ウィンブルドン

右膝を故障したマテック サンズの衝撃的な叫び [ウィンブルドン]

「ウィンブルドン」2回戦で転倒し、右膝を負傷したベサニー・マテック サンズ(アメリカ)。痛みに苦しむ彼女を心配して、対戦相手のソラナ・シルステア(ルーマニア)やチームスタッフ、医療スタッフが駆け付けた。

 イギリス・ロンドンで開催されている「ウィンブルドン」(7月3~16日/グラスコート)の女子シングルス2回戦。

 その叫びは、ぎょっとさせられるようなものだった。

 4大会連続のグランドスラム・ダブルス・タイトルを目指してウィンブルドンにやって来た32歳のベサニー・マテック サンズ(アメリカ)は、木曜日のシングルスの2回戦で、ネットに向かって前進したときに、ふいに右膝が崩れ、彼女は芝の上に倒れた。

 彼女は倒れたまま、即座に膝をつかむと「助けて、助けて!」と叫び、救助を懇願した。

 彼女の対戦相手、ソラナ・シルステア(ルーマニア)はすぐにネットを乗り越えてマテック サンズの様子を見に行ったが、大声で悲鳴をあげ続けるマテック サンズと、その膝の状態に、明らかに怖気づいた様子で、数秒傍らに立ち尽すと、やはり助けを探し、辺りを見回した。マテック サンズは約20分後、17番コートから担架で運び出され、病院に運ばれた。

「彼女の膝はすごく奇妙な位置にあった。たぶん映画を除いて、あのような状態のものは一度も見たことがなかったわ。それで私はちょっとパニックに陥ってしまったの」とシルステアは言った。「それから私も助けを呼んだのだけれど、誰も来てくれなかった。それで、できる限り彼女を励まそうとしたわ。でも見ているだけで痛みが伝わってきた」。

 第3セットの第1ゲームで起きたマテック サンズの故障の程度は、すぐには知らされなかった。しかし起こったことは、あっというまに会場中に広まり、選手間に心配の念を生み出した。

 社交的な性格、大きな笑い声、昨年のリオ五輪ミックスダブルスで、ジャック・ソックと組んでアメリカに金メダルをもたらしたときに履いていた、星とストライプの国旗柄のニーハイソックスをはじめとする、独創的なファッションで知られる彼女はツアーの人気者だ。

「彼女は今、キャリアのピークにある」とボブ・ブライアン(アメリカ)は言う。彼の双子の兄マイクは、マテック サンズと組んで2015年の全仏オープン・ミックスダブルスで優勝していた。

「彼女は楽しいことが大好きな女性だ。彼女はロッカールームにどんな敵も持たない」

 彼女はまた、かなり名うてのダブルス・プレーヤーでもある。ルーシー・サファロバ(チェコ)と組み、グランドスラム大会でここ3大会連続、合計5度の女子ダブルス優勝を遂げたあと、彼女はダブルスの世界ランキング1位に位置しているのだ。サファロバはマテック サンズの転倒についてテレビで聞くや、彼女のコートに駆けつけ、側に立ちすくむと、ダブルス・パートナーである友人が苦痛にうめく様子を見て涙を流した。

「今日起こった事故は本当に悲惨なことだわ。言うまでもなく、私は彼女のことを思い、本当に悲しい。我々の(ダブルスの)ゴールなどは、どうでもいいことよ」と、サファロバは消え入るような声で言った。彼女はシェルビー・ロジャーズ(アメリカ)に3セットの末、敗れた自分のシングルスのあとに、メディアの問いに答えた。

「重要なのは彼女の健康よ。それだけだわ」

 ミネソタ生まれでウィスコンシンに住んでいたマテック サンズは、今、夫ジャスティンと住むアリゾナをホームと呼んでいる。彼女は数年前、一連の故障に苛まれたあとに、テニスをやめることも考えた。

 2008年後半、彼女は結婚式から一週間も経たないときに腰の手術を受け、2011年には肩の腱の裂傷があり、2012年には右のつま先の骨折があった。2度目の腰の手術後、6ヵ月プレーできないでいた2014年には、彼女のランキングはシングルス、ダブルスの双方でトップ250圏外にまで落ちていた。

 コートの芝の状態が、マテック サンズの転倒と関係があると示唆する証拠は何もなかったが、オールイングランド・クラブ(ウィンブルドン)のグラウンド・コートのサーフェスのコンディションは、ほかの選手たちの不平の源だった。殊に、ベースライン近くの芝は禿げ、擦り切れて、部分的にわずかしか芝が残っていないか、まったくないところもある。つまり通常、ウィンブルドンの大会4日目ではなく、2週目後半にそうなるのが常であるような、様相を呈しているというのだ。これについて選手たちは、ここ数週間の雨の欠如と異常な暑さの結果である、との説明を受けていた。

「ベースライン近くの芝はもう擦り切れて、その下の土は、まるで氷みたいなの。周りを見てみればわかるわ。選手たちは右往左往している」と、世界46位のアリソン・リスク(アメリカ)は言った。

 18番コートで実現した、第12シードのクリスティーナ・ムラデノビッチ(フランス)に対するリスクの2-6 6-4 6-4の勝利は、女子のドローで起きた複数の番狂わせの一角だ。その中には、第3シードのカロリーナ・プリスコバ(チェコ)のマグダレナ・リバリコバ(スロバキア)に対するフルセット負けも含まれた。

「正直、自分たちの安全について心配していたわ」とリスクは言った。「コートは、かなり滑りやすいのよ」。

 リスクとムラデノビッチは、試合が始まる前と最初の2ゲームで双方が滑り、主審にコート・コンディションについて文句を言った。

「(プレーに適切なコンディションではないと)強く感じたけれど、心の中ではわかっていた。ほかのどこに私たちを入れ、そこがここよりましだという保証はあるの?と。キキ(ムラデノビッチ)と私は、そのことについて話し合ったわ」とリスクは続けた。「私は、『ねえ、キキ、ほかのコートならコンディションが違うかしら?』と言ったの。言うまでもなく、違いはしないのよ」

 ムラデノビッチは、ウォームアップの際に足首をひねってしまったと明かし、第2ゲームでおかしな具合にねじった右膝にMRI検査を受ける予定だと言った。

「芝がないのよ。何と表現したらいいのかわからないわ。クレーですらないの、平らではないから」とムラデノビッチは言った。彼女は記者会見の間、ずっと腫れた膝の上にアイスバッグを当てていた。(APテニスライター◎ハワード・フェンドリック)( 翻訳◎テニスマガジン)

追記:WTAのスポークスマンによると、マテック サンズは右膝の状態を調べるため検査を受けている最中だという。

※写真は「ウィンブルドン」2回戦で転倒し、右膝を負傷したベサニー・マテック サンズ(アメリカ)。痛みに苦しむ彼女を心配して、対戦相手のソラナ・シルステア(ルーマニア)やチームスタッフ、医療スタッフが駆け付けた。(写真◎Getty Images)
Photo: LONDON, ENGLAND - JULY 06: Bethanie Mattek-Sands of The United States receives treatment from the medical team and later retires from the Ladies Singles second round match against Sorana Cirstea of Romania on day four of the Wimbledon Lawn Tennis Championships at the All England Lawn Tennis and Croquet Club on July 6, 2017 in London, England. (Photo by David Ramos/Getty Images)

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