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2010年代に期待されながら花開かなかった5人の男子選手

写真は「ATP500 ワシントンD.C.」でのキリオス

この20年ほど、男子テニス界ではごく数名の選手がトップを独占し続けるという状況になっていた。ファンの間でもこれに関しては意見が分かれているが、それでも数名の選手がライバル関係を築きしのぎを削る様は、世界中のファンを魅了してきた。

テニスのビッグ3と呼ばれるロジャー・フェデラー(スイス)、ラファエル・ナダル(スペイン)、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)は、3人で2003年以降のグランドスラム72大会のうち60大会で優勝。さらに、3人合わせてマスターズ1000大会を100回制覇している。


この三つ巴の戦いに挑み、時に大きな大会で彼らを抑え優勝を飾った選手もわずかだがいる。アンディ・マレー(イギリス)、スタン・ワウリンカ(スイス)、フアン マルティン・デル ポトロ(アルゼンチン)、そしてマリン・チリッチ(クロアチア)の4人は、フェデラー、ナダル、ジョコビッチのうち少なくとも1人を下し、グランドスラム優勝を勝ち取った。彼らは、ビッグ3も無敵では無いことを証明したのだ。


それでも、マレー、ワウリンカ、デル ポトロ、チリッチの4人はビッグ3と並び称されるような実績は残せなかった。そして、2010年代にはこの4人以外にもビッグ3を倒し、トップ選手となり得たかもしれない選手が数名いた。彼らは皆、他を圧倒する武器と才能があり有望株と目されていたが、自分自身が成功の妨げとなってしまった選手たちだ。怪我に悩まされてキャリアを築けなかった者もいれば、単に実力が出しきれなかった者もいる。


スポーツウェブメディアSportskeedaは、2010年代にビッグ3の牙城を崩す勢力として期待されながらも花開かなかった5人の選手をランキング形式でまとめ、紹介している。


5位 グリゴール・ディミトロフ(ブルガリア)


フェデラーに似たプレースタイルを持つことから”ベイビーフェド”とあだ名を付けられたディミトロフ。2017年の「Nitto ATPファイナルズ」で優勝し、通算337勝226敗と素晴らしい戦績を残しており、間違いなく成功したテニス選手の1人である。だがグランドスラムでの優勝経験はなく、安定性に欠けるため、この不名誉なリストに名を連ねることになった。


フェデラーに憧れ、彼を手本に育ってきた世代の代表であるディミトロフのコートでの動きは、サーブのモーションからバックハンドスライスまでフェデラーにそっくりだ。天性の才能を持っているディミトロフだが、ツアーでは安定した成績を残せないまま30歳を迎えてしまった。2013年の「ATP1000 マドリード」でジョコビッチを破った際は、今後の活躍に大きな期待が寄せられたが、その後はジョコビッチと7度戦って一度も勝利していない。


ディミトロフが最も活躍したのは2017年のシーズンだった。49勝14敗の成績で、「Nitto ATPファイナルズ」を含む4大会で優勝。だがこの絶好調のシーズンでさえ、ディミトロフがグランドスラムの決勝に進出することはなかった。


ファンにとってディミトロフは“当てにならない”選手だ。格下の選手にも簡単に負けることがあり、重要な局面で実力を発揮することが出来ない。ブレークポイント成功率が38%と低いのがその証拠だ。


すでにベテランの域に入りつつあるディミトロフは少しでもいい成績を収めようと努力を続けているが、若い頃に期待されたようなビッグ3に取って代わるほどの活躍は難しそうだ。


4位 バーナード・トミック(オーストラリア)


当時20歳のトミックが2013年の「ATP250 シドニー」で優勝した時は、期待の新星として世界中から注目が集まった。トミックのプレーには無駄がなく、あらゆるショットを操りまるで手品師のようだった。身長196cmのトミックはコートで力強い存在感を放つ。そしてジュニア時代の2009年には「全豪オープン」と「全米オープン」で優勝していた。


だが28歳となったトミックのこれまでの戦績を見てみると、優勝は4大会、通算成績は186勝182敗にとどまっている。さらに、コート内外で繰り返しトラブルを起こしており、彼の言動は同僚の選手からも批判されてきた。今年の「全豪オープン」では久しぶりに予選を突破し初戦も勝利したが、それ以降はチャレンジャー大会でもさして勝ち進めず、ツアー大会では予選敗退という結果が続いている。


ただ、トミックのキャリアには父であるジョン・トミック氏が多大な影響を及ぼしていたことは指摘しておいた方が良いだろう。ジョン氏は非常に厳格な一方やや短気なところもあるようだ。ある時などは、試合中劣勢に立たされた息子に苛立ちをみせたジョン氏の言動がプレーの妨げになるとして、トミックが審判に父親をスタンドから追い出すよう頼んだこともあった。


トミックの場合、トップ選手になりきれなかった一因は過剰な親の期待やプレッシャーが害を及ぼしたことにもあるのかもしれない。


3位 ブノワ・ペール(フランス)


ペールはただ才能のある選手というだけでなく、対戦相手の弱点やショットの選択などを鋭く分析する能力に長けている。だが、叩きつけられたラケットがコートサイドに山積みになっている光景の方が強く印象に残っているファンも多いだろう。


フォアハンドがあまり得意でないペールだが、しっかりと集中した状態を保てればトップ選手とも十分に渡り合える。強烈なバックハンドと繊細なタッチを使い分け、ベースラインでもネット際でも素晴らしいショットを連発する。


パンデミック以降絶不調に陥っていたが、先月の「ATP1000 シンシナティ」では1回戦で1セットダウンから逆転勝利、その後もデニス・シャポバロフ(カナダ)、ジョン・イズナー(アメリカ)を破り、準々決勝では絶好調だったアンドレイ・ルブレフ(ロシア)相手に素晴らしい戦いを繰り広げた。フルセットで敗退となったが、逆境にめげず果敢に戦い続けるなど、少し前のペールでは考えられなかったことだ。


現在32歳のペールは記録には残らずともかなり記憶に残る選手であったことは確かだが、残された現役期間にその才能に見合った活躍を見てみたいものだ。


2位 エルネスツ・グルビス(ラトビア)


グルビスの名前に聞き覚えがない読者もいるかもしれないが、それも無理はない。現在世界ランキング196位のグルビスは、ここ何年も大きな大会には出場していないからだ。


2004年に16歳でプロに転向したグルビスだが、注目を集めるようになったのは2010年に初めて「ATP250 デルレイビーチ」で優勝してからのことだ。力強いサーブとグラウンドストローク、そして巧みな試合運びを武器とする当時22歳のグルビスには明るい未来が待っているように見えた。2014年の「全仏オープン」では準決勝に進出し、世界ランキングを自身最高の10位としたグルビス。しかし、その後は安定した成績を残すことができなかった。


まれにトップレベルのプレーを見せることがあり、ある時はナダルにクレーコート上でベーグルをくらわす寸前まで行ったこともある。だがそんな試合も1、2回だけで、すぐに敗退してしまうのがいつものパターンとなっている。


グルビスはあまりトレーニングに精を出すほうではないらしい。チームが勧める食事方法や疲労回復法を全く無視したこともあった。


今年のグルビスは、ツアー大会では0勝2敗。他はほぼ予選敗退と散々な結果で、このランキングに名を連ねる他の選手と比較してもかなり悪い状況だ。すでに32歳を迎え、身体的なピークは過ぎつつある。今後少しでも良い成績を収めるためには、テニスへの愛を再燃させ、トレーニングへの意欲を高めていくことが必要だろう。


1位 ニック・キリオス(オーストラリア)


このランキングはキリオスのためにあると言っても過言ではない。彼は将来を嘱望されながら花開かなかった選手の代表と言っていい。天才的な試合の勘を持ち、193cmの長身で体格にも恵まれたキリオスは、テニスで成功するすべての要素を持っている。実際、キリオスはビッグ3の全員に勝利したことのある数少ない現役選手の1人だ。


熱心なテニスファンなら、2014年の「ウィンブルドン」で19歳のキリオスが当時世界王者だったナダルを下したのを覚えているかもしれない。グラスコートは経験豊富な選手の方が有利とされるが、キリオスは若手の頃からトップ選手に怖気づく様子を見せたことがなかった。相手がフェデラーでもナダルでもジョコビッチでも、いやむしろ相手が強く有名であるほど、力を発揮できる肝のすわった選手なのだ。


やがてキリオスは、インタビューや記者会見での毒舌発言で注目されるようになった。キリオスは同僚の選手や審判らの悪口を平気で口にする。さらには、トレーニングをしないからコーチは必要ないと発言するなど、トレーニングを軽視する傾向にある。そのため一部からはかなり白眼視されている。


現在キリオスは26歳、プロテニス選手として重要な時期を迎えている。おそらく身体的には今が全盛期で、ツアーで好成績を残すならあと数年が勝負となる。才能あふれる選手だからこそ、自己中心的なお騒がせキャラで終わってほしくはない。


ここで紹介した選手はいずれも良い時と悪い時を経験しているが、全体的には偉大とは言えないキャリアに収まってしまっている選手ばかりだ。今も努力を続ける選手もいるが、飛躍を諦めてしまったように見える選手もいる。すべての選手が持てる才能のすべてをコート上で花開かせてほしいと願うのは、テニスファンの叶わぬ夢なのだろうか。


(テニスデイリー編集部)


※写真は「ATP500 ワシントンD.C.」でのキリオス
(Photo by Chaz Niell/Icon Sportswire via Getty Images)

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