海外ニュース

シャラポワの告白は何も勇気づけない [APコラム]

 当事者ではないアスリートが不正を働いた仲間の選手を擁護することは、いつも少しの驚きをともなう。セレナ・ウイリアムズ(アメリカ)はマリア・シャラポワ(ロシア)に対して、何か熱心さ以上のものがあるように見えた。

 一方で、おそらくはセレナには余裕があるのだろう。シャラポワのドーピングは、彼女には何ら影響を及ぼすことがなかったからだ。両者は何度も対戦しているが、過去10年以上に渡りセレナはシャラポワに対して18連勝中だ。

 「私は大部分の人たちが彼女が率直に、とても誠意を持って大きな勇気を示したことをうれしいと思っているものだと思う。彼女は自分が何をしたか、年末に何を見落としてしまっていたのかについて正直に話していた」とセレナは言う。

 いいだろう。たぶん、すべての人々のことを言っているのではないのだろうから。ナイキやそのほかのシャラポワのスポンサーたちは、全豪オープン時の検査でシャラポワにメルドニウムの陽性反応が出たとアナウンスされた時点でただちにその契約を停止した。

 彼らは風向きがどちらに向いているかを確かめるために、指を空中にかざしている。彼らは「イメージ・マシーン」であるシャラポワへのファンの評価がどうなっていくのかついて考えている。そしてわかったことは、彼らが考えていた通りにはすべてがそうなっていないということだった。

 彼らはセレナが「誠実さと勇気」だと表現したことも、遅すぎたと判断した。

 シャラポワは、メルドニウムが酸素の吸収や持久力を向上させる効果があるためにワールド・アンチ・ドーピング・エージェンシー(WADA)に今年から禁止薬物に加えられるという電子メールを読まなかったことで、情状を酌量されるかもしれない。

 だが事実として、彼女は10年近くにわたってメルドニウムを摂取してキャリアを築き、大きな財産を築いてきたことに疑問が投げかけられている。

 彼女は薬物なしでも35大会で優勝し、うち5大会はグランドスラムでのタイトルを獲ったかもしれないし、メルドニウムを必要とすることなく「フォーブス」誌が昨年だけで2300万ドル(およそ26億円)と見積もったような収入のあるスター選手になったかもしれない。

 また、薬なしでも厳しい試合の最後のゲームで疲れきった中でも打開策を見つけ出して、プレーし続けられたかもしれない。

 だが、我々は何が真実で、何が薬物によって助けれたものだと考えればいいのだろうか。彼女がこれまでに打ち破った選手たちは、彼女たちが公正さに則って試合に敗れたのかをどうすれば知ることができるというのだろうか。

 単純な解答を我々は持ち合わせていないし、彼女たちにもないだろう。そしてそれはテニス界を超えた人気を獲得したシャラポワの経歴を常に、そして何よりも曇らせたものにしてしまう。

 そしてそれはシャラポワにとっては遅かれ早かれ取り組まなければならないものになる。彼女にはおそらく年単位での出場停止処分が国際テニス連盟(ITF)から下され、それは今季はもちろん彼女のキャリアそのものの終わりになる可能性もある。

 月曜日のロサンゼルスで行われた記者会見での彼女は、競技力を上げるドラッグの使用でこれまでに摘発されてきたあらゆるアスリートたちに起きた出来事についても率直に認めていた。

 「何がともなうかについても、自分で理解しています。私はその結果に直面するでしょう」とシャラポワ。「私はこんな形で自分のキャリアを終わらせたくない。またプレーするチャンスが与えられることを心から望んでいます」。

 たとえほかの人々が許さなくても、セレナとってはこれで十分だったのだろう。だが、かつて十代で成功したジェニファー・カプリアティ(アメリカ)はそうではなかったようだ。彼女は故障のため、引退を余儀なくされていた。

 「私は自分のキャリアを失わなければならかったから、不正行為に関しては何があろうと選ばなかった」とカプリアティはTwitterに投稿している。「私は諦めなければならなくて、苦しまなければならなかった」。

 それはいわゆる「酸っぱい葡萄」的な負け惜しみに類するものかもしれない。しかし、カプリアティはシャラポワが高い対価を払って「システムの抜け穴を使って、科学が追いつくのを待つ」方法を見つけるために、チームにドクターを付けていたのに不運だったともツイートしている。

 このようなスター選手がテニス界で最初のメルドニウムの検査の犠牲者となったことは、シャラポワ自身と彼女の契約収入に関してのみ悪いことだったというわけではない。それはマイナーなスポーツという評価からの脱却に絶えず苦労してきたテニス界全体にとってよくないことなのだ。

 女子テニス史上でもっとも君臨したのがセレナだが、彼女もすでに34歳。彼女も永遠にプレーし続けられるわけではない。セレナに続く選手たちの名前はテニスの専門誌を熱心に読んでいるような読者にだけは有名だが、シャラポワの不在はスポーツ界全体に大きなものとして感じられるだろう。

 これはセレナがシャラポワを弁護する必要がある、という意味ではない。

 シャラポワは自分が勝負のために何らかのものを使ったという事実と、彼女にはほかの選択肢がなかったということを認める記者会見を開いただけだった。何かあるとすれば当局が公式発表をする前に、テニス界が彼女自身に自分のメッセージを伝え、状況をコントロールできる機会を与えることで、シャラポワに敬意を表したということだけだろう。

 たとえセレナが何かを考えていたとしても、そこに勇気と言えるようなものは何もなかったのだ。(C)AP/Tim Dahlberg

Photo:LOS ANGELES, CA - MARCH 07: Tennis player Maria Sharapova addresses the media regarding a failed drug test at The LA Hotel Downtown on March 7, 2016 in Los Angeles, California. Sharapova, a five-time major champion, is currently the 7th ranked player on the WTA tour. Sharapova, withdrew from this week's BNP Paribas Open at Indian Wells due to injury. (Photo by Kevork Djansezian/Getty Images)
PAGE TOP
menu

ランキング人気記事ランキング

「バルセロナ・オープン・バンコサバデル」で準決勝に進んだラファエル・ナダル(スペイン)

2017.04.29

ナダルが未来の大物チョン・ヒョンに手こずりながらも勝利 [バルセロナ・オープン・バンコサバデル]

「バルセロナ・オープン・バンコサバデル」で4強入りした世界1位のアンディ・マレー(イギリス)

2017.04.29

マレーがピンチを克服し、モンテカルロのリベンジを果たして準決勝へ [バルセロナ・オープン・バンコサバデル]

※写真はフェドカップ・ワールドグループ・プレーオフでのエリナ・スビトリーナ Photo:STUTTGART, GERMANY - APRIL 23: Elina Svitolina of Ukraine returns the ball against Angelique Kerber of Germany during the FedCup World Group Play-Off match between Germany and Ukraine at Porsche Arena on April 2

2017.04.29

スビトリーナ、ベグらシード勢3人が4強入り [TEB BNP パリバ イスタンブール・カップ]

※写真は薬物使用による出場停止処分後、初の大会となる「ポルシェ・テニス・グランプリ」で準決勝に進出したマリア・シャラポワ Photo: STUTTGART, GERMANY - APRIL 28: Maria Sharapova of Russia plays a backhand during her match against Anett Kontaveit of Estonia during the Porsche Tennis Grand Prix at Porsche Arena on Apri

2017.04.29

シャラポワが復帰後3連勝で準決勝に進出 [ポルシェ・テニス・グランプリ]

※写真はモンテカルロの大会でのルカ・プイユ Photo: MONTE-CARLO, MONACO - APRIL 22: Lucas Pouille of France plays a backhand against Albert Ramos-Vinolas of Spain in their semi final round match on day seven of the Monte Carlo Rolex Masters at Monte-Carlo Sporting Club on April

2017.04.29

プイユ、ロレンツィらが準決勝進出 [ハンガリアン・オープン]