ATP(男子ツアー)

ジョコビッチを追いつめた錦織の“攻めの姿勢” [バークレイ ATPワールドツアー・ファイナルズ]

「バークレイ ATPワールドツアー・ファイナルズ」(イギリス・ロンドン/11月9~16日)の決勝トーナメント・準決勝で、錦織圭(日清食品)が第1シードのノバク・ジョコビッチ(セルビア)を一度は追いつめた。しかし、あと一歩及ばなかった。6-1 3-6 6-0とスコアはジョコビッチの快勝を示すものの、これは紙一重の戦いだった。

 試合の行き先を決めたのは、第3セット冒頭、ジョコビッチのサービスゲームだった。0-30と錦織が先行、さらに15-40と2本のブレークポイントがあった。しかし、錦織は自分からのミスでこれを失い、ジョコビッチが息を吹き返した。第2セットは、ゾーンに入ったかのように、積極的に、しかも落ち着いて攻めた錦織だったが、ここでは明らかに冷静さを欠いた。

 リスクを負った攻めで試合の流れを急転させたのが第2セット。しかし、このキーポイントでのプレーはリスクを負うというより、焦った挙げ句の自滅だった。

 「頭の中で考えてしまった」と錦織。第2セットからの流れに任せることもできたはずだが、「自分で何かしないといけない」「このままでは勝てない」と思ってしまい、自らリズムを崩した。

 錦織が打ち明ける。
 「たぶん、トップの選手を意識しすぎたせいだと思う」

 相手もこのままでは終わらない、もう一段、ギアを上げなくてはジリ貧になってしまうかもしれない--そんな葛藤があったと想像できる。快調に飛ばしていた錦織のメンタルに、小さな隙が生じた。

 ただ、これはネットを挟んで1対1戦いでは、しばしば起こることだろう。世界ランク1位も、第2セットでは心が揺らいだ。逆に錦織は追いついたことで心境の変化があった。対戦競技だからこそ、互いのメンタルは浮き沈みを繰り返す。だから駆け引きの余地もできる。この大舞台、このハイレベルの戦いなら、なおさらあり得ることだ。

 小さな隙間からナイフを差し込み、相手に致命傷を与えるのがトッププレーヤー。錦織の第3セットは、1ゲームも奪えない「ベーグル」に終わった。

 「いいレッスンというか、経験として自分に得られたものだと思うんですが、ただ、悔しいですね」

 全米の決勝でもそうだったが、今の錦織は大一番で敗れても気持ちを切り替え、快活な態度で試合後の記者会見をこなす。淡々とした口調から、その心情を伺うのは難しいが、駆け引きで遅れをとった悔しさは大きかったに違いない。

 今は悔しさばかりでも、レンズの曇りがとれれば、この試合でつかんだ手応えの大きさにも焦点が合うはずだ。

 息を呑まずにはいられないような、第2セットからの反撃だった。「テンポを早くして、ガツガツ打っていった」と錦織。今年の錦織がよく見せる、ライジングショット気味の速攻、その連続だった。ラリーの1球目から、それができなければ2球目、3球目に、果敢に攻撃を仕掛けた。

 「彼のテニスに狂いが来はじめたので、ここを見逃してはいけないと思って、攻める姿勢を貫いてやっていました」

 冷静な口調に錦織の自負が覗く。

 来シーズンは、四大大会優勝と世界ランキング・トップ3を目指す。ジョコビッチを追いつめた攻めの姿勢こそ、道を拓くキーとなるはずだ。

Tennis Magazine/ライター◎秋山英宏)


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