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ウィンブルドン

ジョコビッチが「自分史上ベストファイナル」を制す [ウィンブルドン]

 一体どちらが優勢なのか、押しては戻され、押されては戻すラリー、ゲーム展開に観客がのめり込んでいる中、不意に終焉の気配は訪れた。

 セット2-1と王手をかけたノバク・ジョコビッチ(セルビア)が5-3で迎えたサービング・フォー・ザ・マッチ。ロジャー・フェデラー(スイス)はしかし、土壇場のブレークバックを果たす。これで追いついたも同然と思いきや、続く第10ゲームで30-15からダブルフォールト、さらにバックハンドをネットにひっかけ、30-40とマッチポイントを握られた。

 だが、今日はピンチでサーブが冴えていた。ここをエースで切り抜け、2度のデュースの末、キープに成功すると、逆に第11ゲームをブレーク。最後はきっちりキープし、セットをイーブンに戻して最終セットへ。これほど試合を終盤にエキサイトさせたのは、フェデラーのサーブ力のみではない。そこからネットに出ていく頻度の高さは、今大会のフェデラーの大きな特徴だった。

 リターンからでもラリーでも、相当のリスクを犯して前へ出た。ジョコビッチが手堅いプレーで勝てる相手でないことは知り尽くしていたし、こういうライバルに勝つために昨年からラケットを替え、ステファン・エドバーグをコーチにつけ、トラディショナルなプレーにパワーを加えた新しいテニスに取り組んできたのだ。

 最終セット、先にブレークポイントを握ったのはフェデラーだ。第7ゲーム、30-40。これをしのいだジョコビッチが直後のゲームで今度は計3度ブレークポイントを握ったが、フェデラーがしのぐ。

 試合を通してジョコビッチが握ったブレークポイントは計15回あったが、フェデラーはうち9回をセーブした。ただ、その危うさはラストシーンの伏線だったのかもしれない。第10ゲーム、フェデラーのアンフォーストエラーが続いて15-40。最後はバックハンドがネットにかかった。

 3時間56分。6-7 6-4 7-6 5-7 6-4。
 ジョコビッチは最後まで崩れなかった。フェデラーのプレースタイルの変化には気づいていたという。果敢にネットに詰めるフェデラーの、少しでも甘いアプローチショットは、ジョコビッチの針の穴を通すような精巧なパッシングショットの餌食になった。

 テニスは、サーブ・アンド・ボレーヤーがいてこそスリリングだと言われる。それを思い出させてくれる決勝戦だった。

 「最初から最後まで、これほど高いクオリティでグランドスラムの決勝を戦ったことはない。僕にとってこれがベストマッチ」
 14度目のグランドスラム決勝を戦い、7度目の栄冠を手にしたジョコビッチはそう振り返った。

 先に会見を行っていたフェデラーが、意外にさばさばした表情でジョークや笑顔も見せていたのは、ジョコビッチのレビューと無関係ではないだろう。
 「最後はちょっと辛かったけど、この何週間かを振り返れば、とても安定したテニスができたし、いいことがたくさんあった。気持ちもまた盛り上がってきたよ」 

 ポスト世代による「打倒ビッグ4」が注目を高めた今年のウィンブルドンだったが、最後はビッグ4が格の違いを見せつけた。〈壁〉は本当に越えられる高さになったのか、あるいは気のせいだったのか……夏のハードコートシーズンではもっと明確な答えに近づくことができるだろう。
 
Tennis Magazine/ライター◎山口奈緒美)


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