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秋山英宏 全米レポート(13)親友にも容赦なし。スティーブンスの完璧なマインドセット

写真は「全米オープン」決勝でキーズを破りグランドスラム初優勝したスティーブンス

2人のグランドスラム初の決勝までの道のりには、共通点があった。

若い頃からアメリカ女子テニスの次代のホープと見られたが、開花は遅れ気味だった。24歳のスローン・スティーブンス(アメリカ)は、19歳で出場した13年の全豪オープンで四大大会初の4強入りを果たしたが、今大会で決勝進出を果たすまで、そこから4年半かかった。

マディソン・キーズ(アメリカ)は15年の全豪で20歳にして4強入りしたが、次の一歩が前に出ず、初の決勝進出は今大会まで待たなくてはならなかった。

近年は両者ともけがに泣かされた。スティーブンスは右足のけがで昨年の全米を欠場、この1月には左足の疲労骨折を手術した。キーズは左手首を2度手術して今シーズン序盤を欠場、影響はその後も残った。

年齢も近く、よく似た境遇のライバル関係にある2人は、仲のいい友だち同士でもある。スティーブンスは決勝での対戦が決まると「彼女のことはずっと前から知っていて、ツアーでもっとも仲のいい友だちです。死ぬほど好き」とその近い関係を明かした。

ともに四大大会初優勝を懸けた戦いは、予想に反して一方的な展開になった。

ハードヒッターのキーズには力みが見られ、強打はエラーと背中合わせだった。「緊張していて、状況にうまく対処できませんでした」と試合後、キーズが明かした。

緊張でボールが飛ばなくなる選手もいるが、この試合のキーズはラインをわずかに越えるミスが目立った。攻める意思も、実行する技術もあるが、いつもと違う緊張がスイングを鈍らせ、ボールコントロールを乱したのだ。

また、そうさせたのはスティーブンスだった。ミスのない、堅実なプレー。返球は常に深く、キーズのコートに質の高いカウンターが突き刺さった。攻勢に転ずると、一撃でチャンスをものにする破壊力も見せた。

スティーブンスのアンフォーストエラーは2セットでわずか6本、キーズは30本のミスを重ねた。この大差がそのままスコアにあらわれた。
「タフな試合になると思います」と話していたスティーブンスだったが、小憎らしいほどの落ち着きで終始、試合を支配した。

スティーブンスが試合を振り返った。
「自分のことだけに集中していました。コートに入るまではとても緊張していて、コーチに『深呼吸しなさい』と言われ、なんとか収まりました。緊張していようがいまいが--彼女も私も緊張していましたが、私たちは試合をしなければなりません。私は全部のボールを追いかけました。そのことだけに集中しました」

緊張を受け入れ、戦術面に集中してそれを乗り越えようという、マインドセットが見事だった。

2人は試合後、ネットを挟んで抱き合い、長い会話を交わした。キーズの隣のベンチにスティーブンスが座り、談笑するシーンもあった。その場面だけを切り取れば、とてもグランドスラムの決勝のひとコマには見えなかった。

スティーブンスが試合後の会話の中味を明かした。
「彼女に言いました。この試合が引き分けだったらよかったのに。2人とも優勝だったらいいのに、と」

対戦相手に直接、そんな言葉をかける思いやりを持ちながら、ラケットを持てば完膚無きまでにたたきのめす。全米の新女王は一流のアスリートだった。

(秋山英宏)

※写真は「全米オープン」決勝でキーズを破りグランドスラム初優勝したスティーブンス
NEW YORK, NY - SEPTEMBER 09: Sloane Stephens of the United States poses with the championship trophy during the trophy presentation after the Women's Singles finals match on Day Thirteen of the 2017 US Open at the USTA Billie Jean King National Tennis Center on September 9, 2017 in the Flushing neighborhood of the Queens borough of New York City. Sloane Stephens defeated Madison Keys in the second set with a score of 6-3, 6-0. (Photo by Elsa/Getty Images)

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