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サファロバがベンチッチの展開力を封じ込んでベスト8 [東レPPO]

 9月15日から21日まで、東京・有明テニスの森で開催されている「東レ パン・パシフィックオープンテニス」(プレミア/ハード/100万ドル)。

「自分よりも成功する可能性がある」。今大会中にマルチナ・ヒンギス(スイス)はベリンダ・ベンチッチ(スイス)についてそう話していた。

 ベンチッチの強さの源は、相手のボールを自分の打ちたいコースへ自在にコントロールできること。それがあって初めて彼女の戦術アイデアが実現され、駆け引きが成立する。テニスではボールが飛んできた方向にそのまま返すのはさほど難易度が高くないが、より角度を付けて引っ張ったり、飛んできたコースとは反対方向へ流し打ったりする形でコースを変えるのは見た目の印象以上に難しい技術で、プロのレベルにおけるこの技術の巧拙が選手の強さの差になると言ってもいい。

 サファロバはレフティ特有の懐の深いフォアからコースを自在に打ち分ける感覚を持っていて、さらに、細身だが独特のミートのよさで鋭い強打を普通のストロークを打つ感覚で作り出せる希有な能力を持っている選手だ。デビュー当初からその才能は高く評価されており、好調時の彼女はどんな相手にとっても危険な対戦相手だ。だが、基本的には荒れ球で、見事なウィナーを取った次のポイントでは凡ミスをするような部分がなかなか抜けず、その才能の割に結果が出ず、長く中位を行ったり来たりしている選手だった。

 しかし、昨年辺りから全体にミスが減り、その能力が結果に結びつきつつある。今季のウィンブルドンのベスト4進出はその現れの一つと言ってよく、ランキングでも自己最高の14位を記録した。

 第1セットではベンチッチがその展開力でポイントを支配し、サファロバを左右に振り回してはストレートに、そしてアングルへとウィナーを奪っていた。「第1セットはとてもよかった」とベンチッチも振り返っている。
 
 だが、サファロバはそのまま押し切られてしまうようなレベルの選手ではない。第1セット中盤からはリターンのレベルを上げ、特にベンチッチのセカンドサービスに強いプレッシャーをかけ始め、最後は完全に攻略した。第3セットでベンチッチがセカンドサービスで取れたポイントはわずか2ポイントという状態にまで抑え込まれていた。

 序盤のサファロバはベンチッチに振り回されていただけではなく、左右に振られても一球多く相手に打たせることでじわじわとプレッシャーをかけていた。それも、ただ粘るだけではなく、甘くなってきたボールは一歩前に入って叩き、ベンチッチにはより厳しいところを狙わせながら、自分は一球一球の質を上げ、球威での勝負を仕掛けていった。展開力とショットの精度の高さが武器というのが現時点でのベンチッチだが、それを封じ込んでしまえば、ショットの質そのものはまだまだ高くない。
 
「第2セット以降は相手がアグレッシブになってきたのに対して、自分が受け身になってしまったのが一番の敗因」と試合後のベンチッチは話していた。第1セットではファーストサービスで48%しかポイントできていなかったサファロバが、第2セットでは85%、第3セットではなんと93%とほぼ完璧な内容になっていったのにも理由がある。まずはリードされてあとがなくなったサファロバがリスクを承知でショットのレベルを上げたのに対して、ベンチッチが気持ちで守りに入ってしまったこと。次に両者は展開力では互角だが、サファロバにはより高いスピードでそれを無理せず仕掛ける能力がある。今のベンチッチがそれに付いていくには、多少の無理をし続けなければならないことが、試合の中盤以降には明確な差になった。

 ベンチッチはサービスキープがままならなくなったことでリターンゲームでも無理をせざるを得ず、第1セットではミスが出なかったようなショットにもミスが出始めた。サファロバはさらに自信を増し、ショットの精度も球威も上がっていく。最後はサービスエースを2本続けてワイド、センターと決めたサファロバが勝った。


 お互いに女子テニス界では希有な才能の持ち主同士。「今日の試合から学ぶことは多かった」とベンチッチは言う。詳しくは話してくれなかったが、試合後にはヒンギスからどこがよく、どこが悪かったかについてレクチャーされたのだという。17歳の彼女にとって勝ちも負けも全てがプラス要素。自分と似た要素を数多く持つサファロバとの対戦と敗退で、彼女はまた強くなるだろう。若手選手の成長の過程を見るのもテニスの面白みの一つ。今後の彼女にも注目だ。

(TennisMagazine/ライター◎浅岡隆太)

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