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コロナに翻弄されるランキング下位のテニス選手たちの実情

写真は2019年「全仏オープン」でのナダル(左)とマデ(右)

世界ランキング149位のヤニック・マデ(ドイツ)に先週起こったことは、世界をツアーして周るのが仕事のテニス選手たちが新型コロナウイルスの感染拡大によってどういう影響を受けたかを如実に物語っている。英The Guardian紙が報じた。

先週初め、マデの唯一の予定はテニスだった。だが、新型コロナウイルスの広がりから刻々と変わる各国の入国規制に振り回された。


彼は、賞金総額4万8千ユーロ(約570万円)のチャレンジャー大会に出場するために、カザフスタンの首都ヌルスルタンへ飛ぶ予定だった。開催への不安はすでにあり、ドイツのATP責任者は自分にはイベント開催の決定権はないとしていたが、カザフスタンではまだあまり感染者が報告されていなかったので、トーナメント開催の結論は簡単に出そうだった。


マデは、電話インタビューで「決定の連絡を待って待って待ち続けたよ。でも月曜にもまだ知らせは来なかった。だから僕は行くことに決めた。現地にはすでに2人のドイツ選手がいて、現地の様子は落ち着いているように見えたよ。彼らも、いつも通りだと言ったんだ」と語った。


マデは先週の水曜日に試合の予定だった。しかし、当時カザフスタン政府がドイツ人、イタリア人、フランス人が入国した際には14日間強制的に隔離するとの噂があったため、前日の夜、彼と2人のフランス人選手とドイツ人選手は、領事館や大使館に電話をかけ続け、自分たちが14日間隔離される可能性について問い合わせた。


試合前のウォーミングアップ直前、水曜の昼頃になってようやく答えが得られたが、彼らは国を出るまでに半日しか残されていないと知った。それを逃したらホテルの部屋に閉じ込められる。そのため、彼は数時間後には空港にいた。ギリギリでモスクワ行きの飛行機に乗って出国、そこから自宅のあるシュツットガルトへと飛んだ。彼を含め、今回カザフスタンの大会では、前例のない9名が身体的な理由以外で棄権となった。


「僕たちは午後4時30分のフライトに乗ろうと空港にいた。その時オーストリアの人からはっきり聞いたんだ、今日の深夜12時から隔離が始まるって。結局、あれは正しい判断だったよ」彼は少し黙ってから笑って言った。「そもそも行ったことが間違いだったとも言えるけど。恐怖ですごいストレスだったというわけではないけれど、隔離されるのだけは避けたかったんだ。それが最終的な目標だった」


プロテニスの実体は、終わりのないテニスだ。カレンダーは年間51週間、びっしりトーナメントで埋まっている。ノバク・ジョコビッチ(セルビア)やラファエル・ナダル(スペイン)のような選手たちは自分で決めて4週間のミニシーズンオフを作ることもできるが、その時でもいつも誰かがどこかのトーナメントで試合をして、同じランキング制度の下でポイントを獲得している。


結果として、ドミノ倒しのようにテニス界はすべて休止。インディアンウェルズでは200人の男女のトップ選手たちが突然の開催中止のニュースに驚いた。続いてATP、WTA、ITFも5、6週間のトーナメント中止を決めた。


ジャック・ドレイパー(イギリス)はイギリスの若手トップだが、彼には熟考する時間もなかった。19歳の彼は南アフリカのポチェフストルームで開催されていた賞金総額3万5千ドル(約372万円)のチャレンジャー大会に出場、Tobias Simon(ドイツ)との準々決勝がスタートしてから1時間44分後に雨が強く降り始め、一時中断となった。


その時試合は第3セットでドレイパーが5-4でリードしていたが、中断の間にATPがトーナメントの即時中止を発表し、彼らがコートに戻ることはなかった。その試合はキャンセルとなり記録からも消され、後でドレイパーが「もうちょっとでブレークできそうだったのに」とツイートしていた。


新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けている選手は多い。デヤナ・イエストレムスカ(ウクライナ)も19歳の有望選手だが、ドナルド・トランプ米大統領がヨーロッパ人の入国規制を発表してパニックになってしまった。アメリカで足止めされてしまうことを恐れて、すぐに空港へ行き自国ウクライナへと戻った。


ジュ・リン(中国)は北京に住む中国人選手だが、金曜日までカリフォルニアから離れるチケットを買っていなかった。彼女がWeiboを通じてファンたちに、「飛行機のチケットを買ったわ、でもそのフライトは拒否されるかも知れない。もし他の国へのチケットを買ったら、私はたぶんそこで隔離される。アメリカにこのままいるのも危険すぎる気がする。誰かいい案はないかしら?」と尋ねた事例は、海外にいる中国人アスリートたちの不安をよく表している。


マデのランキングは昨年最高で96位だったので、6週間なら心配なく過ごせる収入があった。しかし、テニス選手は自営業。試合をしないと収入がない。世界中で影響を受けている多くの労働者たちと同様に、ランキングの低い選手たちはこれから生活が大変だ。マデは「不運なことに、収入はどこからも来ない。世界は今、見通しが立たない。そこに最も焦りを感じる」と話していた。


※為替レートは2020年3月17日時点


(テニスデイリー編集部)


※写真は2019年「全仏オープン」でのナダル(左)とマデ(右)
(Photo by Ibrahim Ezzat/NurPhoto via Getty Images)

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