金から喜んで罰金を支払う選手はいないが、グランドスラム役員会により科された罰金はすべて10日以内に支払われている。罰金はグランドスラム開発基金へ送られ、テニスの発展のために使われる。


かなりの額が集まると思われるが、どのように使われる?
グランドスラム開発基金は設立された1986年以降、5,500万ドル(約60億円)以上をテニスの発展のために援助してきた。テニス選手の罰金は、この基金に年間およそ20万ドル(約2,200万円)の貢献をしている。このプログラムは、世界中のテニス発展途上の地域にテニスを広める支援をしている。さらに、金銭的な理由で十分な練習ができない才能ある選手への援助も行っている。


グランドスラム開発基金はどのように援助する選手を見つけるのか?
グランドスラム開発基金委員会は複数の要素を検討する。特に、年齢、ランキング、そして出身地域などが基準となるが、基金の給付を受けるすべての選手に共通しているのは、類まれなる可能性を持っているということだ。


グランドスラム開発基金は、2017年にグランドスラム選手助成金計画を立ち上げた。この計画は、年間総額65万ドル(約7,120万円)を世界中の選ばれた選手に支給するもので、選手1人あたりの支給額は1万2,500ドル(約137万円)または2万5,000ドル(約274万円)。最近の例ではオンス・ジャバー(チュニジア)、エレナ・リバキナ(カザフスタン)、クリスチャン・ガリン(チリ)、フベルト・フルカチュ(ポーランド)などがこの支援を受けてテニス選手として成長し、グランドスラム大会で活躍を見せている。


その他の有名選手でこの基金の支援を受けたのは?
グランドスラム覇者のグスタボ・クエルテン(ブラジル)、リー・ナ(中国)、エレナ・オスタペンコ(ラトビア)、ビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)、そしてシモナ・ハレプ(ルーマニア)など、グランドスラム開発基金から支援を受けトップ選手へと成長していった選手は多い。


それだけでなく、テニスがさほど強くない国の選手にとって画期的な節目の達成に一役買うこともある。例えば、2020年の「全仏オープン」でオープン化以降のグランドスラム本戦にエジプト人女子選手として初めて出場したMayar Sherif(エジプト)、2018年「全豪オープン」で韓国人選手として初めてグランドスラムのシングルス準決勝に進出したチョン・ヒョン(韓国)、そして2020年「全豪オープン」でアラブ系女性として初めてグランドスラムでベスト8に入ったジャバー、全員が2017年以降のグランドスラム選手助成金を受けている。


罰金がこのように選手の助成に使用されるのなら、選手の不品行を奨励するべきでは?
興味深い質問だが、答えはノーだ。


※為替レートは2021年6月8日時点


(テニスデイリー編集部)


※写真は2019年「全仏オープン」
(Photo by Tim Clayton/Corbis via Getty Images)

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