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ATP(男子ツアー)

ジョコビッチに敗れるも前向きな錦織「ケガもなく、初めてフレンチにいい形で入れる」 [BNLイタリア国際]

 イタリア・ローマで開催されている「BNLイタリア国際」(5月10~17日/ATP1000/クレーコート)は15日、男子シングルス準々決勝が行われ、第5シードの錦織圭(日清食品)は第1シードのノバク・ジョコビッチ(セルビア)に3-6 6-3 1-6のフルセットの戦いの末に敗れた。
 

 ローマでの3試合すべてでフルセットを戦っているジョコビッチは、試合後にこんなことを言っていた。
 「ここまで3試合のすべてにアップダウンがあったが、僕は、最後には、抜け出す方法をみつけだした。ときに、勝つために必要なのはこれ――適切な道を探し出し、重要なときにベストのテニスをするということなんだ」
 
 これは、ここまでの試合で錦織がやってきたことでもあったが、双方が同じことを目指した戦いの中で、この日は明らかにジョコビッチが上を行っていた。
 
 錦織の真骨頂が見られたのは、第2セットに入ってからだった。思いきりのいい鋭いショットが決まり始めると、客席からは「ウェルカムバック(よく帰ってた)!」「たたみかけるのは今だ!」と英語で声がかかる。ようやく本来の錦織らしいテニスが戻ってきたことを歓迎する声援だった。
 
 「僕らはふたりともラフなスタートを切った。最初のほうは特に、あまり多くのラリーはなかった」
 こう錦織が言った通り、試合の出だしは、あまり壮観なものではなかった。このセットで錦織は、攻撃的に打とうとしてはネットにかけるなど、多くのアンフォーストエラーをおかしたが、ジョコビッチのほうも断続的にミスをおかし、長くラリーが続かないままに淡々とゲームは進む。
 
 観客たちは、なぜあんなミスを……と訝りつつ、ため息を漏らしたが、コート上では、観客席からはわからないことが起きていたらしいのだ。あとでジョコビッチが明かしたところによれば、コート上が荒れてイレギュラーバウンドがひどかった上に、強い風が巻いて、まともなプレーがし辛いコンディションだったのだという。
 
 「コートの状態はひどかった。それにものすごく風が強く、質の高いテニスをプレーするのが困難な状況だった。そんな中で僕らはふたりとも、相応しいリズムを探そうと四苦八苦していた。双方の選手にとって条件は同じだったとはいえ、これらのプレー外での障害を克服するために、メンタル的に強くあるということが、骨が折れる挑戦だった」と、試合後ジョコビッチは明かしている。
 
 結局、立ち上がりにブレークされたことが祟って、錦織は3-6でセットを落とす。2-3の第5ゲーム、錦織がいい組み立てで甘いボールを引き出しておきながら、決め球をネットに打ち込むミスをおかし、チャンスをふいにしたときには、客席からは「目を覚ませ、ケイ!」と英語で声も上がった。
 
 しかし、第2セットに入ると、様相が変わり始める。ゲームが進むにつれてミスが減り、錦織がアグレッシブなストロークを打ち込んで試合の主導権を握り始めたのだ。第5ゲームあたりからはラリーも長くなり、試合は白熱。ストロークで圧倒し、ジョコビッチのサービスをブレークすることに成功した錦織は、結局このセットを6-3で取った。
 
 「セカンドセットには、いいプレーをしたと思う。僕はファーストセットよりアグレッシブにプレーしていた」と錦織は振り返る。第2セットでぐっとレベルを上げた過程を、錦織はこう説明した。
 「何かしないと、勝てないと思った。1セット目は風もあって、お互い苦しい中でのラリー戦になり、なかなか攻めに入れなかったが、2セット目からは少し吹っ切れて、思いきり、臆することなく打っていけた。集中力を保ってプレーできていたのが、2セット目のよかったところだと思う」
 
 一方ジョコビッチはこのセットについて、「セカンドでもいいスタートを切ったと思ったが、それからかなりまずいゲームをやってしまい、2-4とリードされてしまった。錦織はあのブレークをやってのけたことで自信をつけ、セカンドセットを勝ち取るにふさわしいプレーをしたと思う。彼のプレーはよりよくなり、アンフォーストエラーもぐっと減っていた」と振り返った。
 
 ところが、その勢いは第3セットでは続かなかった。出だしには、錦織もネットに出てスマッシュを決めるなど、攻撃的姿勢を続けようとしていたが、百戦錬磨のジョコビッチがここでレベルを上げてくる。今度はジョコビッチがぐっとミスを減らし、錦織の攻めをうまく切り返しては、少しでも甘いボールがあれば容赦なく攻撃した。
 
 ジョコビッチはこのときの姿勢を、「ラリーの2、3番目のショットで、よりアグレッシブにいこうとした」と説明する。

 「セカンドセットでは、彼に主導権を握らせるままにしすぎていた。僕はプレーのリズムを変え、ショットにより多様性を加えて、ハイボールを混ぜたりし、彼のバックハンドに同じリズムを与えないようにしたが、短めの返球がきたときは、それを逃さず叩きにいった。それが、僕がサードセットを勝ち取るのを助けたことだった」

 この言葉の通り、プレーにぶれがなくなり、イージーなミスをおかさなくなったジョコビッチは、第3セットの第4ゲームに勝負をかける。続けて数本ミスが出たために、錦織がこのゲームをブレークされたあと、流れは完全にジョコビッチにいってしまった。

ノバク・ジョコビッチ(セルビア) 
 
 ジョコビッチは、「あのファイナルセット2-1からのブレークが勝負の分かれ目だった。あのブレークが僕に羽を与えたんだ。僕はボールをよりよく打ち抜けるようになり、彼はより多くのアンフォーストエラーをおかし始めて、非常に短い時間で試合は決まってしまった」と分析する。
 
 試合後、錦織は「ファイナルセットでの彼はとても堅固で、イージーなミスをおかさなくなっていた。このタフなコンディションの中でも、非常に安定したプレーをし、反対に僕はやや急ぎすぎ、いくつかのアンフォーストエラーをおかしてしまった。僕のサービスをブレークしたあたりから、彼はずっといいプレーをし始め、彼を止めるのは難しくなった」と話した。
 
 「自分のミスも増えたが、ノバクがレベルを上げてきたこともそのひとつの理由。彼のミスが減ったので、たぶんそれがプレッシャーになったのだと思う。2セット目のようなプレーを引き続きできればよかったが、ノバクに対しては、なかなか、そう簡単にはいかない。負けて残念だが、いくつかのポジティブなこともあったので、次に生かしたい」
 
 このクレーでの連戦で錦織は、バルセロナで優勝、マドリッドでベスト4、そしてここローマでベスト8に進出した。これは、敗戦の失望が抜ければ、よいと思えるはずの成績だが、フレンチ・オープンへの抱負を聞かれると、錦織は、多少の懸念と手応えの双方が入り混じった心境を口にした。
 
 「バルセロナが終わって、マドリッドでも幾分、そしてローマでも、まだいまひとつ、しっくりきていないところがあった。連戦だったので体の疲れもあるし、100点の試合をすることはなかなか難しいけれど」と錦織は言う。
 
 「ただ、自分が主導権を握れているときは本当に心地いい。しっかり重いボールも打てて、足も動き、いいテニスができているのを感じるので、2セット目のように自分から打っていけるようなプレーを、これからまた思い出してやっていきたい。ケガもなく、初めていい形でフレンチ(オープン)には入れると思うので、まずはしっかり休んで体の回復に努め、直すべきところは直して臨みたい」

テニスマガジン/ライター◎木村かや子)

Photo: ROME, ITALY - MAY 15: Kei Nishikori of Japan reacta after winning the second set in his Quarter Final match against Novak Djokovic of Serbia on Day Six of The Internazionali BNL d'Italia 2015 at the Foro Italico on May 15, 2015 in Rome, Italy. (Photo by Mike Hewitt/Getty Images)

Photo: ROME, ITALY - MAY 15: Novak Djokovic of Serbia celebrates wildly after breaking serve during his Quarter Final match against Kei Nishikori of Japan on Day Six of The Internazionali BNL d'Italia 2015 at the Foro Italico on May 15, 2015 in Rome, Italy. (Photo by Mike Hewitt/Getty Images)

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