
来月開催される国別対抗戦「ATPカップ」(オーストラリア・メルボルン/2月1日~5日/ハードコート)で、日本のエース錦織圭(日本/日清食品)と対戦することが決まっている、現在世界ランキング4位、24歳のダニール・メドベージェフ(ロシア)。
2019年後半、7月に始まった「ATP500 ワシントン」から「全米オープン」を含む6大会連続で決勝に進出、うち3回優勝という破竹の勢いで注目を浴びた。その後2020年前半までは少し低迷したが、「全米オープン」ではベスト4に進出、そして年度末の「ATP1000 パリ」と「Nitto ATPファイナルズ」という2つのビッグタイトルを獲得。
どちらかというと細身だが、198㎝という長身で独特のスイングを持つメドベージェフのプレーの特長を、伊ニュースサイトUBI Tennisが報じている。
メドベージェフがグループステージも全勝で優勝した昨年の「Nitto ATPファイナルズ」、及び過去3年間の「Nitto ATPファイナルズ」に出場した選手たちのプレーを見てみると、メドベージェフのサービスリターンに際立った特長があることがわかった。
2018年から2020年まで、3年間の「Nitto ATPファイナルズ」のデータを比較したところ、メドベージェフはサービスリターンの時にその中の誰よりもベースラインの後ろで構えていた。選手らがファーストサーブを受ける時に構えた位置の平均はベースラインから1.9m後ろだったが、メドベージェフはアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)との初戦の時、4.51m~5.51m後ろで構えていたのだ(6-3、6-4でメドベージェフの勝利)。
メドベージェフがあまりに後ろで構えていたので、ATPのシステムがその位置をグラフィック化するのが困難だったほどだ。このシステムは通常、ベースラインから5m後ろまでをグラフィック化できるようになっている。だがメドベージェフが最も後ろで構えた時は、ベースラインから約7mも離れていたのだ。
その真逆のアプローチだったのは2018年にロジャー・フェデラー(スイス)が錦織と対戦した時で、フェデラーは36本のファーストサーブのリターンを平均22cmベースラインの後ろから返した。試合はストレートで錦織が勝利している。
フェデラーのせいでこの距離の平均が短くなっていることは否めないが、メドベージェフが同大会に出場した2019年・2020年には、この距離の平均はどんどん長くなっている。
ファーストサーブリターン時のベースラインからの平均距離
2018年:1.41m
2019年:1.73m
2020年:2.55m
そして多くの選手が、セカンドサーブを受ける時は、より積極的に攻めるためファーストサーブリターン時より前に出る。
セカンドサーブリターン時のベースラインからの平均距離
2018年:0.23m
2019年:1.25m
2020年:1.43m
2018年には、セカンドサーブリターン時に選手がベースラインの内側で構えたのは30回中平均15回だったが、2020年にはその平均回数は6回にまで下がった。そしてセカンドサーブはファーストサーブより前で受けるというやり方は、2020年準決勝のメドベージェフ対ラファエル・ナダル(スペイン)戦では、まるきり逆だった。
メドベージェフがナダルのサーブを受けたベースラインからの平均距離
ファーストサーブ:3.15m
セカンドサーブ:3.85m
ナダルがメドベージェフのサーブを受けたベースラインからの平均距離
ファーストサーブ:3.58m
セカンドサーブ:4.13m
メドベージェフとナダルは、どちらもサービスリターンの時に他の選手たちよりずっと後ろで構えることを好む。その理由の一つは二人がこんなに後ろからリターンできることに自信を持っていること、もう一つは彼らは常にコートより後ろでプレーすることを好むことである。
彼らの特長の一つは素晴らしいディフェンス能力であることが、このリターンポジションのデータによく表われている。
データの取られた大会や期間は明らかにされていないが、「通算では」メドベージェフのファーストサーブリターン時のベースラインからの距離は4.07m、セカンドサーブリターン時は2.73mであるという。つまり、メドベージェフはすべての試合で、セカンドサーブリターン時の方が後ろに下がるという訳ではないようだ。
メドベージェフのプレーが相手によって「カメレオンのように」変化することの証に、ドミニク・ティーム(オーストリア)との決勝では、セカンドサーブリターン時のベースラインからの距離は平均85cmだった。しかもその数字はセットが進むごとにどんどん短くなっている(第1セット:1.11m、第2セット:87cm、第3セット:50cm)一方で、ファーストサーブリターン時にはどんどん後ろに下がっていた(同2.87m、3.34m、3.88m)。
これはティームの弱点、つまりバックスイングが大きいので、特にバウンドの低い室内コートでは予想以上に早く返ってきたリターンに対処するのが難しいという点を突いてのことだと思われる。同時にティームの長所、少しでも余裕を与えると素早く攻撃を仕掛けてくるという点を避ける戦略でもあるだろう。
メドベージェフが多くの場合ベースラインのかなり後ろからサービスリターンをするのは、彼がベースラインからの打ち合いを好むからだ。ベースラインからのラリーに持ち込んでこそ、メドベージェフは「水を得た魚」となる。
これらの分析からわかるメドベージェフの特長は以下の通りだ。
1.ベースライン近くでリターンしなくても勝てる。
2.状況と相手を見てリターンポジションを自在に変える。
3.全体的に見れば、かなり後方からサービスリターンし、ストローク戦に持ち込む。
(テニスデイリー編集部)
※写真は「Nitto ATPファイナルズ」でのメドベージェフ
(Photo by Clive Brunskill/Getty Images)
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