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フェデラーを追い詰めた錦織圭の“高速トランジション” [ATPファイナルズ]

 イギリス・ロンドンで開催されている「ATPワールドツアー・ファイナルズ」(11月15~22日/室内ハードコート)の大会5日日はグループ〈スタン・スミス〉の2試合がスケジュールされ、アフタヌーン・セッションでは第8シード錦織圭(日清食品)が第3シードのロジャー・フェデラー(スイス)に5-7 6-4 4-6で惜敗。勝利が最低条件だった一戦に敗れ、錦織のグループリーグ敗退が決まった。フェデラーは3戦全勝で1位通過を決めている。

 1勝1敗の錦織がグループを突破するには、このフェデラー戦に勝利した上で、イブニング・セッションでトマーシュ・ベルディヒ(チェコ)がノバク・ジョコビッチ(セルビア)を破らなければならない。厳しい条件をつきつけられた中での戦いだったが、錦織は元王者を相手に観る者を楽しませる刺激的なゲームを展開。フェデラーをあと一歩まで追い詰めた。

 「最初は焦りがあった。彼の(早い)テニスに勝つには、もっと早いテニスをしなければいけないのかと」。確かに試合序盤はフェデラーに分があったが、すぐに錦織は落ち着きを取り戻す。第4ゲームをブレークされたが直後にブレークバック。ベースライン上から早い展開でボールをさばくフェデラーのテンポにつき合うのではなく、引くところは引き、チャンスがあれば一気に攻撃へと切り替える。リズムチェンジを交えながら、得意のストローク戦へと持ち込んでいった。

フェデラーの高速展開はこの日も冴えわたった

 元王者を自分の土俵(ストローク戦)に引き込み、五分のクロスゲームを演じることができたのは、「スペシャルだった」とフェデラーが称え、錦織も自賛したリターンがあったからだ。3セットともファーストサービスの確率が50%台と、フェデラーにしてはやや精度を欠く中で、錦織は相手のセカンドサービスへアタックをかけていった。「今日の試合に勝つためには、やらなければいけないことだと思っていた」。

 それでもフェデラーは第1セット終盤から第2セットにかけて、ベースライン上からさらなるステップイン&アタックを繰り返し、前へのプレッシャーを強めていく。第1セットを5-7で落とし、第2セットも1-4とリードを許したときには、錦織の反攻は難しいかと思われた。

 しかし、そこから2つのブレークを含む怒濤の5ゲーム連取。「正直、集中していたのであまり内容は覚えていない」と錦織は振り返るが、実際にコートの上で起きていたのは、体力が削られることを厭わない、アグレッシブなディフェンス&ゴーだった。

錦織はリターンと素早い攻守の切り替えでフェデラーに迫った

 低めのポジションをとることでフェデラーにウィナーを許さず、それでいて深い位置からでもフルショットでアタックをかける。前への意識を強めているフェデラーの出鼻をくじくように、ボールは足元深くへ突き刺さり、その隙にポジションをスルリと上げて一気に攻撃へと切り替える。守から攻への高速トランジションは、フェデラーのリズムを崩すのに十分なものだった。

 ファイナルセットに入っても両者のテンションは落ちず、激しいラリーのやり取りは続いた。第4ゲームを先にブレークされ、1-4のリードを奪われるのは第2セットと同じ展開。そして、第7ゲームでブレークバックに成功、続く第8ゲームをラブゲームキープして4-4と追い上げたのも同じ。まるで第2セットのミラーゲーム。錦織の逆転に期待は高まった。

 しかし、決定的に違ったのは直後の第9ゲームだ。フェデラーはファーストサービスを4本揃え、4つのフリーポイントであっという間にキープに成功。対する錦織は直後の第10ゲーム。優位にポイントを進めながら、ダブルフォールトが絡んでフェデラーに逆転のブレークを許してしまった。自慢のリターン&ストロークで元王者を追い詰めたが、最後はフェデラー自慢のサービスでねじ伏せられた。

錦織にとっては新シーズンにつながる敗戦となったはず

 終わってみればトータルポイントはフェデラーの96に対し、錦織は93。189ポイントのやり取りの末に、わずか3ポイントが勝敗を分けた。しかし錦織は、「最後に負けてしまうのは、数ポイントの差といえど大きい。彼には常に少しの余裕がある。その差は小さいようで大きい」と、力の“差”を認めた。

 一方で、フェデラーを確実に追い詰めたという手応えは、来シーズンにつながるものだろう。「(ベルディヒ戦を含めた)この2試合は、来年につながる自分らしいプレーができた。自信を持ったままオフシーズンに臨める」。

 2年連続のトップ8でのフィニッシュ。迎える2016年は、ふたたびロンドンのファイナルズへ戻ってくるトップ8を最低ラインの基準点としながら、その過程でマスターズ1000大会、そしてグランドスラムのタイトルを狙うシーズンとなる。第2セットで見せた、アグレッシブなディフェンスからの素早い攻撃への切り替え。攻守一体のハイブリッドテニスを見せたジョコビッチを持ちだすまでもなく、それが錦織のさらなる進化のキーとなるのではないか。

※トップ写真はフェデラー(右)を追い詰めながら敗れた錦織

テニスマガジン/編集部◎杉浦多夢)

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