ジュニア

連載第9回 伊藤佑寧【世界へはばたけ、日本のジュニア】

Fly to the World

~世界へはばたけ、日本トップジュニアの横顔~

【第9回】

 福岡で全国選抜高校テニス大会が行われていた3月下旬。昨年のインターハイを制した伊藤佑寧は、亜細亜大学で開催された1万ドルのITF大会の予選に出場していた。高校センバツの個人戦は団体戦出場校の選手しかエントリーできないため、国内のトップジュニアがこうして別の一般大会に出場しているケースは珍しくないが、伊藤の経歴はちょっと珍しい。2012年には“全中”でも優勝しており、国内でこれほどの実績があれば、国際ジュニア大会の出場経験が大抵あるものだが、それがない。その代わり、インターハイのあとは能登、京都、浜松…と1万ドルや2万5000ドルのITF大会に出場してきた。その方針には確かな意図がある一方、将来に関してインターハイ・チャンピオンが抱く本音は意外だ。


伊藤佑寧(いとう・ゆうな)

♥プロフィール

生年月日◎1997年10月2日生まれ(17歳)

所属◎荏原SSC

身長/体重◎168cm/63kg

利き手◎左利き(両手バックハンド)

世界ジュニアランキング◎――

主な成績◎2012年全国中学生大会優勝、2014年インターハイ優勝

◇   ◇   ◇

「佑寧」と書いて、ゆうな、と読む。全中で優勝したときもインターハイのチャンピオンになったときも、またそれ以外にも、事あるたびに聞かれてきたに違いないが、やはり気になるのはその名前の由来だ。
 「おばあちゃんが佑子という名前で、私はその『佑』の字をもらったんですけど、おばあちゃんは大雑把な方なので、お母さんが私にそうはなってほしくないって。それで『丁寧』の『寧』をとって、こういう名前になったって聞いてます」
 話し慣れた様子で、しかし面倒がらず、“丁寧に”答えてくれた。

 母の願いが通じたか、17歳にしてはやや大人びた、理路整然とした話しぶりが印象的だ。その節々に几帳面さもにじみ出る。
 「でも自分では、几帳面すぎるところが短所だと思ってます。例えば外出したときなんか、窓を閉めたか、火を消したかって、何回確認しても気になっちゃう。それと、遠征に行ったときとかみんなで入る大浴場は苦手で、座ったり触ったりしたくない。あ、それは几帳面っていわないですよね。潔癖性? そういう傾向も強いです」

 何を聞いても楽しく話が広がる。コート上では「無表情」を自覚しているが、日本の同年代たちの中ではかなり派手めのウェアは、子供のときに漫画『エースをねらえ!』のお蝶夫人に憧れてテニスに興味を持ったという感性の表れか。話にも身なりにも強い〈主張〉を感じる。

 母親が願った性格は、もしかしたらプレーにも表れているかもしれない。フォアハンドの強打を軸に、丹念なボールコントロールでラリーの主導権を握る168cmという上背は日本女子としては恵まれたほうで、左利きというアドバンテージもある。小学生の頃は全国ではベスト8クラスだったが、“全中”優勝で注目された。さらに昨年のインターハイ優勝によって、「全中のときとは比べられないくらい、世間が大きく見てくれるようになった」という。

 そこで不思議に思うのは、これほどの実績がありながら伊藤にはジュニアの国際大会の経験がまったくないことである。だから、プロフィールの欄が示しているように、ITFジュニア・ランキングを持っていない。持ったことがない。その理由をこう説明した。
 「全中のあと成績が安定しなくて、国際大会に出る機会がなかったんです。ポイントを持っていないから、スーパージュニアとか大きな大会に出られないし、だったら今さらジュニアの下のほうの大会に出るより、一般の大会に出たほうがいいかなって」

 そういうわけで、昨年の晩夏からITFのジュニア大会ではなく一般大会に出場している。しかし、9月に1万ドル大会のGSユアサオープンで予選を勝ち上がって、本戦でも1勝した以外に勝ち星はない。それでも挑もうとする姿勢とは裏腹に、本人は「プロになりたいと思ったことはない」などとまだ意外なことを口にする。グランドスラムにもオリンピックにも出たいと思うが、それが仕事としてテニスをすることと結びつかない、と…。そこのところは高校最終学年の今年、周囲の大人たちの意見もじっくり聞く必要がありそうだ。17歳の主張の行方を見守ろう。
 

 
【オフコートQ&A】

------オフの時間は何してる?

基本的におうちが好きなんです。巨人の坂本(勇人)選手がすごく好きなので、テレビで野球を見てることが多いですね。あとは吉本新喜劇を見るくらい(笑)。

------独自のトレーニング法はある?

特にないですけど、強いていえば、3年くらい前から自転車で練習に通うようになったことですかね。40分くらいかかるので、足腰が強くなったかもしれません。

------体育以外で好きな教科は?

音楽が好きです。下手ですけど合唱とかアカペラとかが楽しい。でもカラオケはあまり好きじゃないので行かないですね。

※インタビューの続きはテニスマガジン2015年3月号に掲載

Tennis Magazine/ライター◎山口奈緒美)


関連キーワード
ジュニア
伊藤佑寧

テニスデイリーのおすすめ

PAGE TOP
menu

ランキング人気記事ランキング

「AEGON選手権」1回戦で世界ランク90位のジョーダン・トンプソン(オーストラリア)に敗れた世界1位のアンディ・マレー(イギリス)

2017.06.21

世界1位マレーが90位トンプソンに衝撃の初戦敗退、ワウリンカ、ラオニッチも姿消す [AEGON選手権]

※写真は「マヨルカ・オープン」(スペイン・マヨルカ島)の準々決勝でクリスティーナ・プリスコバを破り、WTAツアーで初の4強入りを果たした18歳のキャサリン・ベリス(全仏オープンでのもの) Photo:PARIS, FRANCE - JUNE 02: Catherine Bells of The United States celebrates during ladies singles third round match against Carolina Wozniacki of Denmark on d

2017.06.24

18歳のベリスがWTAツアーで初の4強入り [マヨルカ・オープン]

※写真は「ゲリー・ウェバー・オープン」(ドイツ・ハレ)の1回戦でフェルナンド・ベルダスコを破った錦織圭 Photo:HALLE, GERMANY - JUNE 20: Kei Nishikori of Japan plays a backhand during his match against Fernando Verdasco of Spain during Day 4 of the Gerry Weber Open 2017 at on June 20, 2017 in Halle, Germany

2017.06.20

錦織がベルダスコをフルセットで破り、今季のグラスコート初戦に勝利 [ゲリー・ウェバー・オープン]

破産宣告を受けたボリス・ベッカー(ドイツ)(写真◎Getty Images/4月のBMWオープンで撮影したもの)

2017.06.22

借金を返せなかったボリス・ベッカーが法廷により破産宣告

ウィンブルドン前哨戦の「ゲリー・ウェバー・オープン」で大会9度目の優勝を飾ったロジャー・フェデラー(スイス)

2017.06.26

「最高のテニスだった」フェデラーがズベレフを倒し、ハレで9度目の優勝 [ゲリー・ウェバー・オープン]